平成21年 4月10日(金):初稿 |
○「ある遺言無効確認事件の顛末-筆跡鑑定あれこれ1」の続きです。 被告代理人の私は、遺言者祖父の生前残したメモ等争いのない文字と遺言書に記載された文字との「筆跡は同じ」とのA鑑定で楽勝と高をくくっていたら、原告側から「筆跡は異なる」との分厚いB鑑定が出され,加えて裁判所依頼による公平な立場の「筆跡は異なる」とのC鑑定でピンチに立ちました。 ○そこで鑑定実績豊富との触れ込みのD鑑定士に大枚をはたいて鑑定を依頼し、待つこと2ヶ月、ピンチを一気に立て直すはずの鑑定書が届けられました。何しろ大枚をはたいたものですから、分厚い鑑定書で、「筆跡は異なる」とのB・C鑑定をシッチャカメッチャカこき下ろし、「筆跡は同じ」との結論を確信させる大作であろうと期待していました。 ○ところが、出てきたD鑑定書は2分冊に分かれていましたが、その量と言ったらB鑑定書の3分の1にも満たない小冊子みたいなもので、結論に僅かの理由が書いてあるだけで、一見したときは、なんだこれは!、はたいた大枚返してくれ!と叫びたくなるような代物でした。 ○私がネットで調べてその謳い文句に惹かれてお客様に紹介し、その大枚の鑑定料は勿論お客様が出したものであり、こんな代物ではお客様に申し訳がないと、身が縮む思いで、お客様にD鑑定書を渡しました。お客様は優しい方で、貧弱なD鑑定書を見ても、紹介した私には恨みがましいことは一切言わず、兎に角「筆跡は同じ」との結論に喜び、「先生、何とか、これで劣勢を挽回して下さい」と私を激励してくれました。 ○専門家による鑑定は、「筆跡は同じ」とのA・D鑑定、「筆跡は異なる」とのB・C鑑定の2部ずつに分かれ、数だけは2対2の同数になりましたが,何しろ、裁判所選任の公平な立場のC鑑定が一番信用力があるのではと危惧した私は、この4つの鑑定書を綿密に分析して、B・C鑑定の矛盾点を浮き彫りにしてA・D鑑定の合理性を強調する必要を感じました。 ○そこで思いついたので、A乃至D鑑定内容について、論点毎に整理して一覧図表化して、その違いを明確にすることでした。その論点としては、先ず結論構成、次に結論に至る理由概観、そして各比較対照した遺言書と生前メモ等遺言者文字に争いのない文字毎にその異同の評価、最終的に鑑定結論ポイントとしました。 ○その表の作成は、全部重ねると厚さ10数センチにも及ぶ4つの鑑定書を熟読・精査する必要があり、且つ、分析するためには鑑定専門用語の理解等鑑定についての専門知識も必要になります。 作成した鑑定比較表は、データベースソフト桐で作成し、A3版用紙2枚に及ぶ以下のようなものでしたが、大変な労力を要しました(^^;)。 以上:1,104文字
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