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警視庁新宿署の「違法対応」に33万円の損害賠償を認めた地裁判決紹介

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令和 8年 2月27日(金):初稿
○いまどきこんな酷いことがあるのかと、驚いたニュースの元となった令和7年6月11日東京地裁判決(LEX/DB)関連部分を紹介します。いまどきのこんな酷いこととは、以下の「「拷問だ」パンツ一丁で身体拘束、尿垂れ流し、トイペも渡されず…警視庁新宿署の「違法対応」に賠償命令 東京地裁」との報道の内容です。慰謝料30万円が認められていますが、100万円位認めても良いのではと思いました。

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「拷問だ」パンツ一丁で身体拘束、尿垂れ流し、トイペも渡されず…警視庁新宿署の「違法対応」に賠償命令 東京地裁
弁護士ドットコム6/11(水) 16:50配信

警視庁新宿署の留置場で身柄を拘束されていた20代男性が、警察官から虐待を受けたとして東京都に165万円の損害賠償を求めた裁判で、東京地裁(篠田賢治裁判長)は6月11日、都に33万円の支払い命じる判決を下した。

判決は、暴れていない男性に手錠などによる身体拘束を続けたことや、トイレの際にトイレットペーパーを渡さずに手で拭くことを余儀なくさせたことについての違法性を認めた。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●トイレで手に水をつけて拭かざるを得ず
訴状や判決によると、男性は2022年4月6日、強盗致傷の疑いで逮捕されて、同年8月29日まで警視庁新宿署の留置施設に収容されていた。
同年7月、同じ部屋に収容されていた1人が風邪の症状をうったえ、38.9度の熱があることが判明した際、別の収容者が毛布の差し入れを求めたものの、担当の警察官に拒否された。
そこで男性が「熱がある人を1時間放置するのか」「毛布1枚くらい入れてもいいのではないか」といった趣旨の発言をしたところ、保護室に連行された。

男性はそこで約2時間にわたり、服を脱がされパンツ一丁にさせられ、両方の手首と足首を縛られた状態にされたという。
その間、尿意を催した男性がトイレに行きたいと求めたが、「垂れ流せよ」などと言われ対応してもらえず、男性は我慢できずに身体拘束を受け寝転がされたまま排尿した。
また、身体拘束を解かれたあと、便意を催した際にはトイレットペーパーを要望したが無視され、男性はやむなく手に水をつけて拭かざるを得なかったという。

こうした警察官たちの対応によって多大な肉体的苦痛と精神的苦痛を受けたとして、男性は同年9月、警視庁を所管する都を相手取って提訴した。
裁判では、保護室に収容したことや、身体を拘束する道具(戒具)を使用したことの違法性が主な争点となった。

●下着のまま排尿、東京地裁「品位や尊厳を著しく傷つけた」
担当の警察官が男性を保護室に収容したことについて、東京地裁は、男性が当時大声を発した経緯に触れて「留置施設の規律や秩序を維持するために特に必要であると判断したことが不合理であったということはできない」とした。

しかし、保護室に収容されたあとは、男性に大声を発したり興奮したりする様子がなかったとして、「留置担当官らが職務上の注意義務を尽くすことなく漫然とこれを継続したものであって、国賠法上、違法の評価を免れない」と判断した。
戒具については、男性が暴れたり抵抗したりしていなかったにもかかわらず、使用することにした判断は「著しく合理性を欠く」として違法性を認定した。
また、下着のまま排尿させたり、排便時にトイレットペーパーを与えなかったりした対応についても、「合理的な理由なく、被留置者(男性)の品位や尊厳を著しく傷つけた」などとして違法とした。

●原告代理人「言うことを聞かせるための拷問だ」
この日の判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた原告代理人である小竹広子弁護士は「被留置者をことさらに貶めて反抗させないためのツールとしてベルトなどが使われている」とうったえた。
同じく代理人の海渡雄一弁護士は現在用いられている戒具が使われなくなるよう求めていく姿勢を示した。
「警察官が戒具で彼の身体を拘束した行為は、言うことを聞かせるという目的を持って鋭い痛みを与えるという意味で、拷問に当たる。

この戒具を付けられたら痛いということが長い間、隠されてきた。それを明らかにした原告の功績は大きい」(海渡弁護士)


