平成26年 6月22日(日):初稿 |
○「成年後見等開始決定申立は申立後原則として取り下げることは不可」を続けます。 家事事件手続法(平成23年法律第52号)は、家庭裁判所における家事審判および家事調停の手続を定める法律で、昭和22年に制定された家事審判法を全体として見直し、新たに制定した法律で、平成23年5月19日成立、同月25日に公布され、平成25年1月1日から施行されています。平成26年6月現在で施行後1年半経過していますが、我々実務家もその全体理解は不十分です(^^;)。 ○国民にとってより利用しやすく、現代社会の要請にも合致した新たな法律を制定し、家事事件の手続の改善を図ろうとしたのが家事事件手続法と言われ、「家事事件手続法が成立により電話・テレビで離婚調停も可能」には、「離婚や遺産相続をめぐる家庭裁判所での調停、審判を、電話やテレビ会議で可能にすることなどを定めた家事事件手続法が、19日午後の衆院本会議で全会一致で可決され、成立した。」と記載しておりました。 ○しかし、民事訴訟の電話会議は日常的に行われていますが、離婚や遺産分割等の家事調停での電話・テレビ会議はまだ経験したことはありません。 家事事件手続法 第54条(音声の送受信による通話の方法による手続) 家庭裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、家庭裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、家事審判の手続の期日における手続(証拠調べを除く。)を行うことができる。 2 家事審判の手続の期日に出頭しないで前項の手続に関与した者は、その期日に出頭したものとみなす。 第258条(家事審判の手続の規定の準用等) 第41条から第43条までの規定は家事調停の手続における参加及び排除について、第44条の規定は家事調停の手続における受継について、第51条から第55条までの規定は家事調停の手続の期日について、第56条から第62条まで及び第64条の規定は家事調停の手続における事実の調査及び証拠調べについて、第65条の規定は家事調停の手続における子の意思の把握等について、第73条、第74条、第76条(第1項ただし書を除く。)、第77条及び第79条の規定は家事調停に関する審判について、第81条の規定は家事調停に関する審判以外の裁判について準用する。 第268条(調停の成立及び効力) 3 離婚又は離縁についての調停事件においては、第258条第1項において準用する第54条第1項に規定する方法によっては、調停を成立させることができない。 との規定からは、離婚・離縁成立時以外は、電話・TV会議で調停手続が出来るはずです。例えば仙台にいる妻が、東京にいる夫に対し、東京家裁に離婚調停申立をするとき、本人申立の場合に、電話会議で仙台に居ながら調停手続をしてくれるはずですがと説明したことはありますが、その結果は聞いておりません。 ○この家事事件手続法、まだ施行後1年半で、判らないことが多いですが、立案担当者による唯一の逐条解説書である商事法務発行「逐条解説家事事件手続法」を購入済みでした。これは、全962頁にも及ぶ大著で家事事件手続法で判らないことが出てきたらこの著作を見れば先ず解決できると思われます。 第121条(申立ての取下げの制限) 次に掲げる申立ては、審判がされる前であっても、家庭裁判所の許可を得なければ、取り下げることができない。 一 後見開始の申立て に関する解説は次の通りでした。 1.本条の趣旨 本条は、申立の取下の制限について定めるものであり、第82条1項の「特別の定め」に該当する。 2.後見開始の申立ての取下げの制限(第1号) (1)家事事件の申立は、原則として、審判前であれば自由に取り下げることができるが(第82条1項)、後見開始の審判事件においては、自らが成年後見人になることを希望して申立をした申立人が、成年後見人に選任される見込みがないことを知って、その申立を取り下げることがあり、その結果、後見を開始するための要件が充足しているのにもかかわらず、後見開始の審判をすることができない事例があるとの指摘がある。 このような場合において、後見開始の審判をすることができないことは公益性の見地や成年被後見となるべきものの保護の観点から看過できない。またこのような場合には、取下の自由に対する制限により対応するのではなく、他の者に別の申立(例えば市町村長による申立)を促すことにより対応すべきであるとも考えられるが、迂遠であって、また適時の別申立を期待できない場合もあろう。 そこで、第1号では、後見開始の申立は、審判がされる前であっても、家庭裁判所の許可を得なければ、取り下げることはできないとしている。 以上:1,980文字
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