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2014年03月01日発行第120号”添削弁護士の反省”

平成26年 3月 1日(土):初稿
横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの平成26年3月1日発行第120号「添削弁護士の反省」をお届けします。

○私は平成21年4月から法テラスへの登録をやめて、事実上、刑事事件を引退しました。平成13年から桐ファイルでの事件簿を整理して、取扱事件を正確に記録するようになりましたが、平成20年までの8年間は、平均して毎年10件前後の刑事事件を扱っていました。国選7~8割、私選2~3割の割合でした。私選事件では1件当たり着手金と報酬金併せて40~50万円の弁護士費用を頂くことが出来ますが、国選事件は、1件当たり6~9万円程度でした。

○私選でも国選でもやることは余り変わらず、国選事件はいわば奉仕活動の一環という意識がありました。私が弁護士になった昭和50年代は、毎月最低1件は国選事件が回ってきましたが、1件当たりの報酬は2万数千円から3万円程度でした。当時の勤務弁護士の給料は月額20万円程度でしたので、個人事件として全額報酬を取得できる国選事件は有り難いものでした。ところが、弁護士経験を数年積んで民事事件が忙しくなると報酬の少ない国選刑事事件はお荷物となり、受任を拒否する弁護士も増えます。

○昔は国選刑事事件の配点は、弁護士会事務局が行っており、国選配点担当事務員は受け手がなくて困って、若手の弁護士に懇請してくることが良くありました。私自身は、国選事件受任は義務と思っており、余程のことがない限り断ることはありませんでしたが、民事事件が立て込んでいるときに、引き取り手のない記録が数冊もある難しい国選控訴事件が回ってきてやむを得ず断ったことも数回ありました。国選事件の打診が来ると、先ず確認するのが記録の冊数でした。記録が5冊ありますなんて言われると、受任は気が重くなります(^^;)。

○刑事事件の記録の殆どは、被告人の警察官・検察官に対する供述調書です。刑事事件を受任すると原則として供述調書は全部コピーしてきました。裁判書式は、なんと平成12年までB版でしたので、供述調書はB4版袋とじが原則でした。記録をファイルから外してコピーすることは出来ませんので、厚い記録ほど担当事務員がコピーするのが大変でした。記録が数冊にも及ぶ場合は数時間かけて検察庁で事務員がコピーしてきます。

○刑事事件は、この記録読みから始まります。読む記録は殆どが被告人や参考人の供述調書です。事件によってはこれが膨大な量になります。年間50件もの私選刑事事件を扱う大山先生は、刑事事件の記録読みに没頭する時間を毎日のようにとっておられることでしょうが、記録読みを楽しみながらされているようです。供述調書にしても、反省文にしても、「他人の作文」の面はありますが、ご本人の本意を納得いく表現をすることは、結構難しいもので、結局、本意をどれだけ理解出来たかにかかります。

○本意が理解出来たとしても、その本意をそのまま裁判官に伝えると却って不利になる場合もあり、これを如何に脚色するかが重要になります。刑事であれ民事であれ、他人に伝える文章作成の難しさを実感しました。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

添削弁護士の反省


刑事裁判で被告人が、証拠として出てくる調書などを批判してますよね。「あれは、警察や検事の作文だ!」というわけです。警察官などの作る調書というのは、被疑者や証人が話す内容をそのまま書くことになっているんですが、現実にはかなり「作文」になっているようです。それはともかく「作文」にも、やはりレベルの違いがあるんですね。

私は刑事事件を多く手がけている関係で、警察や検察作成の調書を良く読むんですが、これがなかなか面白い。警察の調書のなかに、「うまいなあ」と感心するものが、いくつもあるんですね。

娘を殺された母親が、娘の思い出を淡々と述べた調書がありました。「幼いとき、私の手を握ってきた娘の手の感触を忘れられません。小さな、暖かい手でした。」といった感じで終わってるんです。声高に犯人を弾劾されるよりもこたえます!

少年事件の調書で、「お腹がすいたので、夕食代わりにコンビニでうまい棒(1本10円の駄菓子ですね)を15本買って食べました。」なんていうのもありました。私もジャンクフードが大好きで、子供が食べている「うまい棒」を一緒に食べたりしますが、15本買って食べようとは思いません。その少年の普段の生活が目に浮かぶと共に、まだまだ子供なんだなあと思わせる内容です。

こういう調書を読みますと、「弁護士としても負けていられないな!」と、闘志が湧くのです。警察に調書文学?あれば、当方には「反省文」「謝罪文」ありです。被害者や裁判官の心を動かす文章にしてやろうじゃないかと、燃えてくるのです!

少し前までは、私が反省文の例文を書いて、「こんな風にお願いします」と、被告人に渡していました。しかしそうしますと、大多数の人が、ほとんどそっくりそのまま書いてくるのです。これはさすがにまずいなと考えて、まずは自分で書いてもらい、それを当方で添削することにしたのです。

もちろん、心を打つような反省文も沢山あります。その一方、「こんなの読んだら、被害者はますます怒るだろうな。」なんて思わせるものもあるのです。

まず、「学術論文」みたいなものがあります。「何故私はかくの如き罪を犯したのか?」を考察しているのです。「被害者や裁判官はあなたの分析を聞きたいんじゃないの! あなたの反省を聞きたいの!!」なんて、厳しく指導せざるを得ないのです。

その他よくあるのが、「私のしたことは、いかなる理由があろうともしてはいけないことでした。」なんて書いてる反省文です。見ず知らずの人間に痴漢しといて、「いかなる理由」ってなんだよ!と、さすがに私も呆れ返るのです。

さらに、「今後は社会の役に立つことをします。」なんていうのもよくあります。別に揚げ足取りはしたくないですけど、まずは犯罪について十分に反省・謝罪して、最低限犯罪をしない人間になるところから始めてくださいと、私でも言いたくなっちゃいます。

こういう反省文ですと、当方が添削していくうちに、最初のものとは全然違ってくることがあるんですね。これなんか、「弁護士の作文」と言われても弁解できない気がします。警察や検察の作文ばかりを批判できませんね。心から反省しました!

私の添削は、たとえどんな理由があろうとも、してはいけないことでした。今後は社会の役に立つ弁護士になることをお約束いたします!

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◇ 弁護士より一言

会社勤めをしていた10数年前には、部下の文章をドシドシ添削できていました。それだけ自分に自信があったとも言えます。しかし、今から考えると、部下が文章で意図していたところがよく理解できなかっただけのような気もするんです。最近は、他人の文章を直すことがほとんどできなくなりました。読む力が増してくると、かえって添削できなくなると思いたい。でも本当は、自信と決断力が無くなって来ただけのような気もしているのです。ううう。。。

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