平成18年 7月24日(月):初稿 |
○家事調停の申立(調停前置主義) 遺留分減殺請求は相続を巡る家事事件なので相続人以外の第3者を相手とする場合も原則として訴えを提起する前に家庭裁判所に調停申立が必要です(家事審判法18条1項)。但し、特に第3者が相手の場合、いきなり地方裁判所に訴えを提起しても家事調停に付されず審理されることが多いようです。 ○遺留分回復の訴えと言っても詰まるところは遺留分減殺請求により取得した所有権に基づく返還請求であり、遺留分権利者が受遺者或いは目的物を譲り受けた悪意の第3者を被告として、「別紙遺産目録乃至の不動産につき、平成○年○月○日遺留分減殺を原因とする共有持分○分の○の共有持分権移転登記手続をせよ。」と言う様な請求の趣旨で訴えます。 ○遺留分算定の基礎となる財産は、民法1029条で「遺留分は、被相続人が相続関始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して、これを算定する。」、同1030条で「贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限り、前条の規定によってその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年前の日より前にしたものについても、同様とする。」と定められ、共同相続人間の贈与は、1年以上前であっても原則として無条件で遺留分減殺対象財産に加算されます(最判h10.3.24)。 ○遺留分算定基礎財産の評価の基準時は相続開始時で、その方法は、不動産は時価、債権は回収可能性を考慮した金額、金銭については贈与時の金額を相続開始時に貨幣価値に換算した価額となります。尚、民法1029条2項で「条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。」ことになります。 ○遺留分侵害額の算定は、以下の方法で行います(最判平成8年11月26日判決)。 ①遺留分基礎財産額の確定-相続開始時の財産全体の価額に贈与財産価額を加え、債務全額を控除 ②これに相続人の個別遺留分率を乗じる ③遺留分権利者自身の特別受益財産額と相続による取得財産額を差し引き ④遺留分権利者自身が相続した債務額を加算する ○以上を算式化すると以下のようになります。 遺留分侵害額=A×B-C-D A=積極財産額+贈与額-相続債務=純相続財産+贈与額 B=個別遺留分率 C=当該相続人の受贈額+受遺額(=当該相続人の特別受益額) D=当該相続人が相続によって得た積極財産-相続債務分担額(当該相続人の純相続分) 以上:1,030文字
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