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間男・間女に対する慰謝料請求権消滅時効起算点東京高裁判決全文紹介

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平成29年 2月10日:初稿
○夫と同棲関係を継続して離婚に至らしめた女性に対する妻の慰謝料請求権の成否とこの請求権の消滅時効の起算点について離婚の成立の時から進行すると解した平成10年12月21日東京高裁判決(判タ1023号242頁)全文を紹介します。一審平成10年7月29日東京地裁判決は、婚姻関係の破綻前の肉体関係について第三者の不法行為責任を認めながら、配偶者の慰謝料請求権の時効による消滅を認めていたのですが。


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主  文
一 原判決を次のとおり変更する。
1 被控訴人は、控訴人に対し、金220万円及びこれに対する平成10年3月27日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2 控訴人のその余の請求を棄却する。
二 訴訟費用は、第1、2審を通じ、これを10分し、その九を控訴人の、その余を被控訴人の各負担とする。

事実及び理由
第一 控訴の趣旨

一 原判決を取り消す。
二 被控訴人は、控訴人に対し、金2200万円及び内金2000万円に対する平成9年5月22日から、内金200万円に対する平成9年9月3日から、それぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。

第二 事案の概要
 本件は、控訴人が被控訴人に対し、控訴人の元夫と被控訴人との肉体関係ないし同棲による不法行為に基づき、慰謝料2000万円及び弁護士費用200万円の損害賠償を求めた事案である。
 そして、控訴人は、当審において、被控訴人の右肉体関係ないし同棲の継続により、控訴人が元夫と離婚をやむなくされたこと及び両名間の長男が精神的に発病し、このため控訴人が長男の介護等に明け暮れていることを被控訴人の不法行為として追加主張している。

一 争いのない事実及び前提事実
1 控訴人と訴外甲野太郎(以下「太郎」という。)は、昭和36年11月13日婚姻し、昭和37年4月29日、長男一郎をもうけた(争いのない事実)。

2 被控訴人は、勤務先の日興證券株式会社(以下「日興證券」という。)A支店において、同僚として太郎と知り合い、男女関係を結ぶに至った。
 その後、太郎は、自宅を出て、被控訴人と同棲し、昭和54年4月30日付けで、日興證券を退職し、太郎の父の住職の地位を受け継いで、現住所地において被控訴人と同居している(争いのない事実、甲一、乙3、4)。

3 太郎と被控訴人との間に、昭和57年2月10日、夏子が生まれたが、太郎はこれに先立ち、同年1月22日、夏子を胎児認知した(争いのない事実)。

4 控訴人は、昭和60年、太郎を相手方として、東京家庭裁判所に夫婦関係調整の調停を申し立てたが、同年11月6日不調に終わり、同日、太郎を相手方として、同裁判所に婚姻費用分担の調停を申し立てた。この事件は、結局、昭和63年12月19日、太郎が控訴人に対し、昭和62年1月から離婚又は別居解消まで毎月16万円(昭和60年11月から昭和61年12月までは毎月14万円)を婚姻費用として支払うことを命じる審判によって決着がついた(甲1、2)。
 太郎は、平成6年、控訴人を被告として、東京地方裁判所に離婚訴訟(平成6年(タ)第108号)を提起し、同裁判所は、平成7年7月28日、離婚請求認容等の判決をした(甲一)。

 控訴人は、これを不服として控訴したが、東京高等裁判所は、平成9年7月24日、離婚請求に係る部分の控訴を棄却し、太郎から控訴人に対する控訴人居住の土地建物及び2500万円の財産分与(慰謝料的要素を除く。)を認めた(平成7年(ネ)第3592号、甲二)。
 控訴人は、さらに、これを不服として上告したが、最高裁判所は、平成10年3月26日、上告棄却の判決をし、これにより太郎と控訴人との離婚及び財産分与の裁判が確定した(原審証人太郎)。

5 被控訴人は、平成9年11月19日の原審第三回口頭弁論期日において、控訴人の被控訴人に対する本件損害賠償請求権につき、消滅時効を援用した。

二 争点
1 夫婦の一方と不貞行為をした第三者の他方配偶者に対する不法行為責任の有無
(被控訴人の主張)

