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長男・長女監護中夫に妻を監護者指定し引渡請求を変更した高裁決定紹介

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令和 3年 5月10日(月):初稿
○「長男・長女監護中夫に妻を監護者と指定し引渡を命じた家裁審判紹介2」の続きで、その抗告審である平成29年3月3日福岡高裁決定(ウエストロージャパン)全文を紹介します。

○妻である相手方が、その夫である抗告人に対し、相手方を両人の子であり未成年者である長男A及び長女Bの監護権者と定めることを求めるとともに、長男A(12歳・小学6年生)及び長女B(5歳)の引渡しを求めたところ、第一審平成28年12月16日福岡家裁審判(ウエストロージャパン)が申立てをいずれも認容しました。

○その理由は、未成年者らの年齢,心情等に鑑みれば,未成年者らにとって,その福祉上,双方の親から大事にされ,愛されていることを実感することが望ましく,母である申立人との継続的な関わりやその愛情を実感することが重要としたもので、極めて妥当な判断でした。

○抗告審も監護者は長男A・長女Bいずれも相手方妻としましたが、引渡請求について、長男に関しては、相手方妻に対して強い拒否反応を示しているのであって,長男の年齢(12歳),心情等を考慮すると,現段階において,抗告人夫に対して長男の引渡しを命じるのは相当ではなく,抗告人が,相手方が長男を引き取ることについて妨害することを禁止するにとどめるのが相当であるとしました。

○抗告人夫は、特に長男が相手方母に対して強い拒否反応を示し、抗告人と一緒の生活を希望していることから、平成29年3月3日福岡高裁決定には納得出来ないとして許可抗告・特別抗告をしていました。しかし、許可抗告については平成29年4月13日福岡高裁、特別抗告については平成29年6月21日最高裁判決でいずれも棄却されて相手方妻の請求が認められました。

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主    文
1 原審判主文第2項中,未成年者Aに関する部分を次のとおり変更する。
 抗告人は,相手方が未成年者Aを引き取ることを妨害してはならない。
2 抗告人のその余の抗告を棄却する。
3 手続費用は,原審,当審とも,抗告人の負担とする。

理    由
第1 抗告の趣旨

1 原審判を取り消す。
2 未成年者A及び未成年者Bの各監護者をいずれも抗告人と定める。

第2 抗告の理由
 別紙「抗告理由書」に記載のとおり。

第3 当裁判所の判断(略語は原審判の表記による。)
1 監護者の指定について

(1) 当裁判所も,未成年者A(長男)及び未成年者B(長女)の監護者をいずれも相手方と定めるのが相当と判断するが,その理由は,次の(2)のとおり判断の補足を加えるほか,原審判の「理由」の「第2 当裁判所の判断」のとおりであるから,これを引用する。
 ただし,原審判14頁21行目から同22行目の「未成年者らの各監護者をいずれも申立人と定めるとともに,相手方に対し,未成年者らを申立人に引き渡すことを命ずるのが相当である。」を「未成年者らの各監護者をいずれも相手方と定めるのが相当である。」と改める。

(2) 判断の補足
 抗告人は,
①未成年者らが,相手方のもとへは行かずに抗告人と生活する意思を表明していること,
②家庭生活を破壊したのは相手方であること,
③未成年者らが現在安定した生活を送っていること
などから,未成年者らの監護者を抗告人と定めるべきであるなどと主張する。

 しかし,原審判も判示するように,長男は,相手方から捨てられたという思いや,抗告人や父方伯父からの偏った情報等によって,相手方に対する拒否反応を示しているのであり,長女は,抗告人や長男の意向に沿って同様の意思を表明しているにすぎず,これらの未成年者らの意思表明を監護者の指定の判断にあたって過度に重視すべきではない。

