令和 2年 4月26日(日):初稿 |
○親権者を母(妻)として協議離婚後、離婚数ヶ月前の夫婦別居時から、夫婦間の子を事実上監護し、母から再三に渡る子の引渡請求を拒否し続けている夫の両親・祖母に対し、子の引渡拒否について慰謝料請求が認められた判例がないか探しています。 ○子の養育・監護権は、婚姻中は両親にあり、両親離婚後は親権者と定めた父又は母にあり、父母の両親等父母以外の第三者には、養育・監護権がないことは明白です。父・母以外の第三者が未成年者の監護権を有するためには、親権者母について民法第834条(親権喪失の審判)・834条の2(親権停止の審判)で母の親権者喪失乃至停止の審判を家庭裁判所に申立て、その家裁審判を得、且つ、民法第838条で家裁からその第三者への後見開始審判を受けなければなりません。 ○然るに、これらの手続を取ることなく、且つ、親権者母からの再三の引渡要請を無視して未成年者監護を継続することは母に対する親権侵害の不法行為が成立すると思われ、この点を認めた判例として令和元年6月17日東京地裁判決(ウエストロージャパン)を紹介します。欠席判決ですが、慰謝料1100万円の請求に対し、220万円を認めています。 ******************************************** 主 文 1 被告は,原告に対し,A(平成26年○月○日生)を引き渡せ。 2 被告は,原告に対し,220万円及びこれに対する平成29年9月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,これを6分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主文第1項同旨 2 被告は,原告に対し,1100万円及びこれに対する平成29年9月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は,A(平成26年○月○日生。以下「A」という。)の親権者父である原告が,Aの母方祖父である被告に対して,親権に基づき,Aの引渡しを求めるとともに,親権侵害の不法行為に基づき,慰謝料等の支払を求める事案である。 原告は,請求原因として別紙のとおり述べた。 第3 当裁判所の判断 1 被告は,本件口頭弁論期日に出頭せず,答弁書その他の準備書面を提出しない。したがって,請求原因事実を争うことを明らかにしないものと認め,これを自白したものとみなす。 そして,上記請求原因事実により認められる被告の不法行為の態様,原告の親権が侵害されている期間等本件に現れた一切の事情を考慮すると,原告が上記不法行為によって受けた精神的苦痛に対する慰謝料の額は,200万円をもって相当と認める。また,上記認容額,本件事案の概要,性質等に照らすと,上記不法行為と相当因果関係のある弁護士費用相当額は,20万円と認めるのが相当である。 2 よって,原告の請求は,被告に対し,Aの引渡し並びに220万円及びこれに対する不法行為の後である平成29年9月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第17部 (裁判長裁判官 田中寛明 裁判官 寺内康介 裁判官 吉原裕貴) 以上:1,393文字
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