平成18年 9月18日(月):初稿 |
○父A(60歳)、母B(55歳)、長男C(30歳、独身)が飛行機墜落事故に遭って死亡した場合の相続関係を整理します。Aには8000万円、B、Cは各800万円の一家全体で9600万円の財産があり、Aには弟D(58歳)、Bには妹E(51歳)がいるも、AB何れの両親も死亡し、Cは一人っ子だとします。この場合、時々思い出しては「あれっ!どっちがどうだったけ」と迷うことがあるからです。 ○飛行機墜落事故の場合、生存する可能性は殆どありませんが、日航ジャンボ機墜落事故では乗客乗員520名が死亡しましたが奇跡的に女性4人だけが生き残りました。A、B、C3人が同じ飛行機墜落事故にあって最終的に死亡したとしても3人同時に死亡するとは限りません。 ○A、B、Cの順に死亡した場合、Aの財産は妻Bと子Cが各2分の1の割合(各4000万円、B・Cの財産は各4800万円に増加)で法定相続し、次に妻Bの死亡によってBの財産(4800万円)は子Cが全て相続し(9600円に増加)、次にCが死亡したときは相続人不存在で最終的にAの財産9600円は国庫に帰属します。 ○C、B、Aの順に死亡した場合、先ずCの財産は両親A・Bが各2分の1の割合(各400万円、Aの財産は8400万円、Bの財産は1200万円に増加)で法定相続し、次にBの財産(1200万円)は夫Aが4分の3(900万円でAの財産は9300万円に増加)、Bの妹Eが4分の1(300万円)の割合で法定相続し、最後にAの財産(9300万円)はその弟Dが全部相続します。 ○C、A、Bの順に死亡した場合、先ずCの財産は両親A・Bが各2分の1(各400万円、Aの財産は8400万円、Bの財産は1200万円に増加)の割合で法定相続し、次にAの財産は妻Bが4分の3(6300万円でBの財産は7500万円に増加)、Aの弟Dが4分の1(2100万円)の割合で法定相続し、最後にBの財産(6700万円)はその妹Eが全部相続します。 ○このようにA、B、Cの死亡順が異なることにより、Aの弟Dの取得分はゼロ→9300万円→2100万円と、Bの妹Eの取得分はゼロ→300万円→6700万円と変化しますので、A、B、Cの死亡順を巡ってD、E間で熾烈な争いになる可能性があります。 ○しかし飛行機墜落事故、海難事故等で死亡した場合、その死亡順を後で証明するのは不可能に近いものです。そこで民法第32条の2で「数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。」と規定し、同時死亡の場合、A、B、C間には相続は発生せず、Aの相続人はD、Bの相続人はE、Cの相続人不存在となり、Aの財産8000円はDに、Bの財産800万円はEに、Cの財産800万円は国庫に帰属することになります。 以上:1,181文字
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