 また,相手方の不貞行為を含めて抗告人と相手方の婚姻関係破綻の原因が専ら相手方にあることを認めるに足りる証拠はない。
 さらに,原審における家庭裁判所調査官による調査等によれば,抗告人は,将来的には抗告人の母等を含めて,福岡市南区○○a丁目の自宅で生活することを前提に話をしており,未成年者らの生育環境等には特段の問題はないとされていたが,原審判の前後(長女については平成28年11月1日,長男については同年12月26日)に,それぞれ福岡県柳川市にある抗告人の実家に転居したのであって(なお,抗告人の住民票移転は平成29年2月である。甲11),その原因や具体的経緯等は不明であるが,突然の生活環境の変化は未成年者らの心情等に多大な影響を与える可能性がある。

 また,抗告人は,相手方は自分で問題を起こして出て行ったものであり,未成年者らも相手方を嫌っているとして,面会交流には応じない態度をとっている。これらは,抗告人の監護者としての適格性に疑念を生じさせかねないものである。
 したがって,抗告人の上記主張はいずれも採用できない。

2 子の引渡しについて
 以上のとおり,未成年者らの監護者は相手方と定めるべきであり,未成年者らは早急に相手方のもとで監護されるのが相当であるから,長女については直ちに抗告人から相手方に引き渡されるべきである。

 ただし,長男については,上記引用に係る原審判の認定事実のとおり,相手方に対して強い拒否反応を示しているのであって,長男の年齢(12歳),心情等を考慮すると,現段階において,抗告人に対して長男の引渡しを命じるのは相当ではなく,抗告人が,相手方が長男を引き取ることについて妨害することを禁止するにとどめるのが相当である。

3 結論
 よって,未成年者らの監護者を相手方と定めた上で,長男については,相手方が長男を引き取ることの妨害の禁止を,長女については,抗告人に相手方へ長女を引き渡すよう命じるのが相当であるところ,長男についても引渡しを命じた原審判は,その限度で相当でないから,これを変更することとして,主文のとおり決定する。
 福岡高等裁判所第5民事部
 (裁判長裁判官 岸和田羊一 裁判官 岸本寛成 裁判官 小田島靖人)

別紙抗告理由書
1、原審判は、未成年者両名の監護権者をいずれも相手方と定めたが、以下の理由により原審判は変更されるべきである。

2、 抗告の理由
(1) 長男、長女は抗告人と生活する意思であること。
 長男Aは小学校6年生の12才である。この年齢になると、本件のような場合にどちらの親を選ぶのかの意思能力は形成されていると考えられる。昨年12月29日、仮処分決定によって裁判所の執行官が柳川市の抗告人の母の自宅に、長男と長女の引き渡しを求めに来たが、長男は「行かない。」と言って、相手方のところに行くことを拒否した。長男は、「母に捨てられたから」と言っている。

 長女Bは、その意思能力があるとは言えないが、兄と一緒に生活することを強く望んでおり、兄が母親と暮らしたくないと言っている状況の下で長女もその考えを持っている。12月30日、仮処分決定に基づき執行官が長女を連れに来たが、長女も「行かない。」と言って相手方の元に行くのを拒否した。その後、長女に対して執行官が「お母さんが来ているよ。」、「お母さんと少し話したら。」と言われて、長女はためらいながらも車の中にいた相手方と会って、4~5分会話をしたが、会話が終わって祖母の家に戻って来て、相手方と一緒には行かなかった。

(2) 子どもとの生活を含めた家庭生活を破壊したのは、相手方である。
① 2016年1月9日午前2時、相手方は男性を車で送っていて交通事故を起こしている。当時、4才と11才の子どもがいる母親が、深夜に男性を自宅に送って行くこと自体、極めて不自然なことである。これについて、抗告人が相手方に「どうしてそんな深夜に送っていたのか。」と問い詰めたところ、相手方は理由にならない弁解をし始め、弁解が苦しくなって抗告人との離婚を言い出した。両当事者間で離婚の話が出て来たのは、相手方からである。

② その後、3月頃より、相手方は中洲で働くと言って夜8時頃に外出し、金土日と外泊し、朝7時半頃に帰ってくる生活となった。抗告人はこの時期、長男より「相手方に男性がいるようだ」ということを知らされた。長男は、ゲームをするため相手方のスマートフォンを使っていた時に、ラインという通話やメールができるアプリを開き、相手方が男性とつき合っていることを知ったとのことであった。抗告人は相手方の上記①の件や中洲で働き出したことに対して疑念を持っていたが、長男からそのことを聞かされて、相手方に問い質した。相手方は否認するだけであったが、その日以来、相手方は長男に対して暴力をふるうようになった。長男は相手方から、殴ったり、髪の毛を引っ張ったり、蹴ったりといった暴力を受けている。

