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令和 3年 4月17日(土):初稿 |
○横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和3年4月16日発行第291号「弁護士のちはやふる」をお届けします。 ○小倉百人一首の中にある在原業平作「ちはやふる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」と言う和歌は、大山先生が言うように「山を彩る紅葉が竜田川の川面に映り、唐紅のくくり染めのようである。このようなことは神代にも無かっただろう」といった意味とのことです。 ○弁護士は法律のことは何でも知っていると勘違いして、多種多様なことを質問をするお客様もいます。時に全く考えたこともない質問を受けることもあり、そのようなとき法律専門家のくせに全然知らないと言うわけにも行かず、おそらくこうでしょうと推測の説明をすることもあります。 ○事務所内相談でも自治体等の出張相談でも、常にネットと繋がるようにしていますので、判らない質問を受けた時は、お客様の前で直ぐにネット検索をします。大変便利な時代になりましたが、最近は、お客様もネット検索で予習してくる方も多く、その上でそれでも判らない難しい質問をしてきます。 ○よく知らないのに知ったかぶりでいい加減なことを言うと見抜かれる可能性も高くなっており、知らないことは知らないとハッキリ言って、後日調べてシッカリ回答致しますと、言える弁護士になろうと思っています(^^;)。 ******************************************* 横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作 弁護士のちはやふる アメリカに住んでいたとき、焼鳥屋さんによく行ってました。カウンターの隣に、米国人の二人連れが座ったんです。焼鳥の意味を聞かれた人が、得意げに説明し始めた。「YAKIというのはチキンのこと。TORIというのはスティックのこと。ヤキトリとは、sticked chickenのことだよ!」 知ったかぶりして適当に話すのは問題だなと思う一方、その説明を私も楽しく聞けたのです。 昔読んだ狂歌に、「世の中は 左様でござる ごもっとも 何とござるか しかと存ぜぬ」なんてありました。こんな風に回答しない人よりは、知ったかぶりでも説明する人はサービス精神旺盛なんでしょうね。 こういう知ったかぶりの話は、落語にもよくありますね。「ちはやふる」なんて有名です。百人一首にも入っている歌の意味を説明する話です。本当の意味は、「竜田川の流れに舞う紅葉がこんなにキレイなのは、神代の昔にもなかったな」というだけのものです。「ちはやふる 神代も聞かず 竜田川」というのが上の句です。ところが、歌の意味を聞かれたご隠居が、とんでもない話を作り上げて説明します。「竜田川という名前の相撲取りが、ちはや大夫という花魁に振られた。ちはやの妹の神代にとりなしを頼んだが聞いてくれない」というのが、上の句の意味なんだそうです。 なんか、本当の意味より面白く、分かり易いだけに可笑しいんですね。弁護士の仕事でも、こんな感じの知ったかぶり、よくあります。法律相談に来る人の中には、「弁護士に負けていられるか」と、色々と勉強してくる人も居ます。弁護士も教えて貰うこともまれにありますが、多くの場合ちょっとズレてます。ネットなど見ていても、素人の人が法律についてコメントしていることがよくあります。こういう回答は、なかなかもっともらしいんですが、間違ったものが沢山あります。 ネットの世界には、落語のご隠居みたいな人が結構いるみたいです。うっかりと信じてしまう人もいるのではと少し心配になります。とまあ、人の悪口みたいなこと言っていますけど、弁護士だって知ったかぶりで話すことはよくあります。依頼者と話していて、知らないテクニカルタームが出てきても、何となく分かった振りをして話を合わせちゃうのです。す、済みません。 もっとも、こういうときには後から頑張って調べます。落語のちはやふるに戻ります。ご隠居による、歌の下の句、「からくれないに 水くぐるとは」の解説です。相撲を引退した竜田川が豆腐屋になったところに、落ちぶれた、ちはや太夫がきて物乞いする。 しかし竜田川は、おからさえくれなかった。最後に、ちはや大夫は井戸に落ちて水くぐることになったということです。落語の落ちは、それなら歌の最後にある「とは」というのはどういう意味か質問されたご隠居が、苦し紛れに、「『とは』はちはや大夫の本名だ」と答えて終わります。知ったかぶりでも、こんなに凄い話になると、たとえ嘘でも楽しませてもらったという満足感があります。。。 考えてみますと、確かに知ったかぶりで、間違った知識を人に話すのは褒められたことではないでしょう。 しかし、落語のご隠居も、せっかく聞いてきた人に精一杯教えて楽しんでもらおうという気持ちがあったはずです。 一方、弁護士が「ちはやふる」の説明をしたなら、正しいけどつまらない。歌の正確な説明をしたうえに、脚注なんか付けちゃって、ちはやふる」は「神代」の枕詞でありみたいに、退屈な学術的解説なんかしてしまいそうで心配です。弁護士が知ったかぶりで間違ったことを教えるなんてことは論外です。 しかし、知ったかぶりの解説に負けないように、サービス精神をもって、正しいけど面白い説明をできればと思うのです。 ******************************************* ◇ 弁護士より一言 娘が友達に、魔笛の「夜の女王のアリア」を面白おかしく歌ってあげたら大好評だったそうです。何の歌か聞かれて、「夜の女王アリア。女王アリアの歌だよ!」と説明したんですね。「聖母マリア」のノリです。友達は感心して、納得してくれたそうです。「ちはやふる」の「とは」と同じじゃないかと、我が娘ながら呆れました。もっとも、私も子供のころ、「G線上のアリア」は、人の名前だと思っていたのです。皆から「夜の女王アリアを歌って!」とリクエストされる娘は「今更、アリアは名前じゃないなんて言えないね!」と、そのまま押し通すことにしたそうです。。。 以上:2,502文字
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