平成20年 8月 3日(日):初稿 |
○最近、立て続けに相談があった男女関係トラブルに基づくストーカー行為について、これを規制する「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(以後、ストーカー規制法と略します)に関する備忘録です。 先ずは条文です。 第1条(目的) この法律は、ストーカー行為を処罰する等ストーカー行為等について必要な規制を行うとともに、その相手方に対する援助の措置等を定めることにより、個人の身体、自由及び名誉に対する危害の発生を防止し、あわせて国民の生活の安全と平穏に資することを目的とする。 第2条(定義) この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。 ○「つきまとい等」の言動は、世上良くあることですが、ストーカー規制法で処罰の対象とする行為は、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」を有するものに限定されます。典型的なものは、好きになった女性がなかなか相手にしてくれないのに諦めず、その女性に対し交際を迫って追い回し、後をつけ、待ち伏せするなどしてつきまとう行為です。 ○勿論、女性と男性が逆の場合もあります。昔、歌舞伎役者を好きになった女性が、この歌舞伎役者を追い回し、その程度が余りにひどいため歌舞伎役者が一定範囲に近づくことを禁止する仮処分申請を出して認められ話題になったことがあるように記憶していますが、このケースも正にストーカー行為に該当するでしょう。 ○世上良くあるケースとしては、男女関係にあったカップルの一方が、他方から一方的に解消を宣言されて、これに納得できない相手方が、解消は認めるが、その精神的苦痛に対する慰謝料を支払えとつきまとう行為があります。これもストーカー行為に該当すると思われます。「それが満たされなかったことに対する怨恨の感情」があるからです。 ○更に世上良くあるケースとしては、夫婦の一方と男女関係になった相手方に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として慰謝料請求をしてつきまとう行為があります。私個人としてはこのようなケースも正にストーカー行為と評価すべきと思いますが、おそらくこのケースは、ストーカー規制法におけるストーカー行為には該当しないと思われます。ストーカー規制法は刑罰法規を含むものであり、その構成要件は厳格に解釈しなければならないからです。 以上:1,093文字
|