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子の利益に必要無しとして特別養子縁組申立を却下した家裁審判紹介

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令和 1年 9月14日(土):初稿
○民法第817条の2特別養子縁組制度については「特別養子縁組制度の基礎の基礎」で説明していましたが、昔、特別養子縁組申立代理を依頼されて、問題なく認められるだろうと簡単に考えて、仙台家裁に申立をしたところ、全く意外にも却下されたことがありました。

○民法第817条の2に「家庭裁判所は、次条から第817条の7までに定める要件があるときは、養親となる者の請求により、実方の血族との親族関係が終了する縁組(以下この款において「特別養子縁組」という。)を成立させることができる。」とし、要件の一つとして(子の利益のための特別の必要性)第817条の7「特別養子縁組は、父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときに、これを成立させるものとする。」があり、「子の利益のため特に必要があると認めるとき」との要件がくせ者でした。

○この点について、申立人らが、未成年者Cを申立人らの特別養子とするとの審判を求めた事案において、特別養子縁組が認められるためには、法律上、養子となる者について民法817条の7に要保護事情があり、かつ養子となる者と実父母との本来の身分関係を断つことが養子となる者の利益のために特に必要とされる事情のあることを要するところ、本件について、未成年者とその実母との間の身分関係の存続が、未成年者の養育監護にとって障害となっているわけではないことが明らかであり、未成年者の実父と考えられるFについても、未成年者との関係の存続が未成年者の養育監護にとって障害となる事情は認められないとし、申立てを却下した平成27年1月30日奈良家裁審判(判タ1423号191頁 )全文を紹介します。

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主   文
1 本件申立てを却下する。
2 手続費用は申立人らの負担とする。

理   由
1 申立人らは,「C(以下「未成年者」という。)を申立人らの特別養子とする。」との審判を求めた。

2 一件記録によれば,次のとおりの事実を認めることができる。
(1)未成年者は,D(以下「未成年者実母」という。)」の,いわゆる婚外子として,平成26年○月○日に生まれた。未成年者実母は,17歳で未婚のまま,未成年者を出産したものであり,未成年者は認知を受けていない。

(2)申立人B(以下「申立人妻」という。)は,未成年者実母の母(未成年者の親権代行者。以下「未成年者祖母」という。)と従姉妹の関係にあり,申立人妻の母と未成年者実母の祖母(以下「未成年者曾祖母」という。)とが姉妹である。

(3)申立人らは,平成19年○月○日に結婚したが,その後実子に恵まれず,未成年者曾祖母から,申立人妻の母を通じて,未成年者を引き取ってもらえないかと持ちかけられて,平成26年○月○日に,未成年者が○○県内にある産院を退院すると同時に未成年者を引き取り,しばらく,○○県にある未成年者曾祖母宅において,申立人妻が未成年者とともに生活した後,同年○月○日に未成年者を△△県にある申立人らの自宅に引き取って,現在,未成年者と3人で暮らしている。

(4)未成年者実母は,Fとの交際中に未成年者の妊娠が分かり,産みたいと希望していたが,双方の親族からの反対を恐れて,そのことを周囲には告げず,その後,堕胎が困難になってから未成年者祖母にそのことを伝えた。当時すでに未成年者実母はFと別れていたが,2人で未成年者を育てるために復縁し,平成26年○月から2人で暮らし始めた。しかし,Fが仕事をせず,Fの両親からの干渉も強かったことから,同年○月に再び別れるところとなり,未成年者実母は,1人で育てることもできないので,他の人に預けるしかないと思うに至り,未成年者を産んだ後は一度も未成年者と会っていない。

 本件事件の調査の過程で未成年者祖母から未成年者が親族に預けられていることを聞き,家庭裁判所調査官による面接では,未成年者の話になると涙目になって,子どもとは今でも会いたいと思うが,子どもを育てることはできないので引取りたいという気持ちはない旨述べていた。特別養子縁組の法的効果につき説明を受けると縁が切れてしまうことは嫌だと同意を躊躇したが,その後親戚に預けられていると聞いて,同意書に署名押印した。未成年者の親権代行者である未成年者祖母も同意書に署名押印した。

(5)Fは,未成年者の出生を知って,平成26年○月に未成年者実母との復縁を求めて,子どもを取り返すと訴えてきたこともあるが,未成年者実母から未成年者の面倒を見る気持ちはないと聞いてからは,未成年者のことを口にすることはなくなった。しかし,未成年者実母との交流は続いている。

(6)申立人夫婦が未成年者との特別養子縁組を望んでいる理由は,未成年者祖母が,申立人夫婦に相談をした当初から,未成年者実母に未成年者の養育を諦めさせるために,特別養子縁組をしてほしいと希望していたこと、申立人夫婦も,未成年者とより強い絆を希望し,将来,万一未成年者実母から引渡しを求められても不安にならずにすむために,実親と断絶できる制度を利用したかったことにある。

3 以上の事実をもとに検討する。 
 特別養子縁組が認められるためには,法律上,養子となる者について民法817条の7に定める要保護事情があり,かつ養子となる者と実父母との本来の身分関係を絶つことが養子となる者の利益のために特に必要とされる事情のあることを要する。
 本件について,これをみると,未成年者とその実母との間の身分関係の存続が,未成年者の養育監護にとって障害となっているわけではないことが明らかである。未成年者の実父と考えられるFについても,未成年者との関係の存続が未成年者の養育監護にとって障害となる事情は認められない。
 そうすると,本件特別養子縁組の申立てについて,民法817条の7が定める要件を欠いていることが明らかである。


4 結語
 よって,本件申立ては理由がないからこれを却下することとし,主文のとおり審判する。

以上:2,504文字

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