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工場抵当法の効力範囲と対抗要件に関する平成6年7月4日最高裁判決まとめ

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平成27年11月12日(木):初稿
○「工場抵当法の効力範囲と対抗要件に関する平成6年7月4日最高裁判決紹介」の続きで、そのまとめ備忘録です。

○まず事案概要です。
・Xは工場抵当法(以下「法」という。)1条にいう工場に属する建物(本件建物)につき順位1番の根抵当権を設定していたが、この設定登記について法3条に規定する目録(以下「3条目録」という。)は提出されていなかった
・Yは後順位の抵当権者であるが、その抵当権設定登記については3条目録が提出され、本件物件(ミキサー、集塵機、ベルトコンベアー、各種計量器等8点)が記載され、本件物件は、生コンクリートを製造するバッチャープラントを組成するもの
・その後、本件物件を含む本件建物等について競売手続が開始され、執行裁判所は、Yの抵当権については3条目録が提出されていたことから、本件物件の売却代金に相当する額をXに優先してYに配当する旨の配当表を作成
・Xは、本件建物について設定したXの根抵当権の効力は本件物件にも及んでいるから、Xは本件物件の売却代金につき、Yに優先して配当を受けることができると主張して、配当異議の申出をし、配当表の変更を求めた


○これに対し、一審平成3年1月21日大分地裁中津支部判決(判タ786号203頁)は、Xの根抵当権については3条目録が提出されていなかったから、本件物件の売却代金につきXはYに優先して配当を受けることができないとして、Xの請求を棄却しましたが、原審平成3年8月8日福岡高裁判決(判タ786号199頁)は、Xの主張を認め、一審判決を取り消してその請求を認容しました。Yが上告して、平成6年7月4日最高裁判決は、原判決を破棄して自判し、Xの控訴を棄却したものです。

○工場の所有者が工場に属する土地又は建物の上に設定した抵当権は、その土地又は建物に付加してこれと一体を成した物及びその土地又は建物に備え付けた機械、器具その他工場の用に供する物(以下、後者を「供用物件」といいます)に及びます(法2条参照)。
工場抵当法第2条
工場ノ所有者カ工場ニ続スル土地ノ上ニ設定シタル抵当権ハ建物ヲ除クノ外其ノ土地ニ附加シテ之ト一体ヲ成シタル物及其ノ土地ニ備附ケタル機械、器具其ノ他工場ノ用ニ供スル物ニ及フ


○法3条1項は、工場の所有者が右土地又は建物につき抵当権設定の登記を申請する場合には、供用物件につき目録(3条目録)を提出すべき旨を規定し、同条2項の準用する法35条(現在は、不動産登記法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律により平成16年改正不動産登記法)によれば、この目録は登記簿の一部とみなされ、その記載は登記とみなされています。
工場抵当法第3条
工場ノ所有者カ工場ニ属スル土地又ハ建物ニ付抵当権ヲ設定スル場合ニ於テハ不動産登記法(平成16年法律第123号)第59条各号、第83条第1項各号並ニ第88条第1項各号及第2項各号ニ掲ゲタル事項ノ外其ノ土地又ハ建物ニ備付ケタル機械、器具其ノ他工場ノ用ニ供スル物ニシテ前条ノ規定ニ依リ抵当権ノ目的タルモノヲ抵当権ノ登記ノ登記事項トス


○3条目録の記載の意味については、通説は、3条目録の記載を対抗要件と解し、目録に記載されない物についての抵当権は第三者に対抗することができないとし(鈴木禄弥・物権法講義〔改訂版〕180頁、川井健・担保物権法275頁、近江幸治・担保物権法〔新版〕242頁、道垣内弘人・担保物権法216頁など)、登記実務も同様でした(昭和34年11月20日民事甲第2537号法務省民事局長回答)。

○対抗要件否定説を説く有力な学説もあったそうですが(我妻・新訂担保物権法569頁、柚木「工場抵当と機械器具の目録」金法400号31頁など)、平成6年7月4日最高裁判決は、「右各条項の規定するところに照らせば、工場抵当権者が供用物件につき第三者に対してその抵当権の効力を対抗するには、3条目録に右物件が記載されていることを要するもの、言い換えれば、3条目録の記載は第三者に対する対抗要件であると解するのが相当である。」として、3条目録の記載が対抗要件である趣旨を明示しました。

以上:1,680文字

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