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不動産登記のない土地を時効取得で登記する方法如何

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平成23年11月29日(火):初稿
○久しぶりに不動産登記の話しです。
 ちと難しい話になりますが、平成23年11月28日判例勉強会で私がレポートした平成23年6月3日最高裁判決の事案紹介を兼ねて不動産登記について説明します。

 不動産登記の解説は、法務省HP不動産登記のABCが判りやすいようで、以下、そのまとめを兼ねた備忘録です。
 不動産登記には、先ず表題登記(平成16年6月18日に不動産登記法改正により、表示登記から表題登記と名称が変わりました。)があり、これは土地・建物の現在の状況を明確にするための登記で、例えば土地の場合ですと、地番、地目(用途)とか面積等、建物ですと、所在、種類、構造、面積等、権利の登記の前提として行う登記のことで、表題部に記載されます。

 次に権利登記があり、これは権利の変動つまり売買、相続、贈与によって権利の移動があったときとか、融資の担保としての抵当権設定等の登記のことで、この2種の不動産登記制度の目的は、国民の基本的財産である不動産についての、現在の状況と、権利の変動を国が公示して、不動産取引の安全を図ることにあります。

○ところが、現実には、特に田舎の土地などには、この表題登記も権利登記もなされていない土地が結構あります。平成23年6月3日最高裁判決の事案は、宗教法人Aが、20年以上自分の土地として占有を継続して時効取得した土地について、国に所有権確認の訴えを提起したものです。この土地は,明治時代初めには官有地に区分されていましたが,明治8年に民有地に編入され地目及び地積の登記記録はされているが,表題部所有者の登記も所有権の登記もなく,所有者が不明の状態になっていたものです。

○この訴えに対し、国は、本件土地は過去に所有者が存在していたことが推認される民有地であって,Aの時効取得が認められたとしても国が本件土地の所有権を失う立場にはないから,Aが国との間で本件土地の所有権を確認する利益はなく,本件訴えは不適法であると主張し、一審はAの主張を認めるも、二審東京高裁は国の主張を認め、国はこの土地を所有していないと言うのだから、この土地の所有権争いはなく、訴えの利益は存在しないとして却下しました。

○これに対しAが上告して、平成23年6月3日最高裁判決となりましたが、その結果は、
①本件土地が国の所有に属していないこと自認し、Aが主張する取得時効の起算点よりも前に本件土地の所有権を失っている,
②Aにおいて,本件土地について保存登記の申請をする手続を試みた事情もうかがわれないことといった本件の事情の下では,本件土地について表題部所有者の登記も所有権の登記もなく,所有者が不明であったとしても,本件土地は民法239条2項にいう「所有者のない不動産」として国庫に帰属していたということはできず,国に対し所有権確認を求める本件訴えは確認の利益を欠く
と判断し,原審東京高裁の判断を是認しました。

○国が所有権を争っていないのにAがわざわざ国に所有権確認の訴えを提起して最高裁まで争った理由は、不動産登記法第74条2号「所有権を有することが確定判決によって確認された者」は、所有権保存登記が出来るのと規定を利用して、国に対する所有権確認の確定判決によってこの土地の所有権保存登記をしようとしたからです。この方法は保存登記直接型と言われています。

○しかし最高裁はAのもくろみを拒否しました。その理由の一つは、前記②に記載された「Aにおいて,本件土地について保存登記の申請をする手続を試みた事情もうかがわれない」ことがあります。所有者不明で表題部所有者の登記も所有権の登記もない土地を時効取得した者が所有名義を取得する方法としては,時効取得者が,まず,不動産登記法27条3号に基づいて自己を所有者とする表示に関する登記を申請し,次に表題部所有者としての資格に基づいて,同法74条1項1号により所有権保存登記を取得する方法が考えられ、これは表示登記介在型と呼ばれています。

○この表示登記介在型によって表題登記申請をするには、自分が時効取得者であることを証明する証拠資料(法18条,不動産登記令3条13号,別表4項添付情報ハ,12項添付情報ハ)を添付し、この登記申請を受けた登記官は、実地調査等をして申請者が時効取得者であると判断すれば登記を認め、判断できなければ申請を却下します(同法25条)。登記官が誤って申請を却下した場合の救済手段としては、この却下処分を行政処分として審査請求・抗告訴訟が出来るはずです。

○Aは、上記のような登記申請をすることなく、いきなり国に所有権確認の訴えを提起しても、国が所有権を否認している以上は、保存登記をするための確認判決は出さないという最高裁の立場が明らかになりました。Aとしては、土地の登記を取得するためには表示登記介在型による表題登記申請をするしかありません。
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