平成23年 4月 1日(金):初稿 |
○大震災後の津波等で行方不明になった場合の死亡認定についての重要報道例備忘録です。 (2011年3月24日08時54分 読売新聞) 遺体未発見でも死亡保険金…被災者に特例措置 生命保険各社は、東日本巨大地震で被災して行方がわからず、死亡したとみられる場合、死亡保険金を支払う方針を固めた。 行方不明者は1万6000人超に上っており、遺体が見つからないケースも予想されるためだ。生保業界は、死亡診断書などがなくても保険金の支払いに応じる異例の措置をとり、残された被災者らの生活再建を支援する考えだ。 具体的には、地震や津波での被災が確実視され、公的機関が事実上、死亡を認定する証明書があれば、戸籍の抹消を待たずに死亡保険金を支払う方針だ。死亡保険金の支払いには、通常、病院で発行される死亡診断書などの書類が必要になる。しかし、生保各社は被災者の事情を考慮する必要があると判断した。 1995年の阪神大震災では、生保会社による保険金の支払総額は483億円だったが、今回はこれを大幅に上回り、過去最大規模になる見通しだ。 また、生命保険協会は、契約者の名前や生年月日などの個人情報がわかれば加入の有無を照会できる「被災者契約照会制度(仮称)」を4月にも創設する。 ○東北・関東大震災では多くの行方不明者が出ていますが、この行方不明者の死亡認定は民法上は、失踪宣告制度があり、その条文は以下の通りです。今回の大地震は、「死亡の原因となるべき危難」に該当することは明白ですから、平成23年3月11日から1年後には失踪宣告により死亡したものと見なされることは明白です。 第30条(失踪の宣告) 不在者の生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。 2 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後1年間明らかでないときも、前項と同様とする。 第31条(失踪の宣告の効力) 前条第1項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第2項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。 ○しかし、一家の大黒柱が行方不明になり一家の収入が途絶えた場合に生命保険金を受け取るのが1年後では、遺族の生活維持には、到底間に合いません。そこで更に早く死亡が認定される法律制度としては、戸籍法による認定死亡があります。これに関する戸籍法の規定は以下の通りです。 戸籍法第89条 水難、火災その他の事変によつて死亡した者がある場合には、その取調をした官庁又は公署は、死亡地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。但し、外国又は法務省令で定める地域で死亡があつたときは、死亡者の本籍地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。 同第91条 前2条に規定する報告書には、第86条第2項に掲げる事項を記載しなければならない。 同第86条 死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知つた日から7日以内(国外で死亡があつたときは、その事実を知つた日から3箇月以内)に、これをしなければならない。 2 届書には、次の事項を記載し、診断書又は検案書を添附しなければならない。 1.死亡の年月日時分及び場所 2.その他法務省令で定める事項 3 やむを得ない事由によつて診断書又は検案書を得ることができないときは、死亡の事実を証すべき書面を以てこれに代えることができる。この場合には、届書に診断書又は検案書を得ることができない事由を記載しなければならない。 ○この戸籍法89条の死亡報告による死亡届では、おそらく行方不明届出により捜索活動を行った警察署が作成する死亡報告書を添付して行うと思われますが、問題は実務上警察がどの程度の期間で死亡報告書を作成してくれるかです。前述の報道では、保険会社は、「公的機関が事実上、死亡を認定する証明書があれば、戸籍の抹消を待たずに死亡保険金を支払う方針だ。」とのことですが、この公的機関が事実上、死亡を認定する証明書が何を指すのかであり、これが、戸籍法89条で要求されるその取調をした官庁又は公署は、死亡地の市町村長に死亡の報告であるとすれば、従前と変わらず何ら特例には当たりません。この公的機関が事実上、死亡を認定する証明書の要件等についての調査が必要です。 以上:1,821文字
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