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平成24年 2月29日(水):初稿 |
横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作 前回は、商品の価格と同じように、犯罪に対する刑の重さ(「犯罪の価格」ですね)もアンケート方式で決められないかというところで終わりました。 実際にアンケートでも取って確認してみれば、現在の刑罰の相場と、かなり違う答えが出てきそうな気がします。例えば、親が子供を虐待して殺してしまった事件で、懲役6年程度の刑罰ですね。私の感覚からいえば、信じられないほど「安い」価格設定だと思ってしまいます。 (まあ、私が弁護を担当することになれば、色々理屈をつけて、それでも十分重いとか主張するんですけど。)こういう犯罪など、他の人たちがどう思っているのか、聞いてみたい気がします。 一般の人の感覚とは必ずしも関係なく裁判で決まるものとして、刑罰のほかに、損害賠償の金額もあります。特に、精神的な損害に対する慰謝料の金額ですね。 これは、そもそも金額に算定するのが難しいものですから、どのくらいの金額にすれば正しいというわけではありません。大怪我をした場合の慰謝料、不倫に対する慰謝料、離婚の場合の慰謝料、名誉を傷つけられた場合の慰謝料と色々あるんですが、どれも裁判官の決めた相場によって決められています。しかし、私の感覚でいきますと、どれも安すぎる気がするんですね。 慰謝料の金額なんかについても、「お客様」である一般市民に対する市場調査で聞いてみたら、面白い結果が出るのではないかと考えてしまいます。 商品の価格設定について、市場調査をするというのは、マーケティングの世界では常識です。前回紹介したアンケートのやり方は、簡易なやり方で正しい答えが出るというところがポイントなんですね。市場調査の考え自体は昔からあります。 ところが、法律の分野では、刑罰の重さや慰謝料の金額を、市場に聞こうなどということは、思いもよらないことのようです。そもそも、個々の犯罪の刑罰や、個々の慰謝料の金額をどのくらいにすべきかなんて、法律の専門家は、ほとんど興味を持っていないんですね。 法律の世界でも、学者先生なんかが色々な研究をされてるんですが、一般人の興味の対象とは違っているようです。一般市民としては、どんな犯罪行為によって、どんな結果が生じたら、それに対する罰則はどのくらいかということが、一番興味のあるところでしょう。 しかし、専門家の世界では、誰もそんなこと気にしてないのです。処罰の根拠は何かとか、論理的な一貫性を持った理論体系を作ることには熱心ですが、個々の刑罰の重さなど、ほとんど興味が無いようです。 学問の世界では、全く違う分野から来た人が、新しい視点で、革新的な成果をあげるなんて事が良くあります。他の分野では当たり前の手法を違う分野にもっていくと、非常に面白い成果を生み出すわけですね。残念ながら法律の世界では、他の分野から影響を受けた革新的なことは起こっていないようです。 近い将来、「マーケティングの市場調査の方法を、刑罰の重さや慰謝料の金額決定に使うようになったのは、大山弁護士の偉大な功績です。」と言われるようになったら嬉しいなと、アホなことを考えながら、「犯罪の価格設定」の話しは終わりに致します。 ******************************************* ◇弁護士より一言 2、3ヶ月前に、その日開業したばかりのレストランでランチをとりました。いやあ、酷かった。3人で行ったんですが、食事はちっとも出てきません。ようやく出てきたと思ったら、一人分だけです。かなり経ってから、もう一人分来ました。ランチ自体、パサパサしていて美味しくない。極めつけは最後に、「一人分ご飯が足りなくってしまったので、出来ません。」なんて言ってきたんですね。お店から出ると、3人でさんざん悪口を言って、このレストランは何時潰れるか賭けをしようなんてことになったんです。「1ヶ月しかもたないだろう」「いや、さすがに3ヶ月は持つかな」なんて話していたのですね。 ところが先日、たまたまそのレストランの前を通りかかりました。えっ。(というわけで、次回に続くのです。)引き続きコメントを楽しみにしております。 (2010年5月1日第28号) 以上:1,661文字
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