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共有不動産の分割-全面的価格賠償の方法2

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平成20年12月24日(水):初稿
「共有不動産の分割-全面的価格賠償の方法1」の続きです。
各持分3分の1でのA、B、C3名の共有土地(100坪、甲地)の賃貸についてAが自ら社長となって乙株式会社を設立して賃貸ビルと建築して、乙株式会社とA・B・C3名が建物所有を目的とした甲土地賃貸借契約を締結し、地代としてA・B・C各100万円ずつの300万円を甲株式会社が支払っているところ、不動産不況のため乙株式会社所有ビルのテナントが減り、賃料収入が減ったので300万円の地代を支払うのが困難になりAは地代の値下げをしたいと思っていますが、Cがこれに応じない場合、Cの持分をAが強制的に買い取る方法がないものか検討します。

○共有物分割に関する民法の規定は次の通りです。
第258条(裁判による共有物の分割)
 共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2 前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる


○共有物分割の方法は次の3通りあります。
①現物分割-これが大原則で100坪の甲土地を33と3分の1坪ずつに分けます。
②代金分割-共有物を分割して代金を分割します。
③価格賠償-B・Cの持分をAが買い取りAの単独所有とします。

○共有物分割の方法について当事者間で協議が整わない場合、裁判所に分割請求をすることが出来ます。裁判所は現物分割を原則としつつ、不動産の状況によって現物分割により価値が下がる場合など、競売にすることが出来ますが、どのような分割方法を採るかは裁判所の自由裁量です。条文には③価格賠償の方法は記載されていませんので、一見、AがB・Cの持分を強制的に買い取る分割方法は取れないようにも見えます。

○しかし平成8年10月31日最高裁判決(判時1592号59頁)は、いわゆる全面的価格賠償の方法により共有物を分割することが許される場合があることを認め、その理由を一般論として次のように述べています。
1 民法258条2項は、共有物分割の方法として、現物分割を原則としつつも、共有物を現物で分割することが不可能であるか又は現物で分割することによって著しく価格を損じるおそれがあるときは、競売による分割をすることができる旨を規定している。

 ところで、この裁判所による共有物の分割は、民事訴訟上の訴えの手続により審理判断するものとされているが、その本質は非訟事件であって、法は、裁判所の適切な裁量権の行使により、共有者間の公平を保ちつつ、当該共有物の性質や共有状態の実状に合った妥当な分割が実現されることを期したものと考えられる。したがって、右の規定は、すべての場合にその分割方法を現物分割又は競売による分割のみに限定し、他の分割方法を一切否定した趣旨のものとは解されない。

 そうすると、共有物分割の申立てを受けた裁判所としては、現物分割をするに当たって、持分の価格以上の現物を取得する共有者に当該超過分の対価を支払わせ、過不足の調整をすることができる(最高裁昭和59年(オ)第805号 同62年4月22日大法廷判決・民集41巻3号408頁参照)のみならず、当該共有物の性質及び形状、共有関係の発生原因、共有者の数及び持分の割合、共有物の利用状況及び分割された場合の経済的価値、分割方法についての共有者の希望及びその合理性の有無等の事情を総合的に考慮し、当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存するときは、共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法、すなわち全面的価格賠償の方法による分割をすることも許されるものというべきである。

以上:1,666文字

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