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平成25年 8月 1日(木):初稿 |
○横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの平成25年8月1日発行第106号「弁護をするサル」をお届けします。 ○「弁護をするサル」との表題から、西田研志弁護士の「サルでもできる弁護士業」についての記事かと思いましたが、そうではなく、もっと高尚なフランス・ドゥ・ヴァールの「政治をするサル」というサル研究古典についての話しでした。いつものことですが、大山先生の博学と、我が不勉強ぶりを痛感させられます(^^;)。 ○人間の人間たる所以は、「評価欲求」に尽き、この欲求の一具現に「支配欲求」があると思っておりますが、「政治をするサル」によるとチンパンジーも多少は、この「評価欲求」、「支配欲求」を持っているようです。「考えるための書評集」の平凡社ライブラリーから出版されていた『政治をするサル』(1982)の改訂版だと思われる「『チンパンジーの政治学』フランス・ドゥ ヴァール 」では、「べらぼうにおもしろい本である。」の書き出しで、内容を相当深く解説されています。 ○特に旧試験時代の弁護士は、「評価欲求」の強い方が多く、このような方は、人の上に立つことで「評価」されていると思い込むことに無上の喜びを感じるようです。また、「○○長」として、手下を抱えて、人間を支配しているとの欲求を満たすこともまた無上の喜びであり、生き甲斐にもなるとのことです。 ○若い世代には、この「評価欲求」が希薄化している層が増えつつあるようにも感じますが、この「評価欲求」が人間社会発展の原動力になっていることは紛れもない事実です。「世のため人のためになって名を挙げたい」との素朴な欲求を敢えて否定して生きてきた私には、言う資格はありませんが、「評価欲求」希薄化層の増加はちと心配な面もあります。 ○「評価欲求」から生じる権力闘争としての政治にうつつを抜かすより、顧客サービス業としての「弁護士」業務にも真剣に取り組むべきと大山先生は結論付けています。「弁護士の数が増えて、生活も苦しくなり、『政治』どころではなくなる」時代は、既に到来しつつあります。その中で「弁護をするサル」として、業務に精励したいと思った次第です。 ******************************************* 横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作 弁護をするサル フランス・ドゥ・ヴァールの「政治をするサル」は、サル研究の古典です。40年近くも前の本ですが、今でも楽しく読めます。オランダの野外動物園にいる、チンパンジー(人間の遺伝子と98%同じだそうです)達のボス争い(「政治」ですね)を克明に記録したものなんです。 野生のチンパンジーは、食べて「生活」するだけで忙しいので、「政治」をする時間がそれほどないそうです。そこで、餌が確保されている野外動物園でこそ、チンパンジーのボス争いを非常に良く観察できるのです。サルのボス争いなどというと、力の強い方が勝つのかなと考えてしまいますよね。ケンシローとラオーの一騎打って感じです。(なんのこっちゃ!) ところが、チンパンジーのボス争いはそんなに単純なものではないのです。それぞれのチンパンジーがどれだけ肉体的に強いかということは、ボスになる要素のうちのごく一部に過ぎません。まず大切なのは、被支配者であるメスザルたちの支持を得るということなんです。これが出来ないと、とてもじゃないけどボスにはなれません。逆に言いますと、ボスを追い落とすために、メスザルたちの支持を失わせるという手段がとられます。「今のボスでは、被支配者層を守ることが出来ないぞ!」というアピールをしていくわけです。 次に大切なのは、他のチンパンジーとの協力です。ナンバー2と、ナンバー3のサルが連合を組んで、ナンバー1のサルを追い落とすなんてことが行われるんです。まさに、権謀術数のうごめく世界です。 ところで、似たような話しが、弁護士の世界にもあります。弁護士も、ボス争いが大好きなんです!日弁連や各弁護士会では、会長達を選挙で選ぶんです。この選挙は、公職選挙法みたいな選挙についての規定などないので、やりたい放題です。選挙になると、先輩弁護士や修習同期だった弁護士(顔も覚えてない人達です)から、何本も電話がかって来るんです。自分の推す人に投票してほしいとお願いしてきます。まさに、被支配者である一般弁護士の支持を取り付けようと言いうわけです。さらには、これまでの執行部のやり方では、弁護士の生活は苦しくなるばかりだなどというキャンペーンを張って、今のままでは「被支配者層」の一般弁護士を守れないぞとアピールをしてきたりします。 弁護士会には、いくつも派閥があるんですね。派閥間で選挙を戦うわけですが、他の派閥争うと共に、連合を組んで、他の候補をたたいたりもします。この辺も、チンパンジーの連合関係と似ています! さらに言うと、弁護士が今まで「政治」が大好きだったこと自体、チンパンジー社会と共通点がありそうです。これまでの弁護士は殿様商売ができており、何もしなくてもエサ(仕事)が取れていました。だからこそ、「生活」の心配をしないで、あれほど「政治」に夢中になれたのです。今後、弁護士の数が増えて、生活も苦しくなってくると、「政治」どころではなくなるかもしれません! しかし考えてみますと、政治をするサルはいますが、裁判をするサルや、弁護をするサルは聞いたことがありません。ヴァール先生も今西錦司先生も、サルの裁判について報告していません。「政治」はサルにもできますが、「弁護」はサルにはできないんですね。弁護士も「政治」はほどほどにして、「弁護」に取り組んだ方が良いのではと思ったのでした! ******************************************* ◇ 弁護士より一言 「パパって、ペットを飼ったことあるの?」と、小学2年生の息子に聞かれました。お友達は、みんなペットを飼っているということです。 そこで、「パパは、とっても可愛い小猿を飼っているんだよ」と答えたんです。 すると息子は、「僕も、“びっくりぼし”のゴリラを飼ってるよ!」と言い返してきました。実は私、つい先日ぎっくり腰になって、寝込んでました。負けず嫌いで、口が達者なところは親譲りのようです。 以上:2,615文字
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