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ファクタリングと弁護士法73条

平成17年10月 3日(月):初稿
○本日は私の備忘録で、恐縮ながら少々難しい話しです。
平成17年10月3日は日弁連業務改革委員会72条問題PTと法的サービス推進本部法務PT合同の勉強会参加のため東京出張予定で私がファクタリングと弁護士法73条を担当する予定でしたが、急な倒産事件が入り参加できなくなりました。

○ファクタリングとは、factoringの訳で、一般に売上債権(売掛金、受取手形)の割引や買取サービスのことを言います。当事者としてファクター(factor、ファクタリング業務を提供する者、債権買取人)、クライアント(client、ファクターと契約を結びファクタリングの用益を利用する企業、債権売り主)、カスタマー(customer、クライアントから商品ないしサービスの提供を受けたクライアントの取引先、債務者)が登場します。

○ファクタリングとは、先ずクライアントとファクターの間でファクタリング契約が結ばれると、
①ファクターはクライアントの取引先であるカスタマーの信用調査を行い、
②カスタマーの注文通り出荷してもOKとの判断がなされると、ファクターはクライアントからそのカスタマーに対する債権を償還請求権なしに(カスタマーの無資力危険をファクターが引き受け)買い取り、
③ファクターはクライアントに債権買取代金を前払いして金融を供与し、
④ファクターはカスタマーへの支払請求を行った債権を取り立てる
と言うものです。

○ファクタリングの特徴は、先ず①ファクターが買い取った債権についてカスタマーの信用危険を引き受けることで、カスタマーが倒産し回収不能になっても償還請求権がないことです。但し②クライアントはファクターに対し、譲渡した債権が有効に成立し、債務不履行、不完全履行その他クレームがないこと、カスタマーからの相殺の主張その他の抗弁がないことについてファクターに対し担保責任を負います。

○譲渡された債権の管理・回収はファクターの役目で、クライアントから提出されるインボイス(送り状)に基づきカスタマーに対し取立請求を行い、カスタマーから支払がない場合最終的には裁判上の取立を行います。

○以上はイギリスで生まれてアメリカで発展したファクタリングの最もスタンダードなものですが、今は単に金融を行うだけでなく、売掛金の支払保証や回収代行、更に記帳事務の代行を行ったりする新しい形の金融サービスを言いますが、ファクタリングの基本は売掛金債権を早期に現金化してキャッシュフロー率を高めて積極・安定経営に寄与するものとのことです(ファクタリングの導入・活用の手引き売掛債権資金化の新型資金調達法)。

○このファクタリング業務が日本の弁護士法73条「何人も、他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他の手段によつて、その権利の実行をすることを業とすることができない。」との規定に違反しないかどうかが問題になります。

H17年8月27日更新情報に記載したとおり73条について最高裁は、①弁護士法73条の趣旨であるみだりに争いを誘発・助長する恐れが無く、②社会的経済的に正当な業務の範囲内にあると認められる場合であれば同73条には違反しないとの解釈指針を出しており、ファクタリングについてもこの解釈指針によって検討すべきでしょう。

○だとすれば本条は三百代言的ないし事件屋的立場での事件の介入を禁じ、また濫訴防止を図るものであるから、社会的・経済的に必要且つ妥当と認められる業務の一環としての権利の譲受及びその実行まで禁じたものではないとの学説(賀集=伊藤・金融法務事情827号11頁)に従い、ファクタリングが既存の金融機関や大企業が出資して設立されたファクターであり、業務内容や権利実行方法に懸念がない場合は、本条に違反しないと解釈すべきでしょう。

○但し、ファクタリングの名の下に債権取立を主たる目的として譲り受け、暴利をむさぼることを専門とする者は断固これを排斥すべきは当然です。従って現時点で適法なファクターとして認められるのは、既存の金融機関や大企業が出資して設立したものなど、相当限定されると思われます(神戸学院大学教授田邊光政著ファクタリングの基礎知識)。
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