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相続人への死因贈与と相続債権者との関係1

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平成21年 1月30日(金):初稿
○被相続人Aが、甲乙両不動産を所有していたところ、長男のBに甲不動産を死因贈与して仮登記をしていたところ、Aの死去後、相続人Bさんが、Aの相続について放棄または限定承認してもBは、甲不動産を確保できるかとの質問を受けました。仮にAがCに1億円の借金があり、Bは相続によりこの借金も法定相続分によって承継しなければならない地位にあるところ、甲不動産という財産だけ取得して、借金の相続承継を免れることが出来るかという問題です。

○AがCに対する借金から甲不動産を守りたいと思って他の財産ではCに対する返済が出来ないことが明らかな状況で甲不動産を死因贈与した場合、この死因贈与契約自体が詐害行為として取消の対象になりますが、この詐害行為の問題に至る前に、相続の問題として、借金は相続しないで財産だけ事実上承継するとの虫の良いことが出来るかという点を検討します。

○この問題の参考になる判例としては「不動産の死因贈与の受贈者が贈与者の相続人である場合において、限定承認がされたときは、死因贈与に基づく限定承認者への所有権移転登記が相続債権者による差押登記よりも先にされたとしても、信義則に照らし、限定承認者は相続債権者に対して不動産の所有権取得を対抗することができない。」との平成10年2月13日最高裁判例があります(判タ970号114頁、判時1635号49頁)。

○この判例のケースでは、BがAの相続について限定承認をしましたが、CがAに対する債務名義(執行証書)に基づきBへの承継執行文(相続財産の限度における執行を許すもの)を得て強制競売開始決定を得ました。これに対し,Bは、①限定承認をしたこと、②本件土地は被相続人から死因贈与を受けて仮登記(相続開始前)及び本登記(相続開始後)を経たものであるから限定承認における責任財産にならないこと、を主張して右強制競売の排除を求める第三者異議訴訟を提起しました。

○第一審判決(金法1461号52頁)は、相続財産は限定承認により相続債権者等のために差し押さえられたと同様の効力が生じ、死因贈与を受けた原告らは対抗要件を具備していない限り、相続債権者である被告に所有権取得を対抗することができないが、相続開始前に仮登記がされている本件においては仮登記の順位保全効により所有権取得を相続債権者に対抗できるとしてBの請求を認めました。

○その控訴審判決では(判タ915号259頁)は、第一審判決を取り消してBの請求を棄却したのでBが上告したことに対する最高裁判決が上記のもので、「信義則に照らし」Bは借金は相続しないのに財産だけ取得することは出来ないとしました。別コンテンツでその理由をさらに詳しく検討します。
以上:1,112文字

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