平成21年 1月17日(土):初稿 |
○「初めての公判整理手続事件-苦労を報う被告人の言葉」に「裁判員制度での法廷供述中心裁判は現行刑訴法の本来の精神を具現するものであり、私もせめて20年若かったら取り組みましたが、刑事事件はこの辺で打ち止めとして民事事件での顧客満足を追及していきたいと思っております。」と記載したとおり、刑事事件は引退を宣言していますが、たまたま未成年者と性行為或いは性行為類似行為をした場合の犯罪について質問を受けましたので、備忘録として整理します。 ○先ず刑法の規定は以下の通りです。 第176条(強制わいせつ) 13歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。 第177条(強姦) 暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、3年以上の有期懲役に処する。13歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。 (注)平成29年6月16日刑法改正で以下の通り、第177条は次のとおり変更になっています。 第177条(強制性交) 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。 対象が女子だけでなく「者」となり男子も含み、姦淫は、「性交、肛門性交又は口腔性交」となりました ○上記の通り(平成29年の刑法改正以前)、 13歳未満の男女に対しわいせつな行為をすると6月以上10年以下の懲役、 13歳未満の女子を姦淫すると3年以上の有期懲役 となります。 13歳は中学1年ですが、原則誕生日を経過しない中学1年生以下の男女に同意を得てわいせつな行為(性行為類似行為)をすると6月以上10年以下の懲役、誕生日を経過しない中学1年生以下の女子と性行為をすると強姦罪として3年以上の有期懲役と言う重罪になります。 ○今時、中学1年にもなると生理も始まり殆ど大人と変わらない身体に成長する子供もいますが、たとえ相互に真摯に愛し合い将来結婚の約束をして性行為をした場合も女子が誕生日を経過していない場合強姦罪(改正後は強制性交)の重罪になります。 ○相当以前ですが,国選刑事事件で家出してきた小学6年生の女子と同棲し将来結婚の約束をして性関係を結んでいた30代前半の会社員が強姦罪で逮捕された事案を担当したことがあります。その女子は母と2人暮らしでしたが母と合わず家出を繰り返したまたまその会社員と知り合い相性が良く相互に愛し合って結婚の約束をして同棲した事案でしたが、同棲に気付いた母が告訴して逮捕されたものです。 ○逮捕によって会社員は警察署に勾留され、小学生は児童施設に収容され離れ離れにされ、国選弁護人として面会した私に会社員は小学生とは真剣に愛し合っているのにどうして逮捕されなければならないのかと憤懣を述べ、小学生かれ受け取った手紙を示し、その内容は本当に真剣に愛し合っていることは良く判るものでした。 ○面会当初は会社員は小学生と同棲し性関係を結んだことについて、一体愛し合っているもの同士が結ばれて何が悪いのかと、殆ど罪の意識が感じられずその罪を自覚して貰うのに相当苦労した記憶がありますが、最終的には何とか罪の意識を感じて貰い、弁護人としては兎に角本人同士が真剣に愛し合っていることを考慮頂きたいと訴え、懲役2年の求刑に対し執行猶予4年がつき釈放されました。当時は強姦罪の最低刑が懲役2年以上で何とか執行猶予がつきましたが、最近改正され最低刑3年以上になりましたので、如何に愛し合っていても小学生と性関係を結んだら強姦罪として実刑を覚悟すべきでしょう。 ○なお、刑法第180条(親告罪)「第176条から第178条までの罪及びこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。」との規定により小学生の親権者からの告訴があって初めて捜査が開始されますから、親の了解を取って本人同士の合意での性関係であれば逮捕されることはありませんでした。 (注)平成29年刑法改正後は、親告罪の規定が削除され、告訴がなくても公訴提起されますので、捜査の対象にもなります。 以上:1,748文字
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