平成29年 7月15日(土):初稿 |
○「不動産売主なりすまし詐欺加担責任巨額損害賠償を弁護士に命じた判例紹介4」の続きで、まとめと感想です。 先ず登場人物と事案概要です。 (登場人物) 売買対象本件不動産真の所有者B、Bになりすました自称B、本件不動産買主原告、原告に本件不動産を紹介したG、Gに本件不動産を紹介したF、Fがかつて業務を依頼した被告弁護士 (経緯) H25.9頃;Fが本件不動産の情報を得てGに伝える h25.10頃;Gが本件不動産に興味を抱き、Fに対し窓口となる弁護士の面会を求め、本件不動産購入を打診 h26.1.23頃;Fが被告に本件不動産売主が、売買契約の立会弁護士を探しており、立会を依頼 h26.2.13;Fは自称Bを伴い被告事務所を訪れ、自称Bが持参した住基カードで自称Bを確認、自称Bは被告に売買立会希望表明 h26.2.17;Fが被告に、本件不動産登記識別情報通知紛失を理由にBの本人確認情報作成を依頼、 h26.2.18;Fは自称Bを伴い被告事務所を訪れ、住基カードでBを確認し本件不動産登記識別情報通知紛失状況説明資料追加を求めた h26.2.19;Fの要請で被告がGと面会、Gは被告が売主本人確認情報を作成することを知った h26.2.23;GがFに原告が本件不動産を購入すると連絡 h26.2.25;F・自称Bが被告事務所で遺産分割協議書写しと本件不動産登記識別情報通知紛失確認書、関係者印鑑登録証明書を被告に提示 h26.2.26;被告事務所ビル地下会議室で売主側関係者自称B・F・被告、買主側関係者原告・G・司法書士・弁護士等10名集合し、売買契約書作成締結 原告側司法書士が所有権移転登記申請をして原告・Gは、現金2億4000万円を自称Bに支払 h26.2.27;本人確認情報作成・売買契約締結立会報酬としてBから31万5000円受領 h26.3.31;本物Bが、本件不動産の移転登記を知り、本件不動産処分禁止仮処分申立・命令発布 自称Bが被告に持参した住基カード、遺産分割協議書、印鑑登録証明書等は全て偽造されたものであることが発覚 本物Bは、原告に本件不動産所有権移転登記抹消登記手続訴訟を提起した h27.10.27;原告は本物Bとの間で本件不動産所有権移転登記の抹消登記手続をするとの和解成立 原告は、被告所属弁護士会に被告の懲戒請求、自称Bを氏名不詳の者として刑事告訴 ○被告弁護士は、僅か31万5000円の本人確認情報作成・売買契約締結立会報酬のために自称Bの代金2億4000万円の詐欺に過失によって加担したとして、1億6044万円もの大金を損害賠償として支払を命じられました。弁護士としては、正に恐怖の体験です。幸い弁護士賠償責任保険に加入していたようですが、未加入で破産に至ったら弁護士資格を失ったところでした。 ○私自身も売買契約の立会を求められることがありますが、私自身が関与しない売買契約の立会だけの業務を行っておりません。まして本人確認情報作成業務は、これまで一度も依頼されたことはなく、仮に依頼されても断ります。理由は、「怖い」の一言です。この判決をつぶさに読んで益々怖くなり、絶対に受任しないことを更に強く自覚しました。 以上:1,324文字
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