平成28年 3月 9日(水):初稿 |
○ちと古くなりましたが、週刊エコノミスト 2016年1月12日号に以下の記事が掲載されました。「資格だけでは食えない」時代の到来は言われて久しいものですが、弁護士業界に関しては、指摘されるほど厳しくなっているのだろうかとの感もあります。当事務所に関しては、一番売上が大きかった50代10年間に比較して、60代既経過5年間は、確かに年間取扱事件数は相当程度減り、それに伴い売上も一定割合減っていますが、何とか食えてはいます。60代に入った平成23年は東日本大震災の影響で事件数・売上とも前年比25%減でしたが、平成24年以降は一応売上は右肩上がりです。 ○しかし、弁護士2年目に入った2代目勤務弁護士には、事務所事件は多少置いても、民事・刑事限らず、兎に角、貪欲に自分の事件を取るよう努めるよう指示しています。東京などは、国選刑事事件すら取り合いになっているとの噂も聞きますが、仙台では、1,2年生弁護士にも国選刑事事件は、結構,回っているように見えます。民事事件も、法律相談センターから紹介される事件は殆どなくなりましたが、公共機関相談担当を契機に事件を取って来ているように見え、また、登録数年の若手弁護士が、勤務弁護士を採用している例も結構見られます。 ○船井総研の一番安いコースに入って年に数回仙台で開催される勉強会に出ています。ここで配付される資料を見ると、全国で船井総研勉強会に参加し、その教えを守ってシッカリマーケッティング活動をしている事務所の中には、相当売上を上げているところが多数あります。営業努力で実績を上げるのはどの業界でも同じで、食えないと嘆く前に営業努力を尽くすべきとつくづく思います。ならば、お前は、シッカリ営業努力をしているのかと問われると、毎日、HP更新する以外何もせず、努力していると答えられないのが辛いところですが(^^;)。 ******************************************** ◇資格だけでは「もう食えない」 ◇勝ち負けの差がより鮮明に 秋本裕子・酒井雅浩 編集部) 会計士、税理士、弁護士は今も難関試験で知られるが、ただ資格を手にしただけで「食えた」時代はもう終わった。仕事の内容は激変している。何に取り組むべきなのか――。 2015年12月、「士(さむらい)業」と呼ばれる人の一部で、ある調査結果が話題になった。それは、野村総合研究所が公表した「人工知能(AI)やロボットなどによる代替可能性が高い100種の職業」。人工知能で代替可能な仕事の一つに「会計監査係員」、つまり会計士が挙がったからだ。 ある大手監査法人の公認会計士は、「人工知能で決算数値の矛盾や異常値も見つかりやすくなるだろう。会計士の仕事の多くはコンピューターでもできるし、人間以上の成果を出すかもしれない」と認める。 会計士だけではない。税理士や弁護士の仕事も、同様にコンピューターで代替できる部分があると言える。過去の判例やデータに裏付けられた知識や経験がモノを言う職業だ。その分、大量のデータを蓄積し、瞬時に必要な情報を取り出すことができる、あるいは省力化できるという目的から、コンピューターが大きな役割を果たしていく可能性は高い。 ◇厳しさ増す事業環境 高度な知識を必要とする難関資格の代表格とされる会計士、税理士、弁護士を取り巻く環境は近年、厳しさを増している。 最近、特にクローズアップされているのは公認会計士だ。東芝の不正会計を見抜けなかったのは「重い注意義務違反に当たる」として、金融庁が15年12月22日、監査を担当した新日本監査法人に課徴金21億円、3カ月間の新規契約禁止、業務改善命令の行政処分を科すと発表した。監査法人への課徴金は08年の導入以来初めてという重い処分だ。 11年に発覚したオリンパス事件以降、監査の質強化に取り組んできた中で起きた問題。監査の質や会計士の能力がさらに問われる事態になった。特に問題を起こした新日本については、「離れる上場企業が増えるのではないか」(関係者)という存続の危機にまで追い込まれている。 大手監査法人の若手会計士は、「上場企業の業績が改善する中、仕事量は増えたのに会計士の数が足りない。東芝問題で会計士全体に問題があると思われてしまう」と不満を漏らす。ベテラン会計士も、「このままでは公認会計士の希望者はさらに減り、優秀な人材も目指さなくなるのではないか」と危機感を募らせる。 一方、税理士の事業環境もますます悪化している。会計事務所が収入源とする税務顧問先は中小企業だ。中小企業は日本の企業全体の99%を占め、約400万社あると言われるが、7割は赤字。そのうち40万社はキャッシュフローがマイナスで、金融機関への借り入れ返済が滞っているという。節税対策で税理士が力を発揮できるような状況ではない。それどころか、状況が悪化すれば多くの企業が経営破綻し、結果的に顧問先企業が減る一方になってしまう。 中小企業の経営支援を行うため、会計事務所を組織化しているマネジメントパートナーズ(東京都港区)の酒井篤司社長は「会計事務所は税務顧問だけでは生き残れないと言われて久しいが、無料のクラウド会計ソフトの台頭や税務顧問料の値下がりなど、近年ますますその状況が強まっている」と話す。 弁護士も同様だ。弁護士業界が厳しさを増すきっかけとなったのは、政府の閣議決定だ。02年、司法試験の年間合格者を「10年に年間3000人」とする方針を掲げ、法科大学院修了者の「7~8割」が合格できるとした。ただ、合格者はある程度増えたものの、当初の理念だった社会人や理系出身者らを迎える「人材の多様性」は薄く、法律的な需要が「供給」に比べて少ないミスマッチが発生しているのが現状だ。ある大手法律事務所の弁護士は「『弁護士がいろいろなニーズを満たす』という、根拠があいまいな考えで合格者を増やしたが、問題は弁護士の数ではなく、リーガルニーズの偏在をいかに解消すべきかだった」と断じる。 地方では弁護士余りが問題になり、「食えない弁護士」も現実となっている。一方で企業法務に携わる弁護士は「弁護士が増えたら困るというのはクリエーティブな仕事をしていない人。例えば、消費者金融の過払い訴訟のような仕事は人工知能に取って代わられるかもしれない」と厳しく指摘する。弁護士の仕事は「契約による予防、国際化が今の最前線」となっており、日々勉強が必要。「合格すれば一生困らない」という時代は終わった。格差は今後、ますます広がる可能性が高い。 ◇問われる新たな戦略 こうした中、今後、どのように資格や職業の魅力向上、能力の発揮につなげていくべきか。今から真剣に考える人とそうでない人で、将来的に大きな差が出ると言えそうだ。 新しい動きも出ている。その一つが、マネジメントパートナーズの取り組みだ。経営が悪化した中小企業の経営改善計画策定を税理士がサポートし再生に導こうと、会計事務所へのノウハウ提供を行っている。「企業の経営改善、事業再生」を会計事務所の新たな事業の柱に据え、税理士の役割拡大につなげる目的だ。 資格を持っているだけでは、「もう食えない」時代。だが、どんな業界にも必ず成功者はいて、成功するには何か理由があるはずだ。資格を生かし、自ら環境を切り開く新たな戦略が問われている。 以上:3,031文字
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