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賃貸用不動産を贈与された場合賃料収入の評価

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平成24年10月15日(月):初稿
○平成24年10月の事務所旅行中に「民法第903条特別受益制度の基礎の基礎-具体例考察」を読んだ方から、「生前贈与で取得した賃貸不動産で得た賃料収入は、持ち戻しの対象となるのでしょうか?」とのごくシンプルな質問がありました。弁護士稼業を長くやっていると、時に、ごく簡単な事例についての質問でも、サッと答えられない場面に遭遇することがあります。この不動産賃料も持戻対象になるかどうかの質問も、簡単には答えられません。

○法律問題は、最終的には条文の規定によって決まりますので、先ず条文を確認することから始めますが、関連する規定は次の民法第903条です。
第903条(特別受益者の相続分)
 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前3条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。


○持戻財産とは、「贈与の価額」であり、贈与対象財産の価額です。この質問での、賃貸用不動産自体は贈与対象財産であることに問題はなく、当然持戻の対象となります。この「贈与の価額」とは、①贈与時説、②相続開始時説、③遺産分割時説の3説ありましたが、②相続開始時説が通説・判例とされています。

○本件質問の趣旨は、贈与財産対象である不動産が、賃貸用物件で賃料収入が発生していた場合、その賃料収入合計は、「贈与の価額」に含まれるのかどうかというものです。例えば、被相続人Aの相続人は長男B、二男Cの2人で、Aは遺産として現金3000万円のみを残して死去し、相続人長男Bに死去10年前当時1000万円相当の賃貸用不動産を生前贈与して、その不動産は相続開始時には、2000万円に価格上昇し、贈与後相続開始までの10年間に1000万円の賃料収入を取得していた場合で検討します。

○この場合、相続開始時2000万円相当の賃貸用不動産が持戻の対象になることは争いがなく遺産分割対象財産が現金3000万円、乙不動産2000万円の合計5000万円について法定相続分2分の1ずつ分配するとなると、B、C供に2500万円の取得分があるところ、Bは特別受益乙不動産2000万円分を控除して500万円、Cは2500万円を取得します。

○これに対し持戻不動産2000万円のみならず生前贈与後相続開始時までの賃料収入1000万円も「贈与の価額」に含まれるとすると特別受益としての持戻対象は合計3000万円で、遺産分割対象財産合計6000万円となります。B、Cは各2分の1即ち3000万円ずつ取得し、Bは特別受益3000万円を控除して取得分はなく、Cのみが3000万円全額を取得することになります。

○Cの立場からすれば当然賃料収入も「贈与の価額」に算入すべきですが、この点を明確に論じた学説・判例は現時点では見当たりません。あくまで私自身の個人的見解ですが、特別受益制度は、相続の実質的公平性を担保するための制度であり、公平性の担保という意味では1000万円の賃料収入を得た状況も考慮すべきであり、賃料収入も「贈与の価額」に加えて遺産3000万円はCが取得すると考えるべきと思っております。

○但し、「贈与の価額」に含まれるのは、賃料売上全部ではなく、賃貸用不動産維持の為の必要経費は差し引いてなお残存した純益です。1000万円の賃料収入を維持するため500万円の経費がかかっている場合は、これを「贈与の価額」から控除するのは当然です。実務的には経費の範囲即ち「純益」の評価が争いになりそうです。Bとすれば賃料収入の大部分は自力で稼いだものだと主張しそうだからです。
なお、引き続き学説・判例についての調査を続けます。
以上:1,580文字

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