③ 抗告人は長男より、「ママに言わないで。」と言って、「5月15日に相手方が京都へ行く」ことを教えられた。その日、抗告人は仕事だったため、抗告人の兄に博多駅に確認に行ってもらったところ、相手方は博多駅6時05分発の新幹線に若い男性と2人で乗っていた。
 抗告人の兄は、相手方が男性とタクシーに同乗して博多駅で降りたのを現認し、2人が改札口に向かっていく後ろ姿を写真に収めている。
 審判では、翌日の5月16日夜、抗告人の兄が相手方に暴力を振るったと認定されているが、抗告人の兄は同人が博多駅で見たことを相手方に問いただしたところ、相手方の方から逆上して抗告人の兄に暴行を加えて来たため、抗告人の兄はこれに反撃したものである。相手方は空手初段を持っており、先に暴力行為を行ったものである。抗告人の兄もこの件で警察に被害届を出している。この日以来、相手方は自宅に戻っていないので、翌日より柳川市の抗告人の母親に長男と長女の世話のため抗告人の自宅に来てもらった。抗告人の母親は11月まで抗告人の自宅で子どもらの世話をした。
 相手方は、少なくとも長男は自分の携帯電話を持っていたのに、別居後、未成年者らの安否を気遣う連絡を一度もして来ていない。

④ 以上の通り、この度の相手方との別居や、夫婦の仲が上手くいかなくなったこと、長男の相手方に対する信頼を失ったことは、全て相手方の行動が招いたことである。このような相手方は、未成年の長男、長女の監護者として相応しくないことは明らかである。

(3) 未成年者らの現在の生活について
 長男は、最初は幼稚園の延長でb小学校に通っていたが、同級生よりいじめを受け、3年生の時にc小学校に転校した。しかし、そこでもまたいじめを受け、「学校には行きたくない」と言っていたので、この度、抗告人の実家のある柳川市のd小学校に3学期から転校した。この長男がいじめを受けた原因は、相手方が学校に口を出し過ぎていたことである。b小学校では、相手方は他の保護者と上手く関係を築くことができなかった。c小学校では、相手方は学校に英語の講師として来ていたのであるが、相手方の態度が他の級友たちに疎んじられるようになったことが原因であった。抗告人の母が再婚した抗告人の義父は、d小学校の用務員をしていて、転校手続き等に協力してくれた。

 長女は、柳川市のe保育園に本年1月から通っている。
 長男、長女とも抗告人の母親及び義父とは良い関係を築いており、2人とも懐いていて、相手方の所へは行かないと言っている。

 写真撮影報告書1の写真はいずれも、本年1月9日の昼頃、抗告人代理人が写したものである。撮影場所は、抗告人の柳川市の両親の自宅である。写真の①は、抗告人の母とその夫と2人の未成年者が玄関で一緒に写っている写真である。代理人が①、④及び⑤の写真を撮り終え帰ろうとしている時に、玄関の方を見ると、長女Bが祖母に「抱っこ」とせがむ仕草をして甘えていたので、咄嗟に写したのが②及び③の写真である。この写真から見て明らかなように、未成年者両名は抗告人らと楽しそうに写っている。写真からは、未成年者らが穏やかな日常を送っていることが容易に窺える。現に1月8日午前8時から、未成年者らが生活している地域のいわゆる「△△」(正月の飾り等を燃やして、餅を焼いて食べる)という行事があり、そこに、祖父母に連れられて未成年者両名が来て、餅を食べたりして楽しんでいた。その光景は、祖母の再婚相手にも懐いていて本当の祖父と孫のようであった。上記した通り、祖母の再婚相手は地域のd小学校の用務員をしている現役である。
 このような現状を強制的に変更するのは、未成年者両名の成長発達のために極めて有害であるので、原審判は変更されるべきである。
 以上

 
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