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主   文
1 被告は、原告に対し、33万円及びこれに対する令和4年7月8日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを5分し、その4を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、165万円及びこれに対する令和4年7月8日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要等
 本件は、警視庁新宿警察署(以下「新宿署」という。)の留置施設(以下「本件留置施設」という。)に留置されていた原告が、留置担当官らの故意又は過失により、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下「刑事収容施設法」という。)所定の要件がないにもかかわらず、違法に本件留置施設の保護室に収容され、戒具を用いて身体を拘束された上、戒具により不必要に強く身体を締め付けられたり、下着を着けたまま排尿することを余儀なくさせられたりするなどの非人道的な扱いを受け、これらにより精神的苦痛を被ったと主張して、国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき、被告に対し、損害賠償金165万円及びこれに対する令和4年7月8日(違法行為の終了の日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

1 関係法令の定め

     (中略)

(3)その他の措置について
ア 認定事実(5)アによれば、原告は、本件戒具使用中、用便の要望を申し立てたが、留置担当官からその場で垂れ流すよう指示され、下着のまま排尿することを余儀なくされたことが認められる。
 これに対し、被告は、当時22歳であった原告が、起床時に排尿した後、本件戒具使用が中止された午前9時50分までの約3時間20分の間に、漏らしてしまうほどの尿意を感じたとは信じ難い旨、背中が濡れるくらいの排尿をしたのであれば本件戒具が濡れていてしかるべきところ、そのような状況はなかったことから、原告の供述は信用に値しない旨主張する。

 しかし、原告は朝食時に水分を摂取したと考えられるところ、原告が尿意を感じたとは信じ難い旨の被告の上記主張を裏付ける経験則が存在するとは認められず、その主張は合理的な根拠を欠くものといわざるを得ない。また、原告は、尿は少量を漏らしてしまい背中が濡れた旨供述しており(原告本人〔11、58、59頁〕)、本件戒具が尿で濡れていなかったとしても、不自然と即断することはできない。一方、原告は、下着のまま排尿せざるを得なくなった経緯について、本件保護室収容の終了直後の木村弁護士との接見時から一貫して述べている上(甲1参照)、このような事実があったとされる直後に虚偽の申立てをすれば、本件留置施設内の録画映像等からすぐに虚偽であると発覚してしまい、不利益な措置を受けるおそれがあることは容易に予想されるのであって、原告が本件保護室収容の終了直後からあえて事実と反することを述べたとはにわかに考えにくい(なお、原告は、本件保護室の様子を撮影するカメラがあることは認識していたが(原告本人〔59頁〕)、当時、本件保護室を含め本件留置施設内を録画するための定点ビデオカメラが録画されていないなどとして(認定事実(1)ア)、その映像が後に証拠として提出されることはない旨を知っていたとは認められない。)。

 加えて、P8警部補は、戒具使用中の被留置者が排尿を希望する際、戒具を外すか否かはケース・バイ・ケースであり、上司の判断でそのままさせることもある旨、自傷他害のおそれがあると判断した場合には戒具をしたまま排尿させる旨証言し(証人P8〔26、27、46頁〕)、また、P5巡査長も同旨の証言をしているのであって(証人P5〔22頁〕)、両名とも、戒具をしたまま排尿させることがあるという趣旨の供述をしている。さらに、本件戒具の装着の際には、五、六名程度の留置担当官が原告の四肢等を押さえた上で、軍手を着用して本件戒具のベルトを締めており(甲14、25、乙19、20)、本件戒具の着脱には相当の手間がかかることがうかがわれることをも踏まえると、留置担当官が、排尿を申し出た原告に対し、その場で垂れ流すよう指示したとしても不自然ではないといえる。

 以上に加え、本件に関する原告本人の供述は基本的に信用性が認められることからすると、認定事実(5)アのとおりの事実を認めることができる。

 そして、原告は、本件保護室に入室後、興奮して暴れたり抵抗したりしていなかったにもかかわらず、本件戒具を使用されたものであり、そもそも戒具使用の要件を欠く上(前記(2))、本件記録を精査しても、本件戒具を外して排尿させることに具体的な支障があったとは認められないから、留置担当官が、原告にその場で垂れ流すよう指示し、下着のまま排尿することを余儀なくさせたことは、合理的な理由なく、被留置者の品位及び尊厳を著しく傷つけたものであり、職務上の注意義務を尽くさなかったものとして、国賠法上違法であるといわざるを得ない。

イ 認定事実(4)ウによれば、原告は、本件戒具を外された後、用便に際してちり紙を要望したが与えられず、手に水を付けて拭くことを余儀なくされたことが認められる。
 被告は、かかる事実を否認するが、原告は、上記事実についても、本件保護室収容の終了直後の木村弁護士との接見時から一貫して述べており(甲1参照)、かつ、前記アで述べたのと同様に、このような事実について、本件保護室収容の終了直後からあえて事実と反することを述べたとはにわかに考えにくいから、この点に関する原告の供述は信用することができる。

