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日弁連公表新司法試験合格者数抑制論についての雑感

平成21年 3月22日(日):初稿
○日弁連内部では色々激論があったようですが、以下の産経新聞報道によると平成21年3月19日、日弁連は政府に対し、司法試験合格者数を平成22年から合格者3000人とする当初の予定を変えて、平成21年度以降も数年間は現状の2100~2200人を維持するよう求めた提言を公表したとのことです。

○私は昭和55年に弁護士になりましたが、当時の弁護士は
①独占-法律事務独占、
②寡占-少人数での独占、
③競争排除-統一料金と広告禁止

の3大特権に守られて、ビジネスとしてみた場合、こんなに恵まれた商売はないと確信し、いつかしっぺ返しを食らうだろうなと思い続けてきました。

○私が弁護士稼業の現役時代は、この3大特権で守られ続けたらホントに楽だなと思っていたら、案の定、10数年前からこの弁護士3大特権がやり玉に挙げられ、その見直しが議論され、司法制度改革審議会が出来ておえらいさん達が議論して平成13年6月12日付最終意見書が提出されました。その中の法曹人口大幅拡大策は、平成16年までに現行司法試験合格者数1500人、平成22年には新司法試験合格者数3000人、平成30年には法曹人口5万人とすると言うものでした。

○弁護士業務に関しては、高すぎると言われ続けた報酬の透明化・合理化、弁護士情報の公開即ち広告自由化促進が図られ実際平成13年に広告自由化が、平成16年には報酬基準撤廃が決定され、上記③競争排除-統一料金と広告禁止との重大特権が失われました。私は日弁連の検討部会に配属されいずれも内部から決定に至る経緯を見てきましたが、いったん身につけた特権意識はなかなか捨てきれないと実感しました。

○上記特権①独占-法律事務独占は司法書士等隣接業種への弁護士業務一部解禁が相当程度進みその剥奪が相当実現済みであり、法曹人口大幅拡大は上記②寡占-少人数での独占を奪うものですが、これも既に相当程度寡占体制が崩されつつあります。お陰でこれまでは見向きもされなかった地方での弁護士開業も増えつつあるのは利用者にとっては好ましいことです。

○平成22年からの司法試験合格者3000人の予定見直しは問題です。いったん決めた合格者数を質の低下を理由に抑制するのは、合格者3000人を前提として高いお金を出して法科大学院に入学した学生にとって、ハシゴを外されたに等しいものだからです。

○合格者数抑制の理由の一つに合格しても仕事がない、就職が出来ず合格者が気の毒だと言う論調もあります。しかし、予定数3000人を2100~2200人に抑制することは、800~900人は予定通り合格出来なくなることです。この800~900人は、予定通り合格者3000人であれば合格して法曹資格を得ることが出来、その後の努力精進次第では弁護士として食える可能性を与えられます。ところが合格者抑制となれば合格出来ず法曹資格を与えられず弁護士として食べていく可能性は全くありません。

○合格後仕事がない就職先がないと言っても弁護士として食べていく可能性がない不合格者より合格者になった方が良いに決まっています。仕事がない、就職先がないから合格者数を抑制すべきとの議論は法科大学院学生にとってはとんでもない裏切りの議論だろうなと思っており、実際、法科大学院生数名にに聞いてみたら全く同感とのことでした。
合格者数抑制論は「弁護士は食えて当然との特権意識」の名残りと感じています。

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急激な法曹人口拡大でひずみ 日弁連指摘
3月19日19時59分配信 産経新聞

 日本弁護士連合会(日弁連)は19日、平成22年ごろまでに司法試験の年間合格者を3000人程度にする政府計画に対し、21年度以降の数年間は現状の2100~2200人を維持するよう求めた提言を公表した。

 日弁連は昨年7月、20年度の司法試験合格者決定に向け、数値目標にとらわれないよう求める「緊急提言」を行ったが、合格者数の水準は明示していなかった。

 司法試験合格者数は、11年の1000人から、20年には2209人と大幅に増加。日弁連はこれに対し、裁判官や検察官の数は変わらず、弁護士だけが大幅に増加していると指摘した。加えて、法科大学院の教育や修了者の質の問題など、制度の基盤が整っていないのに法曹人口が急速に増えると現場のひずみが拡大する、としている。
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