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マンション内漏水事故について管理組合ら責任を一部認容した地裁判決紹介2

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令和 5年 7月 4日(火):初稿
○「マンション内漏水事故について管理組合ら責任を一部認容した地裁判決紹介」の続きで、マンション居室天井裏を通っている排水管が原因の漏水事故について管理組合の責任を認めた平成8年11月26日東京地裁判決(判タ954号151頁)関連部分を紹介します。

○原告及び被告らが居住するマンションについて,原告が区分所有する707号室と被告らが区分所有する607号室は上下階の関係にあるところ,607号室の天井から水漏れ事故が発生し,607号室の天井裏を通っている排水管が原因しているとして,原告が被告らに対し,排水管が本件建物の区分所有者全員の共用部分であることの確認を求め、被告マンション管理組合に対しては,原告が水漏れ費用の立替払いをしたとしてその求償を求めました。

○これに対し東京地裁判決は、本件排水管は,雑排水を機械的に流す機能を有するものであり,本件建物全体の雑排水を集め,公共下水管に流すという共同性を有するものと考えられることから,本件建物全体への附属物というべきであり,建物の区分所有等に関する法律2条4項から除外される専有部分に属する建物の附属物に該当しないから,共用部分と解するのが相当であるとして,原告の請求を認容しました。

○この事件は、最高裁まで争われて、高裁・最高裁とも一審判決を維持しました。別コンテンツで紹介します。

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主   文
一 原告と被告らとの間で、別紙物件目録記載の建物(MNTエステート607号室)天井内に設置されている別紙図面赤線部分の排水管は、MNTエステート区分所有者全員の共用部分であることを確認する。
二 原告は被告Y2及び同Y1に対して、平成6年12月23日ころ発生した別紙図面の赤線部分の排水管に起因する水漏れによる損害賠償金21万6516円の支払い債務のないことを確認する。
三 被告MNTエステート管理組合は原告に対し、金12万7200円及びこれに対する平成8年3月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
四 この判決は第3項に限り仮に執行することができる。
五 訴訟費用は被告らの負担とする。

事実及び理由
一 請求

 主文と同旨

二 事案の概要
 本件は、原告及び被告らが居住する別紙物件目録記載の一棟の建物MNTエステート(以下「Tエステート」という。)について、原告が区分所有する707号室と被告Y1(以下「被告Y1」という。)が区分所有し、同Y2(以下「Y2」という。)とともに居住する607号室は上下階の関係にあるところ、607号室の天井から水漏れ事故が発生し、607号室の天井裏を通っている排水管が原因しているとして、原告が被告らに対し、右排水管が本件建物の区分所有者全員の共用部分であることの確認を求めるとともに、被告Y1及び同Y2に対し、水漏れによる損害賠償義務のないことの確認を求め、被告MNTエステート管理組合(以下「被告管理組合」という。)に対しては、原告が水漏れ費用の立替払いをしたとしてその求償を求めた事案である。

三 争いのない事実等

(1)原告、被告Y1及び同Y2らが居住するTエステートは、訴外Tエステート株式会社が昭和48年1月20日建築し、分譲した区分所有建物である。
(2)原告は、Tエステートの7階707号室の所有者であり、被告Y1は6階607号室の所有者である。両室は上下階の関係にあり、被告Y2は同室に被告Y1と居住している。
(3)被告管理組合は、Tエステート区分所有者全員によりTエステートの共用部分及び共用施設の管理のために設立された区分所有者の団体であり、建物の区分所有等に関する法律に定める法人格を有していない団体である。

2 水漏れ事故の発生
(1)平成6年12月23日ころ、被告Y1及び同Y2が居住する607号室の天井から水漏れがし、右漏水は、707号室が使用する別紙図面記載の排水管(以下「本件排水管」という。)からの漏水が原因の一つであったと推測される。
 Tエステートの各階の上下の区分所有建物の間には、上の階の排水管がコンクリート床を下に貫通して下の階の天井裏を排水管が通っている。

(2)原告所有の707号室の床下と607号室の天井との間にある排水管は、707号室の流し、トイレ、洗面所、風呂からの排水に加えて、隣室の708号室からはトイレの排水が流れ込む構造になっている。

(3)原告は、排水管の応急修理のため、訴外株式会社Aへ排水管の修理を依頼し、右依頼に基づき同社が平成7年2月9日、排水管の継ぎ目にコーキング修理を行ない、原告は右費用として同社に対し、同月27日、金12万7200円を支払った(甲第5の1、2、第6、第11、原告本人)。

3 被告Y1及び同Y2は、天井からの水漏れにより生じた損害について、原告及びその隣室の住人が負担するものとして、損害賠償名目で、原告に対しては、金21万6516円を請求している。