 性に関する問題は、極めて個人的な事柄であり、公開の法廷でこれを争わせることは、法が個人のプライバシーに介入することにもなりかねない。また、不貞行為の相手方の責任を追及することは、婚姻制度の安定にはつながらない。
 個人には、性に関して自己決定権があり、また、貞操義務は、夫婦間の問題であって、当事者だけを拘束するものであるから、不貞行為の相手方には、常に不法行為は成立しない。

2 控訴人と太郎との間の婚姻関係の破綻と被控訴人の不法行為責任の有無
(被控訴人の主張)

 控訴人と太郎との婚姻関係は、昭和41年ころ、既に破綻していたのであるから、それ以後に生じた被控訴人と太郎との同棲関係は、控訴人に対する不法行為とならない。

(控訴人の主張)
 仮に、控訴人と太郎との別居の時期をもって両名の婚姻関係が破綻したとみるべきであるとしても、それは昭和54年に太郎と被控訴人とが同居を始めた頃からであり、それ以前は太郎の生活の本拠は控訴人方にあり、いまだ破綻には至っていなかった。
 被控訴人は、右同居以降、太郎と共謀して、控訴人と太郎との婚姻関係を破綻させ続け、その修復を不可能にさせてきたのであるから、現在もなお不法行為が継続しているものというべきである。

3 本件損害賠償請求権の消滅時効の起算点
(被控訴人の主張)
 仮に、控訴人と太郎との婚姻関係が破綻する以前に被控訴人と太郎との間で若干の期間の同棲関係があったとしても、控訴人の被控訴人に対するその間の不法行為に基づく損害賠償請求権は、消滅時効によって消滅した。

(控訴人の主張)
 本件においては、控訴人と太郎との裁判による離婚成立時から、控訴人の被控訴人に対する本件損害賠償請求権の消滅時効が進行すると解すべきである。

第三 争点に対する判断
一 前記争いのない事実及び前提事実、証拠(甲一ないし3、5ないし23、26、27、3四、35の2ないし11、36、37、乙一ないし4、原審証人太郎、原審における控訴人本人)並びに弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実が認められる。
1 太郎は、昭和36年に控訴人と婚姻し、昭和37年に控訴人との間に長男一郎をもうけた後、昭和38年、日興證券B支店販売課長代理となり、大阪で控訴人及び一郎と共に暮らしていたが、昭和41年ころから控訴人以外の女性と肉体関係を持つようになった。
 太郎は、昭和43年、日興證券C支店勤務となり、同年7月ころ、日興證券の社内住宅融資と控訴人の母甲山松子の資金援助により、東京都練馬区大泉学園町に土地を購入し、建物を建築して、同所で控訴人及び一郎と共に生活していた(以下、この土地建物を「大泉の土地建物」という。)。

2 ところで、太郎は、昭和45年3月末ころ、日興證券A支店次長となり、同支店に勤務していた被控訴人と知り合い、昭和47年初めころから、被控訴人と肉体関係を持つようになり、同年中に家を出て、千葉県市川市のアパートで被控訴人と同棲するようになった。もっとも、太郎は、その後も、控訴人に対し生活費を届けるため、あるいは、世間体を取り繕う目的で、時々控訴人宅に帰宅しており、控訴人との完全な別居は、昭和54年5月以降のことであった。

3 太郎は、××寺などの住職をしていた父甲野次郎の引退の後を継ぐため、昭和54年4月30日付けで日興證券を退職し、被控訴人を伴って現住所地の××寺の境内建物に移り住み、××寺などの住職等として勤務するようになった。そして、太郎は、以後、控訴人からの電話連絡にも応じなかった。
 この間、太郎は、昭和53年ころ、控訴人との離婚を決意し、昭和54年ころ、控訴人に対し、その旨を申し入れたが、控訴人は、これを全く受け入れなかった。

4 被控訴人は、太郎と共に××寺の境内建物に移転してから、太郎には妻である控訴人があることを熟知しながら、その近隣、太郎の親戚及び寺の関係者等に対し、太郎の再婚した妻として振る舞っていた。
 そして、被控訴人は、昭和57年2月10日、太郎との間に夏子をもうけたが、太郎は、これに先立ち、同年1月22日、夏子を胎児認知し、さらに、昭和60年10月12日、夏子の親権者を太郎と定める届出を、昭和62年5月6日、夏子の氏の変更(太郎の氏を称する入籍)をした。
 控訴人は、昭和57年ころには、戸籍の取寄せなどにより、右夏子の出生及び胎児認知の事実を知るに至った。

