平成18年 5月30日(火):初稿 |
○当事務所では従前から自己破産宣告申立事件が多く、公務員の破産申立も相当件数扱っています。公務員の破産申立の場合、殆どの方が職員共済組合からの借入金債務を数十万円から多い場合1000万円以上もありました。 ○この公務員の共済組合からの借入金債務返済は給料から天引きされて行われており、弁護士が破産宣告申立を依頼を受けた場合、弁護士は全債権者に支払停止の通知をしますが、従前は共済組合は給料天引きを停止しない場合がありました。 ○特に多額の退職金債権がある場合、破産宣告申立をした場合、退職金支払を停止するよう通知しますが、例えば1000万円の退職金の内250万円が破産財団として破産管財人に対して支払った残りの750万円について、700万円の職員共済組合債務があった場合、給与支払機関たる事務組合は共済貸付金は優先権があると誤解しその700万円を従前通り天引きして破産者本人には50万円しか支払わない場合もあります。 ○私の場合はこのような事態にならないよう給与支払事務組合に対し、共済貸付金は優先権が無い旨強調し、決して共済貸付金返済に充当しないで先の例では750万円は破産者に帰属する自由財産なので全額を破産者に支払うよう強く申し入れておき天引きされることはありませんでした。 ○ところがこのような厳重な申し入れをしていないと実務では破産決定後の自由財産である破産財団組み入れ後の退職金残金について共済組合貸付金に充当する例があるようです。最高裁平成18年1月23日判決では、「破産者が破産手続中自由財産の中から破産債権者に任意の弁済をすることは出来るが、自由財産は破産者の経済的更生と生活保障のためのものであるから、破産者がした弁済が任意弁済に当たるかどうかは『厳格に解すべき』であり少しでも強制的要素が伴う場合は任意弁済には当たらない。本件方式での弁済が任意弁済といえるためには、組合員が弁済を強制されないことを認識し、自由な判断により行ったことが必要であるところ本件では該当しない。」として給与支払事務組合による共済組合貸付金への退職金残金返済充当を無効としました。 ○先の退職金1000万円の内250万円だけを破産財団に組み入れると残り750万円は全て破産者の自由になるのは余りに破産者に有利過ぎるのではないかと思う方も居るかも知れませんが、退職金は毎月の給料を積み立てたものであり給料は4分の1しか差押が出来ませんから差押が出来ない部分が積み重なっただけと考えるしかありません。 ○但し破産宣告決定前に退職金を受領して手元に現金で所持していると自由財産になるのは99万円だけ残り801万円は全て破産財団になり管財人に渡さなければなりませんので注意が必要です。 以上:1,123文字
|