四 争点
1 本件排水管はTエステートの共用部分といえるか。

(原告の主張)
(一)本件排水管の設置されている空間、すなわち、階下の天井と階上の床下との間が専有部分であるか共用部分であるかについて
(1)建物区分所有に関する法律(以下、単に「法」という。)2条3項によれば、専有部分とは「区分所有の目的たる建物の部分をいう」とある。区分所有の客体となる部分が専有部分であるから、区分所有の対象となる専有部分には、独立した物的支配の対象であること(構造上の独立性)が要件となる。
 本件においては、いずれも排水管の設置されている空間は、床及び階下の階段の天井によって完全に遮断されているから、右空間は、構造上の独立性がある。

(2)次に、独立した利用に供せられるものでなければ建物の区分所有を敢えて認める必要がないから、区分所有の対象となるには、独立して建物としての用途に共することができること(利用上の独立性)が必要である。
 本件排水管の設置空間は、上の階からの排水管のみが設置されていることから、もともと階上の排水管を通すために設けられた空間であってそれ以外の用途に供することが全くできない空間である。

(3)また、他の建物部分や全体建物の利用、保安管理に必要不可欠な共用設備が存在する場合には、専有部分として区分所有権の対象となることはできないから、結局、本件排水管の通る空間は、構造上の独立性は認められても、利用上の独立性が認められず、他の建物部分または共用設備が存在しているため、区分所有権は認められないので、専有部分にはならない。

(4)そうすると、本件排水管の通る空間が専有部分としての建物の区分所有権の対象にならないとすれば、共有部分とは専有部分以外の建物の部分であるから(法2条4項)、右空間は共用部分に当たる。そして、本件排水管は、部屋の床下に位置し、部屋から見えない場所に取り付けられ,しかも原告自身の自由で何ら選択する余地がないこと、設置場所は、床下と階下の天井との間に敷設されていること、排水管の役割は単に区分所有建物内の流し、トイレ、風呂等からの雑排水をいわゆるたて管へ導くことにのみ意味があることから、法2条4項の専有部分に属しない附属物に当たり、共用部分というべきである。

(二)
(1)Tエステートにおいては、その区分所有者全員の合意により、建物の区分所有に関する法律30条に基づき、Tエステートの建物、敷地及び附属施設の管理または使用に関して管理組合規約が締結されており、この中には左記の条項があり、排水管は共用施設とされている。

              (中略)

(4)以上のような管理組合規約及び管理組合規定の条文の体裁及びTエステートの建築構造からすれば、区分所有者及びその承継人は、排水管については、一括して被告管理組合が共有物件として管理する建前を採用したといえる。

(被告管理組合の主張)
(一)本件排水管の設置されている空間が専有部分か共用部分かについて
 昭和57年1月、建設大臣の諮問機関である住宅宅地審議会から答申され、法改正に伴い昭和58年10月に改定された「中高層共同住宅標準管理規約」の7条の2の1によれば、天井、床及び壁は躯体部分を除く部分を専有部分とするとされているように、天井、壁、床の各空間は設備の有無、種類に関係なく専有部分とされている。

(二)Tエステート管理規約1条2項2の2の排水管は区分所有建物内の枝管をさすものではない。

(三)本件排水管の構造が本管に合流する直前に隣室の排水管が合流する部分があるが、この部分が仮に共用部分であったとしても、法16条に定める一部共用部分であって、原告と隣室の所有者の両名で管理すべきものである。

2 被告Y1及び同Y2の原告に対する損害賠償請求権の存否
(被告Y1及び同Y2の主張)
 右被告らが本件漏水によって、被った損害は、金21万6516円である。

3 原告の被告管理組合に対する立替金請求権の存否
(原告の主張)
 本件漏水に関連した排水管の修理に関して原告が支出した費用12万7200円は、共用部分の修繕として立て替えたものであり、被告管理組合が負担すべきものである。

五 判断
1 専有部分と共用部分の区別について

 法は、専用部分とは、構造上区分された建物の部分であり(法1条、2条1項、3項)、独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものをいい(法1条)、共用部分とは、専有部分以外の建物部分、専有部分に属しない建物の附属物、規約により共用部分とされた附属の建物をいう(法2条4項、4条2項)としている。なお、共用部分とされる根拠が法律である場合と規約である場合により、法定共用部分と規約共用部分とに分けられる。そして、法は、まず専有部分を定め、それ以外を共用部分とする体裁をとっている。

