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隣の土地と自分の土地の公図地番取違いの場合の地番訂正方法-関係判例3

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平成27年 8月 9日(日):初稿
○「隣の土地と自分の土地の公図地番取違いの場合の地番訂正方法-関係判例2」の続きで、今回は、公図(土地台帳附属地図)訂正申出手続協力を求める請求が棄却された昭和49年2月13日東京地裁判決(判例時報752号64頁)を紹介します。

○公図上では乙所有とされている土地について、甲が乙に対し、その土地が甲所有であると主張し、乙を被告として、その土地の所有権確認に加えて、その土地の地番を甲所有土地の地番に訂正する申請手続に協力せよとの訴えを提起しました。これに対してた昭和49年2月13日東京地裁判決は、その土地の所有権が甲にあることは認めました。

○しかし、公図訂正協力請求については、所有者その他利害関係人のする公図訂正の申出は、登記官の職権行使を促す性格のものであり、この申出をする者について、双方申請主義による取扱がなされているわけではなく、利害関係人の一方が相手方に対して、訂正に関する登記請求権類似の請求権を持つものではないとして訴えを退けました。


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主   文
(一) 別紙第二物件目録記載の土地部分が、別紙第一物件目録(一)表示の土地の一部で原告の所有地であることを確認する。
(二) 原告のその余の請求を棄却する。
(三) 訴訟費用はこれを二分し、その一を原告の、その一を被告の負担とする。

事   実
第一 当事者の求めた裁判

(原告)
(一) 主文第一項と同じ趣旨。
(二) 被告Aは原告に対し、東京法務局備付旧土地台帳附属地図中の別紙第一物件目録(二)記載の土地に該当する部分の内、別紙図面イロハニイで囲まれた土地部分(15・024平方メートル)の地番の記号342を345に訂正する申出手続をせよ。
(三) 被告Aは原告に対し、東京法務局備付旧土地台帳附属地図中の別紙第一物件目録(三)記載の土地に該当する部分の内、別紙図面ハニホヘハで囲まれた土地部分(3・756平方メートル)の地番の記号341~1を345に訂正する申出手続をせよ。
(四) 被告Bは原告に対し、東京法務局備付旧土地台帳附属地図中の別紙第一物件目録(四)記載の土地に該当する部分の内、別紙図面ホヘトチホで囲まれた部分(9・39平方メートル)の地番の記号341-2を345に訂正する申出手続をせよ。
(五) 訴訟費用は被告の負担とする。

(被告ら)
(一) 原告の請求を棄却する。
(二) 訴訟費用は原告の負担とする。

第二 当事者の主張
一 原告の請求原因

1 別紙第一物件目録(一)表示の土地(以下「土地(一)」という。)は、原告の所有地である。
 同目録(二)表示の土地(以下「土地(二)」という。)及び同(三)表示の土地(以下「土地(三)」という。)は、いずれも被告Aの所有に属している。
 同目録(四)表示の土地(以下「土地(四)」という。)は、被告Bの所有に属している。

2 別紙第二目録に記載した土地部分(以下「本件係争地」という。)は、土地(一)の一部であって、原告の所有地である。

3 ところが、被告Aは、本件係争地中別紙第二物件目録中の図面イロハニイを順次結んだ線で囲んだ部分(以下「甲部分」という。)は土地(二)の一部であり、同図面ハニホヘハを順次結んだ線で囲んだ部分(以下「乙部分」という。)は土地(三)の一部であって、いずれも同被告の所有地であると主張している。
 また、被告Bは、本件係争地中同図面ホヘトチホを順次結んだ線で囲んだ部分(以下「丙部分」という。)は土地(四)の一部であって、同被告の所有地であると主張している。

4 しかし、本件係争地はすべて右2主張のように原告の所有地であるから、その旨の確認を求め、及びかかる紛争の原因となった関係公図(旧土地台帳附属地図)中の記載の誤りを訂正するため被告らが関係登記所に所要の申出手続をすることを求めて、本件訴えに及んだ。

二 請求原因に対する被告の答弁
1 請求原因1の事実はすべて認める。
2 同2の事実は否認する。
3 同3の事実は認める。
4 同4は争う。

三 本件紛争地の帰属に関する当事者双方の主

   (中略)


