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財産分与と慰謝料との関係-最重要判例

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平成22年 3月19日:初稿
「財産分与と慰謝料との関係の基本」で、離婚時における財産分与と慰謝料の関係については包括説と限定説に考え方が分かれることを説明しましたが、実務では限定説的立場に立ち、この考えを確立したのが昭和46年7月23日最高裁判決(判タ 266号174頁、判時640号3頁)で、概要は以下の通りです。

・既に財産分与がなされた後も,不法行為を理由として別途慰謝料の請求が出来る。
・裁判所は財産分与の判断に際して「一切の事情」を考慮するので、相手方の有責行為により財産分与請求者が受けた精神的損害賠償のための給付を含めて財産分与の額及び方法を定めることが出来る。
・財産分与に損害賠償の要素を含めて給付がなされた場合で更に慰謝料の請求がなされたときは、その金額を定めるに際しては、財産分与に損害賠償の要素が含まれていた趣旨を考慮しなければならない。

○この最高裁判決は、完全別個独立限定説ではなく、財産分与と慰謝料は併存することを認めながら、この両者は相関性があり、財産分与の内容によっては後の慰謝料請求に影響があることを認めています。実際、実務では財産分与か慰謝料か峻別出来ない場合もあり、柔軟に解決できるようにしたものです。

○その後の昭和53年2月21日最高裁判決(家月30巻9号74頁)では、両請求権が別個のものであることを前提に、離婚の訴えに附帯して離婚に基づく損害賠償と財産分与の双方を併合して請求が出来、その場合には、裁判所は財産分与の額を定めるにつき、損害賠償の点をその要素として考慮することが出来なくなるに過ぎないと判示しています。

○昭和46年7月23日最高裁判決(判タ 266号174頁、判時640号3頁)は、財産分与と慰謝料の関係についての最重要判例であり,全文を掲載します。

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主  文
本件上告を棄却する。 
上告費用は上告人の負担とする。 
 
理  由
 上告代理人吉永嘉吉の上告理由第一点について。 
 本件慰藉料請求は、上告人と被上告人との間の婚姻関係の破綻を生ずる原因となつた上告人の虐待等、被上告人の身体、自由、名誉等を侵害する個別違法行為を理由とするものではなく、被上告人において、上告人の有責行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被つたことを理由としてその損害の賠償を求めるものと解されるところ、このような損害は、離婚が成立してはじめて評価されるものであるから、個別の違法行為がありまたは婚姻関係が客観的に破綻したとしても、離婚の成否がいまだ確定しない間であるのに右の損害を知りえたものとすることは相当でなく、相手方が有責と判断されて離婚を命ずる判決が確定するなど、離婚が成立したときにはじめて、離婚に至らしめた相手方の行為が不法行為であることを知り、かつ、損害の発生を確実に知つたこととなるものと解するのが相当である。

 原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)の確定した事実に照らせば、本件訴は上告人と被上告人との間の離婚の判決が確定した後三年内に提起されたことが明らかであつて、訴提起当時本件慰藉料請求権につき消滅時効は完成していないものであり、原判決は、措辞適切を欠く部分もあるが、ひつきよう、右の趣旨により上告人の消滅時効の主張を排斥したものと解されるのであるから、その判決は正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。 

 同第二点について。 
 離婚における財産分与の制度は、夫婦が婚姻中に有していた実質上共同の財産を清算分配し、かつ、離婚後における一方の当事者の生計の維持をはかることを目的とするものであつて、分与を請求するにあたりその相手方たる当事者が離婚につき有責の者であることを必要とはしないから、財産分与の請求権は、相手方の有責な行為によつて離婚をやむなくされ精神的苦痛を被つたことに対する慰藉料の請求権とは、その性質を必ずしも同じくするものではない。したがつて、すでに財産分与がなされたからといつて、その後不法行為を理由として別途慰藉料の請求をすることは妨げられないというべきである。

 もつとも、裁判所が財産分与を命ずるかどうかならびに分与の額および方法を定めるについては、当事者双方における一切の事情を考慮すべきものであるから、分与の請求の相手方が離婚についての有責の配偶者であつて、その有責行為により離婚に至らしめたことにつき請求者の被つた精神的損害を賠償すべき義務を負うと認められるときには、右損害賠償のための給付をも含めて財産分与の額および方法を定めることもできると解すべきである。

 そして、財産分与として、右のように損害賠償の要素をも含めて給付がなされた場合には、さらに請求者が相手方の不法行為を理由に離婚そのものによる慰藉料の請求の支払を請求したときに、その額を定めるにあたつては、右の趣旨において財産分与がなされている事情をも斟酌しなければならないのであり、このような財産分与によつて請求者の精神的苦痛がすべて慰藉されたものと認められるときには、もはや重ねて慰藉料の請求を認容することはできないものと解すべきである。

 しかし、財産分与がなされても、それが損害賠償の要素を含めた趣旨とは解せられないか、そうでないとしても、その額および方法において、請求者の精神的苦痛を慰藉するには足りないと認められるものであるときには、すでに財産分与を得たという一事によつて慰藉料請求権がすべて消滅するものではなく、別個に不法行為を理由として離婚による慰藉料を請求することを妨げられないものと解するのが相当である。所論引用の判例(最高裁昭和二六年(オ)四六九号同三一年二月二一日第三小法廷判決、民集一〇巻二号一二四頁)は、財産分与を請求しうる立場にあることは離婚による慰藉料の請求を妨げるものではないとの趣旨を示したにすぎないものと解されるから、前記の見解は右判例に牴触しない。 

 本件において、原判決の確定したところによれば、さきの上告人と被上告人との間の離婚訴訟の判決は、上告人の責任のある離婚原因をも参酌したうえ、整理タンス一棹、水屋一個の財産分与を命じ、それによつて被上告人が右財産の分与を受けたというのであるけれども、原審は、これをもつて、離婚によつて被上告人の被つた精神的損害をすべて賠償する趣旨を含むものであるとは認定していないのである。のみならず、離婚につき上告人を有責と認めるべき原判決確定の事実関係(右離婚の判決中で認定された離婚原因もほぼこれと同様であることが記録上窺われる。)に照らし、右のごとき僅少な財産分与がなされたことは、被上告人の上告人に対する本訴慰藉料請求を許容することの妨げになるものではないと解すべきであり、また、右財産分与の事実を考慮しても、原判決の定めた慰藉料の額をとくに不当とすべき理由はなく、本訴請求の一部を認容した原判決の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。 

 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(色川幸太郎 村上朝一 岡原昌男 小川信雄)
 
以上:2,976文字

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