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岡山元弁護士巨額横領事件の見通し等-立替金回収が重要

平成25年 5月13日(月):初稿
○「弁護士巨額横領事件検証委員会報告書(要約)のポイント」を続けます。
平成25年4月現在、この事件の元弁護士が起訴された内容は「6年8ヶ月にわたり総額9億762万円を横領したというもの」とのことですが、その被害者数データが検証委員会報告書には見出せませんでした。「弁護士と闘う」の記事によると「岡山弁護士会被害者の会」が結成され、被害者数は300人にも上るとの予測が記載されています。しかし、被害者の会の会員数の正確なデータも見出せません。

○平成25年3月に元弁護士に対する破産手続開始決定が出ていますので、この開始決定書を見れば破産手続開始決定申立書に記載された債権者数・債権額等がほぼ判明します。破産手続開始決定と同時に破産管財人と第1回債権者集会期日も決定されています。現在、破産管財人が元弁護士の債権・債務等詳細を調査中と思われますが、第1回債権者集会期日においてその調査結果が発表されます。第1回債権者集会は平成25年6月7日とのことです。この集会で事件内容の概要が明らかになるはずですが、事件の全貌詳細が明らかになるには更に時間が必要と思われます。

○ポイントは、「人数にすると100人を超え、支払った金額は優に10億円を超える。」との立替金の行方です。立替金とは第三者のためにする一時的支払で、詰まるところ貸金であり、元弁護士は立替に基づく返還請求権があります。この返還請求権は元弁護士の財産で10億円の返還請求権があります。しかし、検証報告書によると「立替金というのは、民事・刑事を問わず、事件の依頼者・相手方・関係者・交通事故の被害者等に対して、賠償金・示談金・取立金・生活費等を立て替えて支払った」とあり、10億円全てが返還請求権のある純然たる立替金とは評価出来ないようです。

○この立替金と称する支払金の内いくらが実質的回収可能性があるかがこの破産事件の最大のポイントです。支払不能と裁判所が認めて破産手続開始決定を出していますから、裁判所は回収可能性は相当低いと評価しています。もし10億円の回収可能性があれば、債務が10億円あっても支払不能ではなく破産手続開始決定は出されないからです。

○現在破産管財人が、100人以上に対する10億円を超える立替金についてデータを集めて返還請求等をしていると思われますが、何割を回収できるかがポイントです。請求された方はおそらく反対債権との相殺或いは贈与等の抗弁(言い訳)を出して支払を拒否する例が多いと思われます。「立替金支払理由は、必ずしも脅されていたというものではなく、かといって同情や憐憫のためでもない」との元弁護士本人説明は全く不可解で、管財人は回収に苦労すると思われます。

○この立替金回収が、破産管財人の弁護士としての腕の見せ所になります。管財人弁護士には、金の地金購入等と称してお年寄りから2000億円も騙し取った豊田商事事件での中坊公平管財人のように国から税金まで回収する柔軟な発想が必要になるでしょう。請求された方も弁護士を依頼して種々の理由をつけて請求を免れる方策を取ると思われ、請求される方の代理人に岡山県弁護士会会員がつくと思われます。双方やりづらそうで、この事件の破産管財人は大変な役割を引き受けましたが、被害者救済のため大いなる健闘が期待されます。

○元弁護士の債務についての正確なデータも検証委員会報告書からは見出せません。金融機関から1億円借りたなんて記述もあります。仮に横領による損害賠償債務や借入金債務等債務合計額が10億円だとして、立替金返還請求件等元弁護士資産の換価金が3億円になれば債権者に対する配当率は3割近くなります。問題は元弁護士資産だけでは配当できない部分の救済を如何にするかです。この問題については別コンテンツで検討します。
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