 本件排水管は、建物の部分ではなく、建物の附属物であることが明かであるから、これが、共用部分か専有部分に属するかの検討を要する。
 法は、建物の附属物のうち、専有部分に属しないものを法定共用部分とし(2条4項)、右専有部分に属するものとは、専有部分である建物の部分に附属する附属物をいうものと解される。したがって、専有部分である建物の部分に附属する附属物以外の附属物が、専有部分に属しない附属物であり、これが共用部分となるといえる。

 一般に、建物の部分が専有部分であるか共用部分であるかが判明すると、これに基づき、建物の附属している建物の部分が専有部分であれば、その建物の附属物は専有部分に属し、建物の附属物が附属している建物の部分が専有部分でなければ、その建物の附属物は共用部分となると解される。

2 争点1(本件排水管の法的性質)
(一)証拠(甲第4、第9、第11号証、原告本人、被告管理組合代表者本人(一部))及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
 本件排水管は、区分所有者である原告の建物(707号室)の台所、洗面所、風呂、便所から出る排水を本管に流す枝管であり、原告建物の床下にある床コンクリート(共用部分)を貫通して、階下の被告Y1所有建物(607号室)の天井裏に配管されているものである。

 そして、707号室の隣室の708号室の汚水管は戸境壁を貫通して607号室天井裏に横引きされて、707号室の汚水管と接続し、さらに707号室排水管に接続した後、本管に接続されている。
 また、707号室の洗面台の排水は、湯槽下に流れ、風呂場の排水管を通って、床コンクリート下の排水管と接続しているものと推測される。

(二)607号室の天井裏と共用部分である床コンクリートとの間の空間は、床コンクリート及び階下の天井によって完全に遮断されているので構造上の独立性があると見られるが、右空間には上の階からの排水管のみが設置されていることからみると、階下の区分所有者の利用に供せられるものとはいえないから、利用上の独立性があるとはいえないので、区分所有の対象となる専有部分と認めることはできない。したがって、右空間部分は、共用部分と認めるのが合理的である。

 そして、右排水管は、雑排水を機械的に流す機能を有するものであり、本件建物全体の雑排水を集め、公共下水管に流すという共同性を有するものと考えられる。
 また、本件排水管は、その維持管理の面から見ると、707号室の床下の床コンクリートと階下の607号室の天井裏の空間に設置されているため、原告の好みによって維持管理を行う対象となる性質のものとはいえず、本件区分所有者の共同で管理することが便宜である。

(三)以上の点を考慮すると、本件排水管は、本件建物全体への附属物というべきであり、法2条4項から除外される専有部分に属する建物の附属物に該当しないから、共用部分と解するのが相当である。

 この点、被告管理組合代表者は、丁第3号証をもって、本件排水管が専有部分である旨供述するが、同号証は、建設省住宅局民間住宅課が標準的な管理規約について解説したものにすぎず、直ちに、本件排水管の法的性質を決するものではないから、右供述部分は採用できない。

(四)また、被告管理組合は一部共用部分である旨主張するが、建物全体の保全、全体区分所有者の利益の増進、法律関係の複雑化の防止等のため、ある共用部分が構造上機能上特に一部区分所有者のみの共用に供されるべきことが明白な場合に限ってこれを一部共用部分とし、それ以外の場合は全体共用部分として扱うことが相当である。

本件排水管は前示のとおり、707号室の床下の床コンクリートと階下の607号室の天井との間に位置し、707号室と708号室の排水を本管に排水するためのものであり、本件建物内に存する排水管全体として管理することが相当であると考えられることから、明らかに一部区分所有者のみの共用に供されるべきことが明白であるとはいえないので、本件排水管は全体共用部分というべきである。

3 争点2
 本件排水管が共用部分である以上、仮にこれから生じた損害が被告Y1及び同Y2にあったとしても、原告が右被告らに対して損害賠償義務を負ういわれはないから、右被告らの原告に対する主張は失当であり、原告の右被告らに対する右損害賠償義務の不存在確認請求は理由がある。

4 争点3
 原告は被告管理組合に対し、原告が本件排水管の修繕に要した費用を請求するところ、法19条によれば、規約に別段の定めがない以上、各共有者が、共有部分の負担に任ずるとされており、本件規約10条には、共用部分の修繕は全区分所有者の負担とするとされている。そして、規約8条2項には、管理組合規定を制定することとされ、これを受けた管理組合規定5条によれば被告管理組合が共用部分の修理または取り替えに関する業務を行うこととされていることを考慮すると、原告の支出した本件費用立替払分は被告管理組合が負担するものと解するのが相当である。

5 以上のとおり、原告の本訴請求は理由がある。(裁判官 玉越義雄)

別紙〈省略〉
以上:6,157文字

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