平成21年 4月18日(土):初稿 |
○「法曹養成と法曹人口を考える国会議員の会」が、平成21年4月17日、後記内容の緊急提言をまとめ、法改正を目指し自民党司法制度調査会などへ申し入れをすることを決めたと言う事です。 私は、これまでの旧試験が大学の教養課程さえ修了すれば、どこの学部であろうと、何回受験しようと全く制限のない開かれた試験であったことを評価していましたので、予備試験の簡素化・簡易化には大賛成です。 ○しかし現実には、司法試験受験資格は原則法科大学院卒業としても,予備試験の簡素化・簡易化されたら多くの受験生は、司法試験受験資格を予備試験合格によって取得する方向に向かい、法科大学院入学者は激減して、その経営は益々厳しい状況になるでしょう。 ************************************** <提言> 1.予備試験の簡素化・簡易化 予備試験は、司法試験受験者の多様性を確保する重要な道となり得る。法科大学院修了者との公平を確保するため多数の試験項目を課すこととなっているが、法科大学院修了者の合格率が約三割となっている現状や、法科大学院修了者最下層の水準の者がこれだけ多数の科目を一度の試験で問われることに耐えうるのか疑問であることからすると、予備試験は受験者に過剰な負担を課し、結果として法科大学院修了者の優位を確保するための仕組みになる可能性がある。そこで、予備試験は科目数等を簡素化・簡易化し、受験者の負担を軽減するべきで、それに必要な法律改正を今年中に行うものとする。 2.司法試験合格者数「目安」の撤廃 司法試験委員会は、「法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備の状況等を見定めながら、平成22年ころには司法試験合格者数を年間3000人程度とすることを目指す」とされた平成14年3月の閣議決定の「数」のみを前提にして、法科大学院修了者の資質を考慮しないままに定められた「目安」を今年から撤廃し、改めて司法試験が法曹となるべき資質の有無を判定する資格試験であることを宣明すべきである。もちろん結果としてこれまでの合格者数を下回ることもありうる。 3.養成過程の少数化・厳格化 法科大学院は直ちに厳格な成績評価と修了認定に着手し、平成22年度に修了生の資質を抜本的に向上させる。その結果、修了生の数が現状の半分程度となるのはやむを得ない。 また合格率等から考えて、74校の法科大学院が約5800人の定員すべてに対し十分な教育を施しているとは言い難い。よって、文部科学省は、直ちに法科大学院における教育の質の向上と学校数および定員の適正化(大幅な削減等)に着手しなくてはならない。 さらに、司法研修所は、その過程および二回試験で厳格にその適性や能力を判定すべきである。あわせて現状では法科大学院の教育内容に不足があることに鑑み、司法研修所における前期修習は復活すべきである。 4.司法試験の受験資格制限について 法科大学院で学ぶ経済的・時間的余裕がなくても、適性と能力があれば誰でも法曹になれるべきであり、本来、受験資格制限は撤廃されるべきものである。よって、 ①法科大学院修了者の新司法試験合格率よりも予備試験合格者のそれの方が高くなる、 ②法科大学院修了者の二回試験合格率よりも予備試験合格者のそれの方が高くなる、 ことが是正できない場合は、受験資格制限の撤廃に向かうべきである。 5.法曹人口のあり方について 法曹人口のあり方を考える際、法曹の需要が飽和しはじめているという現実を重く受け止めなければならない。今後は、不断に法曹の需要を検証し、国民の信頼に足る法曹の質を確保しながら、過剰な法曹人口を作り出さないように努めなければならない。 以上:1,510文字
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