平成25年11月21日(木):初稿 |
○「事業者債務整理通知書等1」、「事業債務整理任意整理の利点-迅速柔軟性」等記載の通り、私は、事業債務整理事件が大好きで、これまた大好きなデータベースソフト桐で、事業債務整理事件を処理するためのシステム化を実現しております。債務整理には、再建型と清算型がありますが、私が行うのは清算の方です。清算は、相当件数取り扱っているのですが、再建は数えるほどしかなく、残念ながら、殆どが途中で挫折して、清算に切り替えています。債務超過に陥った事業債務者を、潰すのは簡単ですが、生かすのは難しいと実感しています。 ○この難しい裁判所が関与しない任意整理による再建型事業債務整理について経済団体連合会や全国銀行協会などを委員とする私的整理に関するガイドライン研究会が公表した「私的整理ガイドライン」との表題で、一定のスキームが出来ていたのは、知っていましたが、その内容は全く不勉強でした。と言うのは、債務総額数十億から数千億円の上場企業等が利用するもので、私の取り扱うせいぜい数億円程度の事業整理には適さないと思い込んでいたからです。 ○実際、この「私的整理ガイドライン」による任意整理による事業再建は、平成13年に公表されて以来、平成25年まで20数件しかなく、有利子負債額は大は2000~3000億円、小でも数十億円で、平均で数百億円であり、田舎のしがない弁護士が受任するような規模の事業者は全くありません。ですから私には縁のない世界の出来事と思っておりました。 ○ところが、最近は規模のそれほど大きくない地方の案件で利用者が増加する傾向にあるとのことで、ある地方の10数億円規模の事業者倒産整理事件で、この「私的整理ガイドライン」による任意整理による事業再建を試みる事案が生じて、専門家アドバイサーになって欲しいとの要請がありました。アドバイス内容については、担当の公認会計士が財務状況を詳しく精査・分析しており、その結果を詳しく解説するとのことです。 ○そこで縁のない世界の話しと思っていた「私的整理ガイドライン」について、贈呈された「唯一無二、斯界第一人者による空前絶後の書、待望の刊行!」と帯に記載してある金融財政事情研究会刊行「私的整理ガイドラインの実務」を斜め読みして、勉強中ですが、600数十頁におよぶ大著で、必要部分を探し出すだけで大変ですが、先ず、その基礎の基礎の備忘録です。 ******************************************** 私的整理ガイドライン概要 1.基本スキーム ・対象となる私的整理は、民事再生法等法的整理手続では、事業価値が著しく毀損され再建に支障が生ずる虞があり、私的整理によった方が債権者・債務者双方に経済的合理性があるもの-債務超過で経営困難となっていても事業価値があり、重要営業部門で営業利益を計上するなど債権者の支援により再建の可能性があること ・多数の金融機関等が主要債権者として関わり、債務減免・支払猶予の協力が求められるが、商取引については原則約定通りの弁済となる ・公正衡平を旨として透明性が尊重される手続で行う 2.具体的手続 ・債務者事業者が主要債権者に対し、私的整理ガイドラインによる手続の申出を行う ・主要債権者が、債務者提出財務関係資料・再建計画書を検討し、手続開始を相当と認めたときは、主要債権者と債務者は連名で、一定期間弁済・相殺等債務消滅に関する行為、物的担保供与等を停止する旨の一時停止手続を対象債権者全員に通知 ・一時停止通知発送後2週間以内に債務者と主要債権者による第1回債権者会議を開催し、次の事項を決議 ①一時停止の追認と一時停止期間の決定 ②専門家アドバイサーの選任(必要的ではないが、実際は例外なく選任されている) ③一時停止期間中の追加融資 ④第2回債権者会議開催日時 ・第1回債権者会議で選任された専門家アドバイサーによって資産・負債や損益状況、再建計画の正確性、相当性、実行可能性などが調査・検証され、第2回債権者会議前に対象債権者全員にその調査報告書を配布、 ・第2回債権者会議で対象債権者全員の同意表明があれば、同意書提出の期限が定められる 第2回債権者会議では質疑応答や意見交換がなされることになっているが、実際にはこの日に同意・不同意を表明出来るよう社内稟議済みで出席するため質疑・応答がなされることは少ない ・対象債権者全員が再建計画案に同意する旨の書面を提出したときに再建計画は成立し、債務者は再建計画を実行する義務を負い、対象債権者の権利は成立した再建計画の定めに従って変更される 3.再建計画の内容 ・3年以内の実質債務超過解消 ・3年以内の経常黒字化 ・株主責任-対象債権者の債権放棄を受けるときは、支配株主の権利は消滅させ、減増資により既存株主の割合的地位を減少又は消滅させる ・経営者責任-対象債権者の債権放棄を受けるときは、これまでの経営者は退任が原則 ・平等と衡平-権利関係の調整は債権者間で平等であることを旨とし、債権者間の負担割合は衡平性の観点から個別に検討 以上:2,068文字
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