理   由
一 被告らの本件係争地の売買取得の成否

 まず、被告Aが昭和43年4月16日別紙第一物件目録記載(二)から(四)までのように表示される土地(すなわち、土地(二)ないし(四))を売買により取得することにより、本件係争地の所有権をも取得するようになったか否かを検討する。

 土地(二)ないし(四)までがもと原告の所有であったこと(そのうち土地(三)及び土地(四)は原告所有の一筆の土地から原告が分筆)、昭和25年8月原告がこれを訴外鈴木あさ子に譲渡し、以来訴外森下トク、同大塚庄蔵を経由して、昭和43年4月被告Aがこれを売買により取得したことは当事者間に争いがない。

 そして、《証拠略》を総合すると、本件係争地は、別紙第二物件目録中の図面記載のように、関係公図上本件土地(一)(原告の所有であることは当事者間に争いがない。)に相当する部分とつながって港区南青山七丁目347番、348番等先の公道とその奥の同337番等の土地(もと原告所有)とを結ぶほぼ一直線の道路の状況をなしていること、及びこのような状況は原告が土地(二)ないし(四)を訴外鈴木あさ子に譲渡した頃も同様であり、現在までさしたる変化はなかったことが認められる。

 また、《証拠略》によると、原告は昭和22年2月訴外株式会社丸ビル扶桑商会から本件土地(一)、土地(二)及び前記笄町182番地の六(旧表示)の土地を買い入れたほか、笄町右182番地の六の土地の近辺に数筆の土地を所有していたこと、並びに当時道路にすぎなかった土地(一)を取得したのは、その余の自己所有地から前記公道に至る通路にするつもりであったことが認められる。

 そして、右認定事実に《証拠略》を加えて総合考察すると、原告は本件係争地部分は原告所有名義の土地(一)の一部であると考えており、昭和25年土地(二)ないし(四)を訴外鈴木あさ子に売り渡すにあたり道路部分であった本件係争地を含むものとして譲渡したのではなく、その西側の建物敷地部分を実測して登記簿表示分だけ譲渡したものであること、被告ら以外のその後の承継人(被告Aの直接の前主である大塚庄蔵をも含む。)らも本件係争地の所有権を取得したものとは考えていなかったこと、右大塚庄蔵が昭和43年に土地(二)ないし(四)ほか一筆を被告Aに売り渡すにあたっても本件係争地が売買目的に含まれるものとして処分したものではなかったことが認められ、この認定を左右するに足る証拠はない。そうだとすると、本件係争地は、いまだ処分されることなく原告の所有地として残されているものといわなければならない。

 もっとも、関係公図(旧土地台帳附属地図)においては土地(二)から土地(四)までの位置、形状がそれぞれ本件係争地に相当する部分をその中にとり込んでいる記載になっていることは当事者間に争いがなく、また、《証拠略》を総合すると、被告は昭和43年訴外大塚庄蔵から本件土地(二)ないし(三)ほか一筆を買うにあたり、仲介者から関係公図の写しを見せられ、土地(二)ないし(四)は本件係争地を含んでいるものと考えていたことがうかがわれる。

 そして、公図(土地台帳附属地図)は、後記四2に述べるように、土地台帳制度の廃止以後も現行不動産登記法第17条の規定による地図が整備されるまでの間なお登記所に備えられて一般の閲覧に供する取扱いがなされている公的資料であり、現実の不動産取引において目的物の位置、範囲を知るための有力な資料として利用されているものではある(当庁昭和46年(ワ)第7、818号事件、昭和48年5月30日判決参照)。

 しかし、その記載自体は権利の外延(土地の各筆の区画)を示すにつきいわゆる公信力を有するものでないことはもちろん、その沿革からして必ずしも精度の高いものではないといわれ、ことに本件土地(一)から土地(四)までの附近一帯の各土地については、前掲各証拠及び弁論の全趣旨によると、関係公図におけるそれらの形状、面積の具合には実地に照らしてかなり不正確なものがあることがうかがわれる。また、本件係争部分を除いた場合の土地(二)ないし(四)の実面積が登記簿表示より少なくなるということを認めるに足る証拠もない。

 そうだとすると、被告Aが土地(二)ないし(四)(ただし、当時(三)と(四)とは一筆)を取得し、関係公図上のそれらの形状が被告所論のとおりであるとしても、それだけで前認定の原告の処分保留にもかかわらず同被告が本件係争地(現地)を取得したということはできない。したがってまた、その後の土地(四)の分筆譲渡により、被告松苗が本件係争地中の丙部分を取得したことにもならない。