5 太郎は、昭和57年1月以降、控訴人に対し、生活費の送金をしなくなった。
 控訴人は、昭和60年、太郎を相手方として、夫婦関係調整の調停を申し立て、それが不調となった同年11月、さらに婚姻費用分担の調停を申し立てたが、その結果は前示のとおりである。
 また、太郎は、平成6年、控訴人を被告として離婚訴訟を提起したが、同訴訟に関するその後の経過は前示のとおりであり、平成10年3月26日の上告棄却の判決により、太郎と控訴人との離婚並びに太郎から控訴人に対する大泉の土地建物及び2500万円の財産分与(慰謝料的要素を除く。)が確定した。

6 ところで、太郎と控訴人との間の長男である一郎は、昭和58年4月、金沢市の私立大学薬学部に入学したが、そのころからノイローゼ状態に陥り、同大学卒業後、平成2年6月、ようやく薬剤師の資格取得のための国家試験に合格し、その後、病院のパートタイムの職を得たものの、ノイローゼ状態が継続かつ深刻化し、社会に適応できず、平成9年4月16日、退職のやむなきに至った。

 一郎の診療に継続的に当たってきた足立共済病院の医師は、同年5月17日付けで、一郎は、対人関係において継続的に強い緊張状態にあると共に異常な疲労感を伴い、就労困難な状態にあること、一郎の平成8年12月ころからの急激な病状悪化の原因は、両親の間で行われていた前記離婚訴訟の進行状態及びその結果に対する不安感にあるとみられること、今後、一郎に幻覚や幻聴等の症状が現れてくれば、精神分裂病の診断をすることになること、一郎の病状はかなり深刻であり、最悪の場合には、病状が進行して治癒せず、入院したままの状態で一生を終わるという可能性も否定できないこと、などの意見を述べている。

7 控訴人は、慢性膵炎の持病があり、通院治療を受けながら、長男一郎の看護にも当たる生活を続けている。
 そして、控訴人は、被控訴人が妊娠を避けず太郎との間に夏子をもうけ、太郎の実家に再婚した妻と称して入り込んだことなどに対し、強い憎しみを抱いており、また、家庭を守るため太郎との離婚を最後まで望んでいなかったにもかかわらず、離婚をやむなくされたことに深刻かつ多大な精神的苦痛を被っている。

二 そこで、以上認定説示の事実に基づき、争点について順次判断する。
1 まず、被控訴人は、夫婦の一方と肉体関係を持った第三者には、常に不法行為は成立しない旨主張するが、夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、故意又は過失がある限り、他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方の配偶者の被った精神上の苦痛を慰謝すべき義務があるというべきである(最高裁昭和54年3月30日第二小法廷判決・民集33巻二号303頁参照)から、被控訴人の右主張は採用することができない。

2 次に、被控訴人は、控訴人と太郎との婚姻関係は、昭和41年ころには既に破綻していた旨主張し、甲5、14、乙一及び原審証人太郎の供述中には、これに沿う趣旨の部分がある。
 しかし、太郎が昭和47年まで控訴人と同居していたこと、太郎が、同年中に被控訴人と同棲するようになってからも、時々控訴人宅に帰宅していたこと、太郎が控訴人に対し離婚の申し入れをしたのは、昭和54年ころであること、太郎と控訴人とが完全な別居状態となったのは、同年5月以降であり、そのころから、太郎は控訴人からの電話連絡にも応じなくなったことは前示のとおりであるから、控訴人と太郎との婚姻関係は、昭和41年ころには既に破綻していたものと認めることはできない。
 したがって、被控訴人の右主張は採用できない。

3 もっとも、控訴人と太郎との婚姻関係は、昭和54年5月に完全に別居した時点をもって、既に修復が不可能な程度にまで破綻したものと認められないわけではなく、したがって、被控訴人と太郎とのその後の同棲関係の継続は、もはや、控訴人に夫婦としての実体を有する婚姻共同生活の維持という権利又は法的保護に値する利益は存しないともみられるから、不法行為としての違法性を帯びるものではないとも考えられる。

