令和 1年10月10日(木):初稿 |
○「強制認知の訴え-調停前置主義で先ず調停申立から-次に合意に相当する審判」の続きで、離婚後300日以内の出生届についての備忘録です。 ○民法第772条(嫡出の推定)で、以下の通り規定されています。 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。 2 婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。 離婚後300日即ち10ヶ月以内に生まれた子は、離婚前の夫の子と推定するのは、離婚当日まで、夫婦間に懐胎の原因となる性行為があったことを前提としていますが、このような前提は通常あり得ないことは、離婚紛争に関わり或いは離婚を直接体験すれば実感として判ります。何故、現在まで改正されないのか不思議な規定です。 ○この離婚後300日嫡出推定制度のお陰で、嫡出推定で前夫の子となるのが嫌で出生届がなされず戸籍のない子が大量に出現して社会問題にもなっています。この離婚後300日以内に生まれた子が前夫の子と推定されない制度は以下の通りです。 ・嫡出否認の訴え 民法第774条「第772条の場合において、夫は、子が嫡出であることを否認することができる。」とする嫡出否認の訴えがあります。 この訴えを出せるのは「夫」に限定されているのが問題です。 ・強制認知調停手続 「強制認知の訴え-調停前置主義で先ず調停申立から-次に合意に相当する審判」記載の通り、子の法定代理人の母から真実の父親相手に、調停申立から初めて、合意が正当と認められると「合意に相当する審判」による認知が認められると、その子は、認知をした真実の父を父として出生届ができます。 この合意が認められるには「家庭裁判所は、必要な事実を調査した上」とあり、「夫が長期の海外出張,受刑,別居等で子の母との性的交渉がなかった場合など,妻が夫の子を妊娠する可能性がないことが客観的に明白である場合」に該当するかどうかを調査します。 ・親子関係不存在確認調停 夫が長期の海外出張,受刑,別居等で子の母と性的交渉がなかった場合など,妻が夫の子を妊娠する可能性がないことが客観的に明白である場合には,夫の子であるとの推定を受けないことになるので,そのような場合には,家庭裁判所に夫又は元夫を相手として親子関係不存在確認調停の申立てをすることができます。 ○離婚後300日以内に前夫ではない父の子を出生した場合でも14日以内に出生届をするのが原則ですが、原則に従うと、真実の父ではない前夫の子としての届出になりますので、戸籍係に強制認知調停手続或いは親子関係不存在確認調停手続中であることを申告すれば、出生届提出を14日以上先に猶予して貰えます。認知或いは親子関係不存在確認の審判書を入手後、これを添付して真実の父の子としての出生届が可能になります。 ○離婚訴訟中、別居後に他の男性の子を妊娠した場合に、「令和○年○月○日出生予定の子は、別居開始後○年後に懐胎した夫以外の男性の子であり、嫡出推定が及ばない子であること確認する。」との条項付の和解調書による和解離婚した場合、離婚後300日以内にこの和解調書を添付しても出生届をしても戸籍係は受け付けてはくれません。しかし事実証明文書として、強制認知調停手続での調査を円滑に進める役割は果たしてくれると思われます。 以上:1,367文字
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