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遺族年金は相続の対象ではないとした最高裁判決紹介

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令和 6年 6月 5日(水):初稿
○相続放棄をしても遺族年金は受給できますかとの質問を受けました。これは遺族年金が相続財産に含まれるかどうかの問題です。死亡保険金請求権は、相続財産に含まれないことは良く話題になりますが、遺族年金も同様に相続財産には含まれず、相続放棄をしても遺族は年金を受領出来ます。遺族年金が相続財産に含まれないとした平成7年11月7日最高裁判決(判時1551号49頁、判タ896号73頁)を紹介します。

○国民年金法に基づく障害福祉年金及び老齢年金の受給資格を有する亡Aが、同法20条のいわゆる併給調整規定に基づいて老齢年金の支給停止措置を受けたため、同規定及び措置が違憲無効であるとし、国を被告として未支給の老齢年金の支払を求めたところ、亡Aが第一審係属中に死亡したため、亡Aの相続人である上告人が、相続により又は同法19条1項の規定により亡Aの老齢年金請求権を取得し、原告たる地位を当然に承継したとして訴訟手続の受継の申立てをし、さらに原審で民訴法73条による訴訟参加の申立てをしました。

○これに対し、未払年金受給権は相続の対象になるものではないことが明らかで、上告人は、本件訴訟とは別に社会保険庁長官に対する支払請求をした上で、必要があればこれに対する処分を争うべきものである等として、上告人による原告たる地位の当然承継を認めないとしました。

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主   文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理   由
上告代理人○○らの上告理由について
一 本件は、国民年金法(昭和60年法律第34号による改正前のもの。以下、同じ)
に基づく障害福祉年金及び老齢年金の受給資格を有する亡Aが、同法20条のいわゆる併給調整規定に基づいて老齢年金の支給停止措置を受けたため,右規定及び措置が違憲無効であるとし、国を被告として未支給の老齢年金の支払を求めて提起した訴訟である。ところが、亡Aは本件訴訟が第一審に係属中の昭和63年4月に死亡したため、同人の子(養女)である上告人が、相続により又は同法19条一項の規定により亡Aの老齢年金請求権を取得し、原告たる地位を当然に承継したと主張して訴訟手続の受継の申立てをし、さらに、原審で民訴法73条による訴訟参加の申立てをした。

 原審は、原告たる地位の当然承継を認めず、亡Aの死亡により本件訴訟は終了したと宣言した第一審判決を維持し、上告人による訴訟参加の申立ても却下した。

二 国民年金法19条1項は「年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。」と定め、同条5項は、「未支給の年金を受けるべき者の順位は、第1項に規定する順序による。」と定めている。

右の規定は、相続とは別の立場から一定の遺族に対して未支給の年金給付の支給を認めたものであり、死亡した受給権者が有していた右年金給付に係る請求権が同条の規定を離れて別途相続の対象となるものでないことは明らかである。

 また、同条1項所定の遺族は、死亡した受給権者が有していた請求権を同項の規定に基づき承継的に取得するものと理解することができるが、以下に述べるとおり、自己が所定の遺族に当たるとしてその権利を行使するためには、社会保険庁長官に対する請求をし、同長官の支給の決定を受けることが必要であると解するのが相当である。

同法16条は、給付を受ける権利は、受給権者の請求に基づき社会保険庁長官が裁定するものとしているが、これは、画一公平な処理により無用の紛争を防止し、給付の法的確実性を担保するため、その権利の発生要件の存否や金額等につき同長官が公権的に確認するのが相当であるとの見地から、基本権たる受給権について、同長官による裁定を受けて初めて年金の支給が可能となる旨を明らかにしたものである。

同法19条1項により遺族が取得するのは支分権たる請求権ではあるが、同法16条の趣旨に照らして考えると、右19条1項にいう請求は裁定の請求に準じて社会保険庁長官に対してすべきものであり(現に国民年金法施行規則は、同法19条の規定による未支給年金の支給の請求は所定の請求書を同長官に提出することによって行うべき旨を定めている)、これに対して同長官が応答することが予定されているものと解される。

そして、社会保険庁長官の応答は、請求をした者が請求権を有する所定の遺族に当たるか否かを統一的見地から公権的に確認するものであり、不服申立ての対象を定めた同法101条1項にいう「給付に関する処分」に当たるものと解するのが相当である。

したがって、同法19条1項所定の遺族は、社会保険庁長官による未支給年金の支給決定を受けるまでは、死亡した受給権者が有していた未支給年金に係る請求権を確定的に取得したということはできず、同長官に対する支給請求とこれに対する処分を経ないで訴訟上未支給年金を請求することはできないものといわなければならない。そうすると、上告人は、本件訴訟とは別に社会保険庁長官に対する支給請求をした上で、必要があればこれに対する処分を争うべきものであって、上告人において亡Aの本件訴訟上の地位を承継することを認めることはできない。

 右に説示したところによれば、上告人による原告たる地位の当然承継を認めず、亡Aの死亡により本件訴訟は終了したとした原審の判断及び上告人の訴訟参加の申立てを却下した原審の判断は、結論において正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
 よって、行政事件訴訟法7条、民訴法401条、95条、89条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 可部恒雄 裁判官 園部逸夫 裁判官 大野正男 裁判官 干種秀夫 裁判官 尾崎行信)
以上:2,501文字

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