平成25年 1月 8日(火):初稿 |
○「法曹は社会の各分野で羽ばたけ、弁護士就職難対策3」で、平成24年10月のことですが、「仙台弁護士会でも,おそらくその方は,行政官の方が自分に合っていると思ったの最大理由と推測されますが、既に1名の方が弁護士を完全に止めて行政官に転身されました。」と記載していました。この方は弁護士登録を抹消しましたので、弁護士業務はせず、行政官として職務に就いたと思われますが、法律実務経験を数年間経て法律知識を有しており、やる気になれば法律相談、法律アドバイス等の業務も事実上可能であり、採用した行政側ではそのような役割も期待があったかも知れません。 ○ところが、以下の平成25年1月4日河北新報配信記事によると、富谷町で「職務は法律に関わる町民の生活相談業務、行政訴訟への対応、条例作成のチェックなど。弁護士活動に必要な仙台弁護士会への登録をしないのが条件で、町の職務に専念してもらう。」、「年間報酬は約480万円」、「3年間の任期付き職員」との条件で「弁護士の資格を持つ司法修習修了者を新年度に職員として採用する方針を固め」たとのことです。 ○「年間報酬約480万円」は、おそらく、弁護士1年生としての報酬としては条件はよい方と思われます。10年くらい前までは弁護士1年生の報酬は月額50万円、年間600万円と言われていましたが、その後相当低下し、月額30万円程度の例も相当多くなり、且つ、賞与無し社会保険や弁護士会費等は自己負担という例が多く、この場合の月額30万円の実質収入は20万円以下に下がり、実質年収は200数十万円です。 ○これに対し「年間報酬約480万円」は、15年程度勤務する大卒職員に相当する給料とのことですが、当然、社会保険等雇用主負担分が実質プラスになり、何より、弁護士会登録不要ですので、仙台弁護士会の場合、月額約5万5000円の会費を納める必要がありませんので66万円がプラスになります。弁護士になった場合、経費を除いた申告所得が480万円であり、且つ、安定して受領出来る訳ですから、現在の弁護士経済状況からは好条件とも言えます。 ○職務として、「行政訴訟への対応、条例作成のチェック」は全く問題ありませんが、「法律に関わる町民の生活相談業務」を担当することには、ちと、問題が生じます。相談内容が、富谷町行政に対する相談であれば行政苦情窓口に回せばよいのですが、富谷町公道との境界争い等富谷町との民事紛争は扱えず、また、「法律に関わる町民の生活相談」として、多重債務問題の相談は問題ないと思われますが、町民同士の争いに町として関与するのは町の中立性との関係で問題になります。 ○また、何より厳しく評価すると、根本的な問題として、弁護士登録をしないで法律相談が出来るのかという問題提起もあります。私は、この点は、あまり目くじらをたてる必要はないのではとも思っていますが、議会での「相談業務は法律知識ではなく、行政や人生の経験に通じることが大事」「資格のあるなしだけで採用する意義があるのか」などの疑問には、全く同感です。法律相談まで担当させるのであれば、少なくとも弁護士経験5年程度を要件とすべきではと思っております。 しかし、これでは新人弁護士の採用が出来ず、悩ましいところです。 ************************************************ 富谷町が弁護士資格取得者採用へ 法律相談や条例審査担当 河北新報2013年01月04日金曜日配信 -------------------------------------------------------------------------------- 宮城県富谷町が、弁護士の資格を持つ司法修習修了者を新年度に職員として採用する方針を固め、近く募集を始める。採用後は町民からの相談や条例の審査などの業務に当たってもらう。県によると、弁護士の資格取得者の採用が実現すれば、県内の基礎自治体では初めてとなる。 町は、4月に弁護士の有資格者1人の採用を検討。3年間の任期付き職員として募集する。年間報酬は約480万円で、15年程度勤務する大卒職員に相当する。 職務は法律に関わる町民の生活相談業務、行政訴訟への対応、条例作成のチェックなど。弁護士活動に必要な仙台弁護士会への登録をしないのが条件で、町の職務に専念してもらう。 町は、広報誌や日弁連の就職あっせんホームページなどを通じて募集を呼び掛ける。 日弁連によると昨年末現在、弁護士の有資格者で地方公共団体に採用されているのは38人。神奈川県や東京都町田市などで、法務部門の業務などを担当している。県も震災対応のため、今月1日付で法務専門の任期付き職員を採用した。司法制度改革で司法試験合格者が増加し、行政職に就く人は増えているという。 関連条例案を審議した町議会(定数20)の12月定例会では「相談業務は法律知識ではなく、行政や人生の経験に通じることが大事」「資格のあるなしだけで採用する意義があるのか」などの疑問が出た。条例案は11対8の賛成多数で可決した。 町総務部は「高度な専門知識のある職員を置き、住民サービスの向上を図りたい」としている。 以上:2,137文字
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