平成25年 2月24日(日):初稿 |
○現在、当事務所で取扱中の遺産分割事件について「遺産として預貯金しかない場合の特別受益控除は3」で紹介した平成12年2月24日最高裁判決(判時1703号137頁、判タ1025号125頁、民集54巻2号523頁)の事案検討のためこの最高裁判決の第一審である平成10年3月30日岡山地裁判決(民集54巻2号530頁、判タ1002号244頁)内容を精査する必要が生じました。先ず判決全文を2回に分けて紹介します。 ***************************************** 主文 一 本件訴えを却下する。 二 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第一 請求 原被告の母訴外亡Aを被相続人、原被告を共同相続人とする、別紙遺産目録記載の同被相続人の遺産の分割における、民法903条1項に基づく、被告の具体的相続分の価額は金2億0169万8500円、同相続分率は0.502679(4億0124万7000分の2億0169万8500)を超えないことを確認する。 第二 事案の概要 一 争いのない事実 1 被相続人亡大崎A(以下「A」という。)は平成4年11月10日死亡し、相続が開始した。Aの相続人は長女である被告と長男である原告であり、その法定相続分は各二分の一である。 2 岡山家庭裁判所は、平成7年2月23日、被告がAの遺産について原告を相手方として申し立てた遺産分割申立事件(同裁判所平成5年(家)第2222号事件)について、次のとおりの主文内容の審判(以下「本件審判」という。)をした。 「「1 被相続人大崎Aの遺産を次のとおり分割する。 3 原告は、本件審判を不服として、広島高等裁判所岡山支部に抗告し(同支部平成7年(ラ)第15号事件)、抗告理由として、 〈1〉相手方(被告)の特別受益について、原審判(本件審判)が認定した別紙物件目録記載の2の建物だけでなく、その敷地利用権も相手方(被告)の特別受益にあたる、 〈2〉抗告人(原告)の特別受益について、別紙物件目録記載の1の土地を購入したのは抗告人(原告)であり、被相続人(A)からは土地購入資金の一部として900万円の贈与を受けたに過ぎず、また、その金員贈与は、婚姻・養子縁組のための贈与でも、生計の資本としての贈与でもないから抗告人(原告)に特別受益はないし、仮に特別受益があると認められるとしても、その対象は贈与を受けた金員であって、土地ではない、 〈3〉遺産の評価について、別紙遺産目録記載の4の土地の借地権の価額は、抗告人(原告)が同土地(底地)の持分権二分の一を有すること及び借地権の残存期間が僅かであることを考慮し、相続開始時3352万5000円、分割時1720万円と算定すべきである 旨主張した。 一方、被告も本件審判について附帯抗告し(同支部平成7年(ラ)第18号事件)、 〈1〉抗告人(原告)は別紙物件目録記載の1の土地の購入資金全額の援助を被相続人(A)から受けているとして、同土地の価額全額が抗告人(原告)の特別受益にあたる、 〈2〉遺産の評価について、別紙遺産目録記載の3、4の土地は、一体評価すべきものである、原審判(本件審判)は別紙物件目録記載の1の土地の特別受益を具体的相続分に算入するに際し、その半分が既に岡山市によって買収されたこと及びその買収価格を参酌しておらず、その分割時の価額の評価が異常に低くなっている 旨主張した。 しかし、同支部は、平成8年9月27日、当事者双方の主張をいずれも排斥し、各抗告を棄却する旨の決定をした。 4 これに対し、原告は、更に抗告を申立てたが(最高裁判所平成8年(ク)第594号)、最高裁判所第一小法廷は、平成8年12月16日、右抗告を不適法として却下し、本件審判は確定した。 以上:3,039文字
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