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父と生活する小学6年生について父を監護者と指定した高裁決定紹介

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令和 3年 5月 7日(金):初稿
○「父と生活する小学5年生について母を監護者と指定した家裁審判紹介」の続きで、その抗告審である令和元年6月21日大阪高裁決定(判タ1478号94頁)全文を紹介します。

○相手方母が、別居中の抗告人父に対し、相手方母と抗告人父の子である未成年者ら双子で小学5年生の長男及び長女の監護者の指定及び抗告人宅において抗告人父が監護している長男の引渡し及び審判前の保全処分を申し立て、原審平成31年1月11日大阪家裁審判は相手方の申立てを認容し、これに対し、抗告人が抗告していました。

○抗告審大阪高裁決定は、未成年者(長男)の従前の監護状況、今後の監護態勢、未成年者と当事者双方との心理的結び付き、未成年者の心情等を総合すると、抗告人父において未成年者を監護する方が、未成年者の心理的安定が保たれ、その健全な成長に資し、未成年者の福祉に適うものと認められ、また、未成年者は、相手方に引き取られることを強く拒んでおり、従前と同様、自ら抗告人宅に戻る可能性が高いから、相手方母を未成年者の監護者に指定し、その引渡しを命ずることは相当ではなく、抗告人を未成年者の監護者と指定するのが相当であるとして、原審判中長男に関する部分は相当ではないとして、これを取り消し、長男については抗告人父を監護者と指定し、相手方母の長男の引渡しに係る申立てを却下しました。

○子供の監護者或いは親権者争いは、先に子供を引き取った方が勝つと言われていますが、この事案は正にその典型です。双子の小学生の子供について、女の子は母が、男の子は父が引き取り、母が父も元にいる男の子が心配で、監護者を母にすることとその引渡を求め、原審では認められました。しかし、抗告審では、原審保全処分で、父から母への長男の仮の引渡を求めたのに対し、長男自身が強く抵抗して、引渡が実現できないでいたことも抗告審で父が長男の監護者と指定された大きな理由の一つです。

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主   文
1 原審判中未成年者に関する部分を取り消す。
2 未成年者の監護者を抗告人と指定する。
3 相手方の子の引渡しに係る申立てを却下する。
4 手続費用は原審及び当審とも各自の負担とする。

理   由
第1 抗告の趣旨及び理由

 別紙即時抗告状,平成31年1月28日付け即時抗告状訂正申立書,即時抗告申立理由補充書,平成31年3月29日付け即時抗告状訂正申立書(各写し)のとおり

第2 当裁判所の判断
1 当裁判所は,原審判中未成年者に関する部分を取り消した上,未成年者の監護者を抗告人と指定し,相手方の子の引渡しに係る申立てを却下すべきであると判断する。その理由は,次のとおり補正するほか,原審判の理由説示のとおりであるからこれを引用する。
(1)原審判2頁5行目の「長男」を「未成年者」に改め,以下も同様とし,6行目の「長女」の次に「(二卵性双生児,以下「未成年者ら」という。)」を,「住所地の」の次に「抗告人所有の」をそれぞれ加え、14行目の「もみ合い」から15行目の「殴った」までを「諍いとなり抗告人が相手方を殴るに至った」に改め,22行目の「転居した」の次に「(以下「本件別居」という。)」を加え,23行目の「長男は」を「未成年者(当時小学校4年生,10歳)は,抗告人と会えず,ラグビーにも行けず,友達を家に呼ぶこともできないことが嫌になり」に,25行目の「1月頃」を「1月上旬」にそれぞれ改める。

(2)同3頁5行目の「遅く」を「遅い日もあり」に改め,22行目の「10月生」の次に「の77歳」を加え,末行の「調査官」を「原審の家庭裁判所調査官」に改める。 

(3)同4頁2行目の「午後9時頃であり,」を「概ね午後7時ころであり,帰宅後は未成年者と過ごしているが,帰宅時間が深夜になることもある。」に改め,4行目の「10月生」の次に「の81歳」を加え,6行目の「1月頃」を「1月上旬」に,同12行目の「5年生」を「6年生(11歳)」に,13行目の「,発熱で1日欠席したほか」を「殆ど」に,14行目の「大きな」を「特段の」に,21行目の「長男は,」を「未成年者(当時小学校4年生,10歳)は,原審で実施した」にそれぞれ改め,24行目の末尾に改行して「未成年者は,当審で実施した家庭裁判所調査官の面接(平成31年4月17日)において,抗告人との同居の継続を強く希望し,長女とは自由に会いたいと述べた。

他方,未成年者は,相手方に対する思慕の情はあるものの,相手方と同居すればラグビーができず,友達を自宅に呼んで遊べないことなどを理由として相手方との同居を拒んでいる。また,未成年者は,相手方が未成年者の意見を聞かずに本件別居をしたことや,相手方が未成年者との面会交流の日を間違えたことに失望感や不信感を募らせ,相手方に対する拒否感を強めている。(未成年者が年齢(10歳ないし11歳)相応の理解力,判断力を有しているとみられることに照らすと,上記意向は,真意に基づくものであると認められる。)」を加える。