 なお、被告主張の通行料の支払の点は、《証拠略》によると、右被告主張のようなことが認め得られるが、これをもって本件係争地の所有関係を左右するに足る資料とすることはできない。

二 被告らの本件係争地の時効取得の成否
 被告らは、本件係争地が原告の所有に残されていたとしても、時効によりこれを取得していると主張する。
 しかし、被告Aが本件土地(二)ないし(四)を取得したのは昭和43年であるところ、これらの土地の前主たちが本件係争地を所有の意思をもって占有していたことを認めるに足る証拠はなんらないので、右被告らの抗弁は採用することができない。

三 本件係争地の帰属地番
 本件係争地が以上のように原告の所有に属するとしても、それが原告所有名義の土地(一)の一部となるかどうかは、なお別個の問題である。本件係争地中の甲、乙、丙の各部分は、土地(二)、土地(三)又は土地(四)のそれぞれ一部であって原告が売り残したものであるとの理解を容れる余地なきにしも非ずであるからである。

 しかし、前記原告主張事実の認定に供した各証拠を総合すると、(イ) 本件係争地の部分はかなり古くから道路になっており(《証拠略》によれば、明治37、8年頃からの道路であるという。)、しかも道路である現在の公図上の土地(一)部分と一体となった状況を呈していること、(ロ) 土地(二)ないし(四)の実面積は本件係争地を含めなくても登記簿表示のものがあること(反証はない。)、(ハ) この近辺の土地においては各筆の面積等の実際と公図記載の具合とのズレが少なくなく、特に土地(一)については実面積の不足が著しいこと、(二)昭和25年当時においては、土地(一)、土地(二)及び旧表示笄町182番地の六の各土地はすべて同一人(原告)に属しており、その者の本件係争地は通路である土地(一)の一部であるという理解のもとに右土地(二)や旧表示笄町182番地の六の土地に処分が加えられたという経緯があったことが認められ、これらの事実によると、本件係争地は別紙第一物件目録記載(一)のように表示される土地(すなわち、土地(一))の一部であるとするのが相当である。

四 原告の請求の当否
1 以上の次第で、原告の請求中被告らとの間で本件係争地の所有権の確認等を求める部分は理由がある。なお、本件の場合にあっては、弁論の全趣旨からすると、係争地が特定の原告所有名義地の一部であることの確認を求める部分も当事者間の権利関係の存否確定の性質をももつ(公図訂正の原因確定にもつながる)ものであるものと解される。

2 次に、原告は、被告らがそれぞれ旧土地台帳附属地図(前記のいわゆる公図)の記載について本件係争地中の各関係部分を原告所有名義の土地(一)の区画に入れるための所要の訂正をする申出手続を所轄登記所に対してすべきことを請求している。しかし、右請求は、次の理由で失当である。
 すなわち、土地台帳附属地図(すなわち、旧土地台帳法の附属法令である旧土地台帳法施行細則第二条の規定による地図)は、昭和35年法律第14号による土地台帳制度の廃止後も、現行不動産登記法第17条の規定による地図が整備されるまでの間なお従来の取扱い(昭和29年6月30日民事(甲)第1、321号・法務省民事局長通達・土地台帳事務取扱要領等による。)のとおり、所轄登記所に備えられて閲覧に供されており、その記載の誤りの訂正手続についても、従前のとおり、所有者その他の利害関係人は訂正の申出をすることができ、登記所において訂正を相当と認めるときはその訂正を行なうという取扱いがひき続いて維持されている。

 しかし、この所有者等のする申出はいわば訂正についての登記官の職権行使をうながすという性格のものであると解され、右訂正の申出をすべき者についていわゆる双方申請主義による取扱いがなされているわけではない(訂正を相当とする十分な資料があれば、接続地所有者の承諾がなくても訂正がなされることがある。)。もっとも、相手方が申出手続に加わっていれば訂正が円滑に行なわれるのが実際であろうが、利害関係人の一方が相手方に対して訂正に関して登記請求権類似の請求権をもつものではない。したがって、原告が被告らに対し前記旧土地台帳附属地図の訂正申出手続をすることを求める権利があるということはできない。

五 以上の次第で、原告の請求中本件係争地の帰属地番と所有権の確認を求める点を認容し、土地台帳附属地図の訂正を求める点は棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第92条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 内田恒久)
以上:5,530文字

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