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弁護士界の憂鬱-”ポスト過払いバブル”はなんでもあり雑感4

平成24年 3月21日(水):初稿
○「弁護士界の憂鬱-”ポスト過払いバブル”はなんでもあり雑感3」を続けます。
過払い事件は、実質的にはサラ金のボロ儲け利益の上前をはねる事件であり、何よりも、数年前から相次いだサラ金利用者側に有利な最高裁判決のお陰で、この数年前から10件の内8~9件は、殆ど事務員任せで間に合い、弁護士は殆ど関与せずとも、多額の報酬が取れる、極めて効率的な、弁護士にとっておいしい事件となっていました。

○そこで利益に目敏い弁護士は、事務員を大量に雇って、債務整理・過払い金事件専門として、お客様の顔を覚えられないほどの大量に事件を請け負い、莫大な利益を上げる事務所が東京を中心に全国各地に現れました。特に三大宣伝広告事務所の一つは、TV放映等宣伝広告費用を年間数億円も投資し、年間売上百億円以上と豪語するほどになりました。当事務所もこれらの事務所に比べたら微々たるものですが、多重債務・過払い金事件では、結構恩恵を受けました。

○私は、これらのサラ金相手の多重債務・過払金返還請求事件に群がる弁護士の姿勢を決してけしからんと非難するつもりはありません。私自身群がった1人であり、効率的利益を上げるべきビジネスとしては当然の姿勢です。多重債務・過払金返還請求事件は、TV等での派手な宣伝のお陰で、事件として掘り起こされて、サラ金に多額の奉仕をしたサラ金利用者の被害回復が大いに図られた面があり、TVでの派手な宣伝を決して非難するつもりもありません。

○言いたいことは、弁護士業務だって詰まるところはビジネスだと言うことです。それ故、交通事故事件でも、比較的効率的にお金を稼げる後遺障害11或いは12級以上の事案しか取り扱わないと言う姿勢も、ビジネスとしては当然です。仮に弁護士は、「人権擁護・弱者救済・反権力・在野」に徹してお金儲けだけに走るべきではなく、それ故、弁護士は従前のように参入規制を強化してその保護を図るべきだというのであれば、「人権擁護・弱者救済・反権力・在野」の姿勢を全弁護士に徹底すべきでしょう。

○交通事故事件に関しては後遺障害認定がされない比較的軽微な事件は受任しないとの姿勢は許されず、たとえ小さな事件で、手間暇が関わる割にお金にならない事件も受任すべきだとしなければ筋が通りません。私の経験では、交通事故事件で、大変需要が多く、且つ、手間暇がかかるのは後遺障害非該当或いはせいぜい14級を12級に上げるための事件です。後遺障害等級が11級以上認定されてこれを前提に損害額の上乗せだけを狙う事件と比較して、後遺障害等級のアップを狙う事件は格段に手間暇がかかります。保険会社顧問医に対抗するため高価な医学文献等を熟読するなど結構な時間をかけなければならず、ホントに好きでなければ出来ません。

○ですから、弁護士は、「人権擁護・弱者救済・反権力・在野」でなければならず、全ての弁護士はその姿勢を持つべきなんて押し付けは到底不可能であり、各自の見識に任せるしかありません。私は効率的にお金を稼げる事件しか扱いませんとの姿勢の弁護士が居たとしても、それはその弁護士の自由と思っています。実際、弁護士特権時代の方がこのような姿勢の弁護士が多く、国民の中には、弁護士は費用が高く、またお金になる事件でないと依頼を受けてくれないと思っている方々も多く居ました。

○それが弁護士の数が増え特権が廃止され、なかなか弁護士の資格だけでは食えなくなり、弁護士間の競争が激しくなることで弁護士費用価格破壊が進み、弁護士の宣伝広告も増え、弁護士情報も得やすくなったことで、多くの国民が従前の特権時代に比べて遙かに弁護士を利用しやすくなっています。その分、弁護士側では、従前のように比較的楽して稼ぐことが出来なくなり厳しい時代に直面しています。これからは弁護士も淘汰され或いは弁護士事務所の倒産も珍しくない時代になるでしょう。こんな時代に、お金になる事件しかやらないとの姿勢を維持できるとすればそれは優れた営業能力があるからであり、私もそうなれればなりたいところ、乏しい営業能力故夢の又夢です(^^;)。
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