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寄与分審判申立遅滞があっても責めに帰すべき事由はないとした判例紹介

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平成29年 7月28日(金):初稿
○旧家事審判規則103条の4第3項によれば、家庭裁判所が遺産の分割の審判手続において,その当事者が寄与分を定める審判の申立てをすべき期間を定めなかつた場合においても、遺産の分割の審理を著しく遅延させると認められ、かつ申立てが遅滞したことにつき申立人の責めに帰すべき事由があるときは、家庭裁判所は当該寄与分を定める審判の申立てを却下することができるとされていました。

○遺産分割審判に対し抗告をするとともに、原裁判所に寄与分を定める調停の申立てをした事案において、抗告人は法律に精通しない一般人として、寄与分を定める審判の申立てをすべきことに思い及ばなかつたことがうかがわれ、その申立てを遅滞したことにつき、抗告人の責めに帰すべき事由はいまだ認め難いから、遺産分割に当たつては、寄与分についての審理を尽くすのが相当であるとして、原審判を取り消して差し戻した昭和59年6月18日大阪高裁決定(家庭裁判月報37巻5号60頁、判例タイムズ537号224頁)全文を紹介します。

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主   文
原審判を取り消す。
本件を大阪家庭裁判所に差し戻す。

理   由
一 抗告の趣旨と理由

 各抗告人代理人は、それぞれ主文と同旨の裁判を求めた。
 その各抗告理由は別紙のとおりである。

二 当裁判所の判断
1 一件記録によれば、昭和55年法律第51号民法及び家事審判法の一部を改正する法律により寄与分制度(民法904条の二)が設けられ、同法が施行された昭和56年1月1日以後の同年5月21日被相続人Aが死亡し、抗告人両名及び相手方らにおいて、これを相続したこと、右相続人ら間において、その遺産分割の話合いがつかないため、相手方Bにおいて、同年11月13日原裁判所に対し遺産分割調停の申立(原裁判所昭和56年(家イ)第4426号)をしたが、その調停も成立せず、昭和58年6月23日審判事件(原裁判所昭和58年(家)第2449号)に移行したこと、抗告人Xは弁護士を代理人とすることなく、自ら右審判手続を遂行し、同年9月30日の審問期日において、本件遺産に関する寄与分につき、同抗告人は終戦直後相続人の固定資産税支払いのため、同被相続人に13万円を送金し、また被相続人が村長選挙に立候補する際20万円の選挙資金を送金した旨供述していること、しかし同抗告人は民法904条の2第2項に定める同抗告人の寄与分を定める審判の申立てをすることなく、右審判手続をすすめたため、同抗告人は原審判において、寄与分の認定を受けることができなかつたこと、しかして同抗告人は原審判後弁護士を代理人として選任し、本件抗告をするとともに、原裁判所に対し、昭和59年3月16日同抗告人の寄与分を定める調停の申立(原裁判所昭和59年(家イ)第1066号)をしたこと、以上の各事実を認めることができる。

 ところで家事審判規則103条の4第3項によれば、家庭裁判所が遺産の分割の審判手続において,その当事者が寄与分を定める審判の申立てをすべき期間を定めなかつた場合においても、遺産の分割の審理を著しく遅延させると認められ、かつ申立てが遅滞したことにつき申立人の責めに帰すべき事由があるときは、家庭裁判所は当該寄与分を定める審判の申立てを却下することができるけれども、右認定事実によれば、同抗告人は法律に精通しない一般人として、原審の審判手続を遂行し、本件寄与分を定める審判の申立てをすべきことに思い及ばなかつたことが窺われ、一件記録によつては、同抗告人が本件寄与分を定める調停の申立て(右調停が不成立に終つたときは、右調停の申立ての時に審判の申立てがあつたものとみなされる)を遅滞したことにつき、同抗告人の責めに帰すべき事由があるとは、いまだ認め難いから、右調停が成立しあるいはこれが不成立となり審判に移行し、結局同抗告人に寄与分が認められるに至つた場合、本件遺産分割の基礎となる抗告人ら及び相手方らの具体的相続分が原審判において認定したところと異なることとなることはいうまでもなく、かつその審理の結果、同抗告人に寄与分が認められる余地も窺えないわけではないから、本件遺産分割にあたつては、右の点の審理をつくすのが相当と思料される。

 しかして本件にあつては、右審理のため、これを原裁判所に差し戻すのが相当と考えられるので、その余の点について判断するまでもなく、原審判を取消し、本件を原裁判所に差し戻すこととし、主文のとおり決定する。(裁判長裁判官 小林定人 裁判官 坂上弘 小林茂雄)
以上:1,890文字

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