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第8章不正競争防止法1 担当(石井慎也)

平成17年 2月16日(水):初稿

不正競争防止法2条1項1号ないし3号について


知的財産権研究会 レジュメ h17.2.15 石井慎也

第1 商品等主体混同惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)について
1 請求原因
① 商品等表示の存在
「他人の商品等表示(人の業務に係る氏名,商号,商標,標章,商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ)」として,

② 周知性
「需要者の間に広く認識されているものと」

③ 同一または類似の商品等表示の使用
「同一若しくは類似の商品等表示を使用した商品を譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引き渡しのために展示し,輸出し,輸入し,若しくは電気通信回線を通じて提供して」

④ 混同行為
「他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」

2 請求原因①「商品等表示の存在」について
1)人の業務とは,自然人と法人の両方を含む。団体や企業等グループのように複数でも可。
業務とは人が業として継続・反復して行う行為を意味し,営業より広い。

2)氏名とは,雅号,芸名,略称等の仮名でも可。

3)商号には未登記商号も含まれる。例えば株式会社三愛の略称である「三愛」,「SANAI」も含まれる。

4)商標には,未登録商標も含まれるが,音声,香り等は含まれない。

5)商標と標章は,その構成要素を共通にし,標章のうちで,業として商品や役務を提供する者が商品または役務に使用するものが商標であり,そうでないものが標章。ただし,その区別の実益はない。

6)商品の容器・包装は,中味を保護するという容器・包装の本来の機能からその形状や模様が決定されることも多く,それが直ちに中味の商品の出所を表示しこれを識別させる機能を有しないこともある。
しかし,かような容器包装でも,一定の間,当該容器や包装を特定の商品に使用することによって二次的に商品の出所を表示する機能を取得する場合がある(セカンダリーミーニング

7)その他の商品等表示(例として商品の形態)
商品の形態がその商品の出所表示機能を持つ場合の例
①商品の個性化・差別化の目的で消費者にとって商品の識別が可能なように特徴ある形態を選択する場合
②特定の商品について特定の形態が長期間にわたって使用され,需要者の認識や心理においても特定の商品形態が特定の出所の商品を識別する指標として作用するようになり,やがてその形態が商品の出所を示す表示として機能するに至る。

☆論点
当該商品が出所表示機能を有することを前提として,その形態がその技術的機能に由来するものであっても,商品等表示足りうるか?
a 否定説(技術的機能除外説)
特許法・実用新案法・意匠法・著作権法と不正競争防止法との二重保護を否定。
b 肯定説 
標識法である不正競争防止法と創作法である特許法との目的要件の相違から,二重保護を肯定。

3 請求原因②「周知性」について
1)周知性の場所的範囲
☆論点 
わが国の平成5年の改正で「本法施行の地域内において」という文言が削除されたことから,国内で周知であることを必要とするか否か争い有り。

a 国内での周知性不要説
上記削除は,海外で周知な商品等表示も含める趣旨

b 国内での周知性必要説
上記削除は,日本国内全域にわたって周知性を要件とするとの誤解を防ぐため。

c 国外で周知性がある場合,国内で知られている必要があるとする説
(筆者の立場)
国内の事業者に対する不意打ちを防ぐため。
国内において周知であるということは,国内全域においてあまねく周知である必要はなく,国内の一地域で周知であれば良い。

☆論点
周知性を認めるための地域的範囲の基準
判例は原則として当該表示が周知性を有する地域における同一又は類似の表示の使用者に対しては不正競争防止法を適用し,周知性を有しない地域における同一又は類似の表示の使用者には不正競争防止法による保護を否定する傾向にある。

2)周知性の人的範囲=「需要者」の意味
周知性の認識主体は,当該商品や役務の「取引者」または「需要者」である。

3)周知性の程度「広く認識されている」の程度
当該商品等の種類・交換形態・市場の広狭等によって異なる相対的な経済的事実評価
表示が特定の少人数に知られている程度では周知といえないが,当該商品の取引者または需要者の圧倒的多数が知っているといった高度なレベルに達する必要性はない。著名表示との意味の違いからも明らか。

4)周知性の取得時期
a 実体法上は,特定は困難。
b そこで,訴訟手続上は,原告が差し止め請求訴訟を行っている場合は少なくとも口頭弁論終結時に,損害賠償請求訴訟を行っている場合には,その損害の発生時において,それぞれ周知性を取得していたことを主張立証すれば請求は認容される。
c しかし,攻撃防御という訴訟技術上は,被告の先使用権の抗弁を考慮し,周知性の取得時期を特定する必要がある。

5)周知性の承継

☆ 論点
周知性の承継とは,ある商品等表示がAのもとで周知となった後に,相続や合併あるいは営業譲渡等の原因により,上記商品等表示が,その営業とともに他者Bに承継された場合,Bは従前のAの下における商品等表示の周知性を援用することができるかという問題。
問題の所在は,本号による商品等表示が,当該表示によって表示される商品または営業を識別する機能を有すればよいのか,それともさらに進んで当該商品または営業(役務)とこれを提供する特定の主体との結びつきを識別する機能を有する必要があるのかという問題

関連判例
a 周知性の承継を認めなかった例
・ 周知性を有する商品表示として認められたバター飴容器に関する意匠を譲り受けた者
・ 営業の承継を伴わない表示のみの譲渡
b 周知性の承継を認めた例
・ 個人企業の法人成り。
・ 有限会社が株式会社に組織変更
・ 会社の一部門(製造販売部門)を独立させるとともに周知表示「花ころも」を使用した天ぷら専門粉の製造販売に関する営業の譲渡を行った場合
なお,営業譲渡等により営業が同一性を保ちながら移転した場合にも,譲渡人がすでに倒産しており表示に仮体された営業上のグッドウィルが失われている場合には,周知性の承継が認められない。

以上:2,501文字

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