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【韓国】法曹界の新しい動き―ロースクール出身弁護士の誕生

平成24年10月29日(月):初稿
○韓国の法曹界は、日本より遙かにIT化が進んでおり、例えば裁判での訴状・準備書面等の書面の遣り取りはネット経由で可能になり、各事件の記録もネットにアップされて、パスワードを入力すればアクセスできるようになっていると、正に夢のような話を、確か、平成15年11月の鹿児島での業革シンポの時に聞いたような記憶があります。

○これに対し日本では,未だに訴訟の事実認定で最も重要な原告・被告本人質問調書や証人尋問調書すら紙に印刷されたものしか利用できないなど、一般ビジネス世界では信じられない程遅れています。最近もある事件で、証人尋問調書を作成したテキストファイルが欲しいとお願いしたところ断られたことがあります。そのため長い原告・被告本人質問調書や証人尋問調書を紙でコピーし、例えば最終準備書面で一部を援用する場合など,いちいちワープロで手打ちしなければなりません。

○私は、ワープロ専用機がまだ残っていた20年近く前から、裁判所に対し尋問調書記録ファイルを磁気データとしてコピーさせて欲しいとお願いしているのですが、未だに実現していません。ネット経由で裁判書面の遣り取りが出来、裁判記録もネットからダウンロードが出来るとの前記韓国司法事情とは雲泥の差です。

○花水木法律事務所小林正啓弁護士の平成24年10月29日付「韓国の司法制度改革について」に国立国会図書館海外立法情報課の藤原夏人氏による「【韓国】法曹界の新しい動き―ロースクール出身弁護士の誕生」との記事を知りました。特に「法曹一元化」の実施、弁護士仲介制度導入等日本の法曹界の今後を検討するために貴重な情報が詰められており、そのPDFファイルを引用させて頂きます。

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【韓国】法曹界の新しい動き―ロースクール出身弁護士の誕生
海外立法情報課・藤原 夏人

*韓国の法曹界が転換期を迎えている。2012年3月、初のロースクール出身弁護士が誕生した。FTA発効に伴う外国法律事務所の国内進出も始まっており、今後の競争激化が予想される。

1 ロースクール出身弁護士の誕生
2007年7月、「法学専門大学院の設置及び運営に関する法律」が制定され、韓国に法学専門大学院(ロースクール)制度が導入された。ロースクール設置校には法学部を設置することができないとされ、入学定員は政府により全体で2,000人と定められた。2009年3月、認可を受けた25のロースクールが開校した。
法曹資格を得るため、従来は大学法学部→司法試験→司法研修院(2年)というルートを経たが、新制度では法学適正試験(LEET)→ロースクール(修士課程3年)→弁護士試験(新司法試験に相当し、法曹倫理試験を含む)→実務研修(6か月)というルートを経る。弁護士試験について規定した「弁護士試験法」は2009年5月に制定され、大学院修了後5年以内に5回(修了予定時に受験した回数を含む)まで受験できると定められた。なお、2017年までは従来の司法試験も並行して実施される。

2012年1月、ロースクールに入学した第1期生が第1回弁護士試験を受験し、入学定員の70%を超える1,451人が合格した。2012年は司法研修院の修了者約1,000人に弁護士試験合格者が上乗せされ、約2,500人が新たに法曹資格を得た。有資格者数がこのまま増え続けた場合、2010年に約1万人だった開業弁護士数は、2020年代前半には約3万人に達し、一段と競争が激化することが見込まれている。最近は就職先としての法曹界の人気は低下しており、法学適正試験の志願者は、第1回(2008年)の10,110人から、第5回(2012年)の7,628人にまで減少し、史上最低となった。

2 「法曹一元化」の実施
2011年7月18日の「法院組織法」改正により、韓国における「法曹一元化」(裁判官を、弁護士、検察官等、他の法曹経験者の中から任用する制度)が2013年から実施される。従来、裁判官の任用は、司法研修院から裁判官に任用されるルートが一般的であったが、今後、裁判官に任用されるためには、弁護士、検察官等の一定の法曹経験が必要となる。「法曹一元化」は段階的に実施され、2013年から2017年までは3年以上、2018年から2019年までは5年以上、2020年から2021年までは7年以上、2022年以降は10年以上の法曹経験のある者の中から裁判官が任用される。

また、同法改正により、裁判に関する調査研究、各種報告書の作成等を行う「裁判研究員」(Law Clerk)制度も導入された。任用期間は最長3年(2017年までは最長2年)である。裁判研究員の経歴も、裁判官任用に必要な法曹経験として認められる。

3 FTA発効に伴う外国法律事務所の進出
EU韓FTA及び米韓FTAにおいて合意された国内法律市場の開放を実施するため、2009年3月、「外国法諮問士法」が新しく制定された。同法に基づく外国法諮問士(外国法事務弁護士に相当)制度の新設により、外国の法律事務所が国内に事務所を設立し、外国法に関する法律事務に従事することができるようになった。EU韓FTA暫定発効(2011年7月)及び米韓FTA発効(2012年3月)に伴い、今後、法律市場は段階的に開放され、EU韓では2016年7月、米韓では2017年3月以降は、国内外法律事務所が合同で事務所を設立し、国内弁護士を雇用して訴訟業務も担当できるようになる。これに対し国内法律事務所は、規模の拡大、海外進出等で対抗する構えである。

4 「前官礼遇」の規制
韓国の法曹界には「前官礼遇」(裁判官又は検察官を退職後に開業した弁護士(以下「前官弁護士」)に有利な判決を下すなど、前官弁護士を優遇すること)と呼ばれる悪弊があり、国民の間にも、弁護士選任時に前官弁護士を選好する傾向があるとされる。2011年5月11日の「弁護士法」改正により、原則として裁判官、検察官等の公務員職を退職した弁護士は、退職直前1年間に勤務した国家機関が処理する事件を、退職後1年間受任することができないとされた。しかし、法改正後も、受任をせずに影響力を行使する方法が抜け道として利用されていることが指摘されている。

5 弁護士仲介制度導入の動き
弁護士急増により、業務領域が複雑化、多様化していることを背景に、法務部は2012年7月12日、弁護士の専門性の向上、弁護士情報へのアクセス性向上、弁護士仲介制度の導入等を盛り込んだ「弁護士法全部改正法律案」を立法予告した。立法予告案では、大韓弁護士協会が2010年1月から運用している「弁護士専門分野登録制度」に法的根拠を与え、弁護士の専門性の認定要件等を具体化するとともに、同制度を前提とした弁護士仲介制度を規定している。現行の弁護士法では、金品等を受けることを前提とした弁護士の斡旋等は禁止されているが、これを合法化し、従来アクセスが困難であった弁護士情報を国民に幅広く提供することで、違法ブローカーの介在を防ぐことが期待されている。立法予告案では、大韓及び地方弁護士協会、非営利団体等に限り斡旋業務を認めている。早ければ2012年秋に法案が国会に提出される見通しである。

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