(4)5頁17行目の「5年生」を「6年生」に,18行目の「発熱で1日欠席したほか」を「殆ど」にそれぞれ改め,21行目から25行目までを削る。

(5)同6頁1行目の「第1回調停期日」の次に「(平成30年4月13日)」を加え,2行目の「長男及び長女」を「未成年者ら」に,19行目の「友達を」を「友達と」にそれぞれ改め,20行目の「傾向にあり,」の次に「前記(2)イ(ウ)(未成年者の心情)のとおり,相手方に不信感等も抱いており,」を加える。

(6)同7頁5行目の「保全処分(」の次に「未成年者の引渡し,」を加え,9行目の「に移行した」を「が再開した」に,11行目の「及び」から14行目までを「を申し立てたが,平成30年11月14日に不成立となり,相手方は,平成31年3月18日,大阪家庭裁判所に抗告人を被告として離婚訴訟を提起した(同裁判所平成31年(家ホ)第102号)。」にそれぞれ改め,同行の末尾に改行して次のとおり加える。
 「原審裁判所は,平成31年1月11日,〔1〕本件各審判事件について,未成年者らの監護者をいずれも相手方と指定し,抗告人に対して未成年者を相手方に引き渡すよう命じる旨の審判をし,〔2〕審判前の保全処分について,抗告人に対して未成年者を仮に相手方に引き渡すよう命じる旨の審判をした(以下「原審保全処分」という。)。

 抗告人は,本件各審判事件及び審判前の保全処分について未成年者に関する部分をいずれも不服として,同年1月28日それぞれ即時抗告した。
 相手方は,同年2月3日,抗告人宅を訪れ,抗告人に対し,原審保全処分に基づいて未成年者の任意の引渡しを求めたが,未成年者が強く抵抗したため未成年者の引渡しを受けられなかった。
 そこで,相手方は,原審裁判所に,同年2月18日,審判前の保全処分(子の引渡)を申し立て(大阪家庭裁判所平成31年(家ロ)第10027号),抗告人に対して未成年者の仮の引渡しを求めている。同事件は,本件(本案)が係属する当裁判所へ送付された。」

(7)同7頁16行目から9頁9行目までを次のとおり改める。
 「(1)上記認定事実によれば,相手方は,本件別居までは未成年者の主たる監護者であり,その監護状況にも特段の問題はなく,今後,未成年者を監護する監護態勢も整っているといえる。

(2)他方,未成年者が抗告人宅に戻った後の,抗告人による未成年者の監護状況にも特段の問題はなく,監護補助者である父方祖母は,77歳と高齢ではあるが健康であって,今後も監護補助を続けられる見込みである。

 なお,未成年者はみずからの意思に基づいて抗告人宅に戻ったのであり,抗告人から不相当な働き掛けがあったことはうかがえないから,抗告人が未成年者の監護を開始したことが違法,不当とはいえない。また,原審がした審判前の保全処分に係る未成年者を相手方に仮に引き渡すことを命じる審判後も,抗告人が未成年者の監護を継続しているのは,未成年者が相手方に引き渡されることを強く拒んだために任意の引渡しができなかったためであるから,そのことをもって抗告人の監護が違法であるとか,監護者として不適格であるとまではいえない。

(3)また,未成年者は,本件別居前から抗告人との父子関係が良好であり,抗告人との同居の継続を強く求めている。他方,未成年者は,相手方に対する不信感等もあり,相手方との同居を拒んでいる(相手方との面会交流にも消極的である。)。


(4)さらに,未成年者と長女は,いずれも小学校6年生(11歳)であり,未成年者らの兄妹関係は既に良好に形成されている。また,抗告人宅と相手方宅は,いずれも未成年者らが通う小学校の校区内にあり,相互の距離も近く,未成年者と長女は自由に交流することができる。そうすると,未成年者と長女の監護者を抗告人と相手方に分離しても,既に形成されている兄妹間の心理的結び付きに大きな影響を与えるものではないから,未成年者らの福祉が害されることにはならない。

(5)以上の未成年者の従前の監護状況,今後の監護態勢,未成年者と当事者双方との心理的結び付き,未成年者の心情等を総合すると,抗告人において未成年者を監護する方が,未成年者の心理的安定が保たれ,その健全な成長に資し,未成年者の福祉に適うものと認められる。また,未成年者は,相手方に引き取られることを強く拒んでおり,従前と同様,自ら抗告人宅に戻る可能性が高いから,相手方を未成年者の監護者に指定し,その引渡しを命ずることは相当ではない。

 したがって,抗告人を未成年者の監護者と指定するのが相当である。そうすると,相手方を未成年者の監護者に指定することを前提とする子の引渡しの申立ては,理由がないから却下すべきである。」

2 よって,原審判中未成年者に関する部分は相当ではないからこれを取消した上,抗告人を未成年者の監護者と指定し,相手方の子の引渡しに係る申立てを却下することとし,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 松田亨 裁判官 上田日出子 裁判官 三宅康弘)
以上:4,151文字

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