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平成10年3月30日岡山地裁判決全文紹介1

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平成25年 2月24日(日):初稿
○現在、当事務所で取扱中の遺産分割事件について「遺産として預貯金しかない場合の特別受益控除は3」で紹介した平成12年2月24日最高裁判決(判時1703号137頁、判タ1025号125頁、民集54巻2号523頁)の事案検討のためこの最高裁判決の第一審である平成10年3月30日岡山地裁判決(民集54巻2号530頁、判タ1002号244頁)内容を精査する必要が生じました。先ず判決全文を2回に分けて紹介します。


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主文
一 本件訴えを却下する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第一 請求

 原被告の母訴外亡Aを被相続人、原被告を共同相続人とする、別紙遺産目録記載の同被相続人の遺産の分割における、民法903条1項に基づく、被告の具体的相続分の価額は金2億0169万8500円、同相続分率は0.502679(4億0124万7000分の2億0169万8500)を超えないことを確認する。

第二 事案の概要
一 争いのない事実

1 被相続人亡大崎A(以下「A」という。)は平成4年11月10日死亡し、相続が開始した。Aの相続人は長女である被告と長男である原告であり、その法定相続分は各二分の一である。

2 岡山家庭裁判所は、平成7年2月23日、被告がAの遺産について原告を相手方として申し立てた遺産分割申立事件(同裁判所平成5年(家)第2222号事件)について、次のとおりの主文内容の審判(以下「本件審判」という。)をした。
1 被相続人大崎Aの遺産を次のとおり分割する。
(1) 別紙遺産目録記載の1、2、8、9の物件は申立人(被告)の取得とし、同目録記載の3ないし7の物件は相手方(原告)の取得とする。
(2) 相手方(原告)は申立人(被告)に対し、2億2312万円を本審判確定後6月以内に支払え。

2 本件手続費用中、鑑定人Bに支給した費用は当事者双方の平等負担とする
。」

本件審判の理由(甲第一号証〔本件審判書〕の理由の2項以下)の概要は次のとおりである。

2 遺産の範囲
 本件遺産分割の対象となる被相続人(A)の遺産は、別紙遺産目録記載の各物件と認める。なお、本件の遺産であった岡山市駅元町437番宅地の借地権の一部が、岡山市の施行する都市計画事業のため、岡山市土地開発公社に買収(遺産目録記載の4がその残借地権)されたが、上記買収による補償金(建物移転補償金等を含む)については、本件遺産分割の対象から除外する旨当事者間に合意が成立している。

3 遺産の評価額
 本件遺産の相続開始時及び分割時における各評価額は、遺産目録の評価額欄記載のとおり認定する。なお申立人(被告)は、岡山市○○町**9番の土地と同所**7番の土地は地続きであって一体として利用しうる状況にあるから、両土地は一体評価すべきである旨主張するが、**7番の土地は借地であって所有地の**9番の土地と併せて処分することは実際上難しく、また現実に異った目的で使用されているため、両土地とも別個に処分の対象とされる可能性が高いから、これらは単独評価によるものとする。

4 特別受益
(1)申立人(被告)
 申立人(被告)は、昭和62年10月31日、別紙物件目録記載の2の建物を被相続人Aより贈与されているから、これは特別受益に該当し、持戻し財産とみられる。その評価額は、相続開始時において400万円と認定する。

(2)相手方(原告)
 相手方(原告)は、上記物件目録記載の1の土地の借地権者であった被相続人Aに同地(底地)の購入を勧められ、同人より贈与された900万円と自己資金300万円とを併せた1200万円で前権利者(持分権者)から、昭和57年3月、同地の持分2分の1を買い受けたことが認められる。相手方(原告)は、被相続人(A)から贈与された金員が特別受益に該当する旨主張するが、被相続人Aの援助がなければ相手方(原告)が上記物件を購入することができなかったことは明らかであるから、同物件を持戻しの対象とみるのが当事者間の衡平を図るうえで相当と思料されるところ、その特別受益額は上記物件評価額に被相続人Aの援助割合である1200分の900を乗じた額とするのが相当である。それによれば、相続開始時の額が1億6179万円(1万円未満切捨て)となる。

5 具体的相続分の算定
 申立人(被告)の具体的相続分は3億7519万5000円、相手方(原告)の具体的相続分は2億1740万5000円、また、申立人(被告)の具体的取得分は3億0016万8662円、相手方(原告)の具体的取得分は1億7393万1338円となる。

6 当裁判所の定める分割方法
 当事者双方の遺産に対する使用管理状況や遺産の内容その他一切の事情を考慮すれば、本件は現物分割の方法によるべきであり、申立人(被告)に遺産目録記載の1、2、8、9の物件を取得させ、相手方(原告)に同目録記載の3ないし7の物件を取得させるのが相当である。そして相手方(原告)に対しては、現実の取得額と上記取得分との差額である2億2312万円(1万円未満切捨て)を本審判確定の日から6月以内に支払わせるのが相当と思料される。なお、鑑定費用は当事者双方に平等負担させることとする。」

3 原告は、本件審判を不服として、広島高等裁判所岡山支部に抗告し(同支部平成7年(ラ)第15号事件)、抗告理由として、
〈1〉相手方(被告)の特別受益について、原審判(本件審判)が認定した別紙物件目録記載の2の建物だけでなく、その敷地利用権も相手方(被告)の特別受益にあたる、
〈2〉抗告人(原告)の特別受益について、別紙物件目録記載の1の土地を購入したのは抗告人(原告)であり、被相続人(A)からは土地購入資金の一部として900万円の贈与を受けたに過ぎず、また、その金員贈与は、婚姻・養子縁組のための贈与でも、生計の資本としての贈与でもないから抗告人(原告)に特別受益はないし、仮に特別受益があると認められるとしても、その対象は贈与を受けた金員であって、土地ではない、
〈3〉遺産の評価について、別紙遺産目録記載の4の土地の借地権の価額は、抗告人(原告)が同土地(底地)の持分権二分の一を有すること及び借地権の残存期間が僅かであることを考慮し、相続開始時3352万5000円、分割時1720万円と算定すべきである
旨主張した。

 一方、被告も本件審判について附帯抗告し(同支部平成7年(ラ)第18号事件)、
〈1〉抗告人(原告)は別紙物件目録記載の1の土地の購入資金全額の援助を被相続人(A)から受けているとして、同土地の価額全額が抗告人(原告)の特別受益にあたる、
〈2〉遺産の評価について、別紙遺産目録記載の3、4の土地は、一体評価すべきものである、原審判(本件審判)は別紙物件目録記載の1の土地の特別受益を具体的相続分に算入するに際し、その半分が既に岡山市によって買収されたこと及びその買収価格を参酌しておらず、その分割時の価額の評価が異常に低くなっている
旨主張した。

しかし、同支部は、平成8年9月27日、当事者双方の主張をいずれも排斥し、各抗告を棄却する旨の決定をした。

4 これに対し、原告は、更に抗告を申立てたが(最高裁判所平成8年(ク)第594号)、最高裁判所第一小法廷は、平成8年12月16日、右抗告を不適法として却下し、本件審判は確定した。



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