 しかし、控訴人の本件慰謝料請求は、単に被控訴人と太郎との肉体関係ないし同棲の違法を理由とするものではなく、被控訴人と太郎との肉体関係ないし同棲の継続によって、最終的に太郎との離婚をやむなくされるに至ったことにより被った慰謝料の支払をも求めるものであるところ、前示の事実関係によれば、被控訴人と太郎との肉体関係ないし同棲の継続により右離婚をやむなくされ、最終的に離婚判決が確定したのであるから、離婚に至らしめた被控訴人の右行為が控訴人に対する不法行為となるものと解すべきである。

 なお、最高裁平成8年3月26日第三小法廷判決(民集50巻四号993頁)は、「甲の配偶者乙と第三者丙が肉体関係を持った場合において、甲と乙との婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特段の事情のない限り、丙は、甲に対して不法行為責任を負わないものと解するのが相当である。」旨を判示するが、右判決は、事案を異にし、本件に適切でない。

4 さらに、被控訴人は、控訴人と太郎との婚姻関係が破綻する以前に被控訴人と太郎との間で若干の期間の同棲関係があったとしても、控訴人の被控訴人に対するその間の不法行為に基づく損害賠償請求権は、消滅時効の完成によって消滅した旨を主張する。
 確かに、夫婦の一方の配偶者が他方の配偶者と第三者との同棲により第三者に対して取得する慰謝料請求権については、一方の配偶者が右の同棲関係を知った時から、それまでの間の慰謝料請求権の消滅時効が進行すると解するのが相当であり(最高裁平成6年1月20日第一小法廷判決)、本件においても、控訴人は、太郎が昭和47年に被控訴人と同棲した事実をその後数年のうちには知ったものと推認される。

 しかし、控訴人の本件慰謝料請求は、単に被控訴人と太郎との肉体関係ないし同棲によって精神的苦痛を被ったことを理由とするのみならず、右肉体関係ないし同棲の継続により最終的に太郎との離婚をやむなくされるに至ったことをも被控訴人の不法行為として主張していることは前示のとおりであるところ、このように第三者の不法行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことを理由として損害の賠償を求める場合、右損害は離婚が成立して初めて評価されるものであるから、第三者との肉体関係ないし同棲の継続等を理由として離婚を命ずる判決が確定するなど、離婚が成立したときに初めて、離婚に至らせた第三者の行為が不法行為であることを知り、かつ、損害の発生を確実に知ったこととなるものと解するのが相当である(最高裁昭和46年7月23日第二小法廷判決・民集25巻五号805頁参照)。

 そうとすれば、被控訴人と太郎との肉体関係ないし同棲の継続により、控訴人が太郎との離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことを理由とする慰謝料請求権は、控訴人と太郎との離婚の判決が確定した平成10年3月26日から、初めて消滅時効が進行するものというべきである。
 したがって、被控訴人の右主張は、結局理由がないものである。

5 そこで、以上認定説示の事実(控訴人が長男一郎の看護に当たっている事実を含む。)その他本件口頭弁論に現れた一切の事情を総合考慮すれば、控訴人が、被控訴人と太郎との肉体関係ないし同棲の継続により、太郎との離婚をやむなくされたことによって被った精神的苦痛は、深刻かつ多大なものというべきであり、これを慰謝する金額としては200万円が相当である。

 また、本件訴訟の経過、認容額等にかんがみ、右慰謝料の1割に当たる20万円をもって、被控訴人の右不法行為と相当因果関係にある弁護士費用の損害と認める。

三 以上の次第で、控訴人の本訴請求は、被控訴人に対し、慰謝料200万円及び弁護士費用20万円の合計220万円及びこれに対する控訴人と太郎との離婚の判決が確定した日の翌日である平成10年3月27日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容すべきであり、その余は理由がないから棄却すべきである。
 よって、これと異なる原判決を右のとおり変更することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法67条二項、64条を適用して、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 塩崎勤 裁判官 橋本和夫 裁判官 大渕哲也)

以上:6,970文字

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