 また、本件記録を精査しても、本件留置施設内の留置担当官らが原告の上記要望に対応できなかったことにつき、やむを得ない事情は見当たらない。
 そうすると、留置担当官が、原告の上記要望に対応せず、ちり紙を与えなかったことにより、排便後に手に水を付けて拭くことを余儀なくさせたことは、前記アと同様、職務上の注意義務を尽くさなかったものとして、国賠法上違法というべきである。

4 争点2(損害の有無及び額)について
(1)慰謝料 30万円
ア 前記3のとおり、原告は、どんなに遅くとも7月7日午後7時40分以降、同月8日午後8時50分まで、25時間以上にわたり違法に本件保護室に収容されたものであり、これにより原告が受けた精神的苦痛は、決して小さいとはいえない。

イ また、原告は、刑事収容施設法所定の要件を欠くにもかかわらず、約2時間にわたり違法に本件戒具により身体を拘束されたものである。
 しかも、その態様は、ベルト手錠の外側から4つ目のベルト穴に留め具を通され、両腕が不自然にねじれた状態で手首を腰部に固定されるというものであった(認定事実(4)イ)。原告に使用されたベルト手錠が、原告と同程度の体格の裁判所書記官や原告より小柄な原告訴訟代理人のいずれも立位ではベルト穴に留め具が届かないような小さなものであり、原告訴訟代理人を床に寝かせた状態にして力を入れて締め付けることでようやく一番外側のベルト穴に留め具を固定することができたこと(認定事実(2))を踏まえると、その締付けが相当強いものであったことは想像に難くない。この点に関し、証人P8は、本件戒具を緩くつけると手首手足が自由に動いて逆に傷つけてしまうので、4つ目のベルト穴に留め具を通したという趣旨の供述をするが(証人P8〔8、23、24頁〕)、原告に使用したものと同じサイズのベルト手錠を使って実験した結果(令和6年10月23日付け検証の結果)により認定される上記事実に照らすと、本件戒具の4つ目のベルト穴に留め具を通すというのは、手首手足が自由に動かないようにするとの趣旨に照らしても,必要以上にきつく締めたものといわざるを得ない。

 そして、その結果、原告は、両手首に擦過傷を負い、その傷は、本件戒具使用から2年5か月余りが経過した時点でも瘢痕が薄く残るようなものであった(認定事実(6)ア)。なお、被告は、かかる受傷につき、〔1〕原告が無理に手首を動かそうとしたことにより生じた可能性が高い旨や、〔2〕原告が受傷部位を引っ掻くなどした可能性も排除できない旨を主張するが、〔1〕そもそも上記のとおり本件戒具使用は違法な身体拘束である上、原告は必要以上にきつく締められていたから、原告が痛みを和らげるなどのため手首を動かしたとしても、やむを得ないものであり、仮にこれにより原告の傷が拡大したとしても、本件戒具使用との相当因果関係は否定されないし、〔2〕原告が受傷部位を引っ掻くなどしたというのは、本件戒具使用の翌日の瘢痕の状況及びその後の瘢痕の状況(認定事実(6))に照らすと、的確な根拠なしに単なる憶測を述べるものにすぎないといわざるを得ず、いずれも採用することはできない。 
 これらを踏まえると、本件戒具使用により原告が受けた精神的・身体的苦痛は大きいものであったと認められる。

ウ 加えて、原告は、本件戒具使用に当たり、衣服を脱がされ、上半身裸の下着姿のまま身体を拘束され、さらに、下着を着けたまま排尿を余儀なくされた上、本件戒具の解除後も、用便に際してちり紙を与えられず、手に水を付けて拭くことを余儀なくされたものであり(認定事実(5)ア~ウ)、これらの非人道的な措置によって原告の品位や尊厳を大きく傷つけられたものと認められ、これによる精神的苦痛も軽視することはできない。

エ これらの事情を総合的に考慮すると、一連の違法行為により原告が受けた精神的・身体的苦痛に対する慰謝料は、30万円と認めるのが相当である。

     (中略)

(4)合計 33万円

第4 結論
 以上の次第で、原告の請求は、33万円及びこれに対する本件保護室収容の終了日である令和4年7月8日から支払済みまで民法所定の年3%の遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第3部
裁判長裁判官 篠田賢治 裁判官 高部祐未
裁判官金澤康は、退官のため、署名押印することができない。
裁判長裁判官 篠田賢治
以上:5,977文字

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