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2017年03月01日発行第192号”エディプスの事実調査”

平成29年 3月 1日(水):初稿
横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの平成29年3月1日発行第192号「エディプスの事実調査」をお届けします。

○「エディプスコンプレクス」なんて言葉は、父を殺して母と結婚した男の話から出てきたと言うこと位は何となく判っていましたが、このギリシャ神話をシッカリと読んだ記憶はありませんでした。今回のニュースレターを機にウィキペディアで調べると「オイディプース」として掲載されています。初めてこのギリシャ神話のあらすじを読んでみましたが、謎かけの答えは、「初めは立派な人間(=二つ足)であったが、母と交わるという獣の行いを犯し(=四つ足)、最後は盲目となって杖をついて(=三つ足)国を出て行く、と言うオイディプースの数奇な運命を表すものである(この解釈では朝・昼・夜という時系列は、青年期・壮年期・老年期となる)。」との解釈が印象に残りました。

○事実をどこまで追求するかは、弁護士業務にとって大変難しい問題です。明らかに事実を曲げて相手方から不当な利益を得ようとしていると思える場合は、受任には至りません。例えば交通事故被害での詐病です。しかし医師でない弁護士にとっては、詐病かどうかの判断は大変難しいものです。

○訴訟になった場合、最終的には裁判官が納得して、当方の主張を認めて貰うべく主張・立証活動をするしかありません。事実に基づく主張でないと裁判官を納得させることは先ずできません。裁判官に納得して貰うための事実追求が必要となりますが、お客様にも納得して頂けるような事実追求方法を探らなければなりません。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

エディプスの事実調査


エディプスというのは、今から2500年も前に書かれた、ギリシャ悲劇の主人公です。ギリシャの王様の子供です。フロイトが、この悲劇をもとに「エディプスコンプレクス」なんて言葉を作ったことで、一躍有名になった人です。エディプスが生まれたときに、当時最高の預言者が、預言をしました。この子はいずれ、自分の父親を殺して、母親と結婚すると。

王様はこれを聞いて心配になり、我が子を殺そうとします、かわいそうに思った人が、エディプスを逃がします。よその国に行き、そこの王子として育てられたのです。青年になったエディプスが旅に出たところ、非常に傲慢な老人と争いになります。怒ったエディプスは、その老人を殺してしまいます。(いうまでもなく、この老人がエディプスの父親です。)

旅を続けるエディプスは、ある国に着きます。そこでは、旅に出ていた王様がかえって来ない間に、スフィンクスという化け物が、自分の出した「なぞなぞ」に答えられない人たちを殺していました。「朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足の動物は何か?」という、現代でも有名な、なぞなぞです。

答えは、人間ですね。赤ちゃんのときは、ハイハイするので4本足、大きくなると普通に歩いて二本足、老人になると杖をつくので3本足というわけです。エディプスになぞなぞを解かれたスフィンクスは、恥ずかしさのあまり死んでしまったそうです。この辺の、恥を知る潔さ?は見習いたいものです!スフィンクスの謎を解いたエディプスは、その国に残されていた王妃と結婚し、その国を治めることになります。言うまでもなく、この王妃が、エディプスの母親ですね。

その後しばらくすると、国に疫病が流行りだします。そこで原因を占ってもらうと、国の中に父を殺し、母と結婚した者が居るために、疫病が生じているということが分かります。エディプスは、そのような不届き者を絶対に見つけてやると、息巻きます。話を聞いたエディプスの妻(母親でもあります)は、思い当たることがあり、そのような調査は絶対にやめるように強く言うんですが、エディプスは断固として、調査の手をゆるめません。そして、自分と妻と国を破滅させる、悲劇に向かって突き進んでいくわけです。

弁護士の仕事では、ギリシャ悲劇ほどのドラマはなかなか起こりません。ただ、似たような悩みは生じるのです。弁護士の仕事でとても難しいところは、一方当事者である依頼者からの情報だけで、何が事実かを判断し、行動せざるを得ないところなんです。意図的かどうかは別にして、自分にとって都合の悪い情報を隠す人は相当数います。しかし、お客様を露骨に疑うわけにはいきません。そもそも、弁護士としても、知らないほうが良いことは、当然あるのです。

明らかに嘘をついているなと分かる場合でなければ、事件を引き受けます。その後、どうにも怪しい気もするけれど、はっきりしないという場合も出てくるんですね。こういった場合、どこまで事実を追及するのかは、弁護士によって違うでしょう。エディプスのようにとことん依頼者を問い詰めて、全てを明らかにしないと気が済まない弁護士もいそうです。相手を陥れているような場合は、当然そこまですべきです。

その一方、隠そうとしているプライバシーがらみのことにまで、どこまで切り込んでいくべきなのか、弁護士としてかなり悩ましいところなのです。

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◇ 弁護士より一言

前回、軽い下ネタを書いたところ、多くの方(男性だけですけど。。。)から、「思わず笑ってしまいました!」と、応援のお言葉を頂きました。そこで、今回も懲りずにばかばかしい話を。エディプスに対して、スフィンクスは、もう一つなぞなぞを用意していたそうです。「朝は4本足、昼は3本足、夜は2本足の動物は何か?」分かりますか?答えは、「男」だそうです。「いい加減に下ネタはやめろ!」と怒られても嫌だし、「お前は昼から2本足だろう。」と悪口言われるのも嫌です。顧問先が減るといけないので、解説はやめておこうと思ったのでした。
以上:2,445文字

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