令和 4年11月 1日(火):初稿 |
○以下、相続法についての明治31年旧民法から昭和22年改正現行民法の昭和55年改正までの概要備忘録です。旧民法は、明治31年7月16日から昭和22年5月2日以前に死亡した場合に、応急措置法は、昭和22年5月3日から昭和22年12月31日以前に死亡した場合に、現行民法は昭和23年1月1日以降に死亡した場合に、それぞれ適用されます。現行民法での法定相続分についての、昭和37年改正は、昭和37年7月1日から昭和55年12月31日までが、昭和55年改正は、昭和56年1月1日から現在までが、それぞれその適用範囲ですので、注意が必要です。 一 旧民法(明治31年民法) 1 家督相続 旧民法(明治31年民法)は家督相続制度 家督相続とは,1人の家督相続人が,前戸主の一身に専属するものを除いて,前戸主に属する一切の権利義務を包括的に承継すること(旧民法964条以下) 武家の相続が長子単独相続であったため,明治初頭に,華族や士族についても長子相続となり,一般庶民についても同様とされた 但し,法令は存在せず,太政官布告や太政官指令という形式。明治31年に制定された旧民法でも武家法的な長子相続を承継 家督相続の第一順位は,「家族タル直系卑屬」で,その中では, 第1に親等の近き者を先に, 第2に親等が同じであれば男子を先に, 第3に親等の同じ男子又は女子の間では嫡出子を先に, 第4に親等の同じ嫡出子,庶子,私生子の間では,女子であっても,嫡出子,庶子であれば私生子男子よりも先に, ※婚姻関係の無い女子が産んだ子で、庶子は認知された子、私生児は認知されていない子 第5に同じ順位の間では年長者を先にとしていた(旧民法970条) 妾腹の男子は,正腹の女子よりも先順位となるので,「腹は借り物」 長男の単独相続のため,二男や三男には全く相続無し 子が親の家を継ぐ場合には,相続放棄が許されかった。直系卑属は,債務超過の相続であっても放棄ができず,家名は継がなければならないという家のための制度 2 旧民法が適用される相続 明治31年7月16日から昭和22年5月2日以前に死亡した場合に適用される 旧法中に開始した相続については,原則として旧法の親族法,相続法が適用される(民法附則25条1項本文)が,旧法中に開始した家督相続で,新法に至るまで家督相続人を選定しなかった場合には,その法的処理がないので,新法の親族法,相続法が適用される(民法附則25条2項本文)。 二 応急措置法(日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律) 1 日本国憲法の理念に反する部分を廃止 「個人の尊厳」と「両性の本質的平等」に反する部分を応急的に廃止 2 具体的には, ① 家督相続を廃止して,遺産相続法に従う(同法7条)とすることで,財産相続に一本化 ② 血族相続人として,直系卑属,直系尊属,兄弟姉妹の3種を定め,それと併行して配偶者が常に相続人となることを認めた(同法8条)。 3 応急措置法が適用される相続 昭和22年5月3日から昭和22年12月31日以前に死亡した場合に適用 第1順位 第2順位 第3順位 配偶者1/3 配偶者1/2 配偶者2/3 直系卑属2/3 直系尊属1/2 兄弟姉妹1/3 応措法8条2項1・2・3号 三 現行民法制定(昭和22年法律222号) 1 現行民法の特徴 ① 家督相続を廃して,相続を財産相続に一般化 ② 配偶者の相続権を強く認めた ③ 長子単独相続を諸子均分相続に改めた ④ 祭祀承継を相続財産から分離し,その承継者を相続人とは別に慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者とした 2 法定相続分での適用範囲 昭和23年1月1日から昭和37年6月30日までがその適用範囲 第1順位 第2順位 第3順位 配偶者1/3 配偶者1/2 配偶者2/3 直系卑属2/3 直系尊属1/2 兄弟姉妹1/3 昭和22年民法900条1・2・3号 四 現行民法昭和37年改正 1 主な改正内容 ① 特別失踪の失踪期間3年を1年に短縮,期間満了の時とされていたのを危難の去りたる時と改正 ② 同時死亡の推定規定(32条の2)を新設 ③ 代襲相続の原因たる相続人の死亡を「相続開始以前」とし,同時死亡の子の子も代襲相続権を取得することになった ④ 代襲原因を ⅰ相続開始以前に死亡したとき, ⅱ相続欠格となったとき, ⅲ排除判決を受けたとき の3つに限定し,相続放棄は代襲原因にならないことが確定 ⑤ 第1順位の相続人を子と定めることで孫以下の直系卑属には固有の相続権がないことを明記 ⑥ 相続人不存在の規定を改正し,特別縁故者の規定を設けた 2 法定相続分での適用範囲 昭和37年7月1日から昭和55年12月31日までがその適用範囲 第1順位 第2順位 第3順位 配偶者1/3 配偶者1/2 配偶者2/3 子2/3 直系尊属1/2 兄弟姉妹1/3 昭和37年民法900条1・2・3号 五 現行民法昭和55年改正 1 主な改正内容 ① 配偶者の相続分を引き上げ ② 兄弟姉妹の代襲相続について再代襲をみとめないことにした ③ 寄与分制度が新設された ④ 遺産分割の基準の明確化が図られた ⑤ 遺留分についても,配偶者の遺留分率を引き上げた 2 法定相続分での適用範囲 昭和56年1月1日から現在までがその適用範囲 第1順位 第2順位 第3順位 配偶者1/2 配偶者2/3 配偶者3/4 子1/2 直系尊属1/3 兄弟姉妹1/4 現行民法900条1・2・3号 以上:2,247文字
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