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不貞行為の疑いによる衆議院議員民進党離党騒ぎ雑感ー擁護派もいた

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平成29年 9月10日(日):初稿
○「不貞行為の疑いによる衆議院議員民進党離党騒ぎ雑感」の続きです。
不倫疑惑の山尾議員に対してネット上では非難の嵐となっていますが、中には擁護意見もありました。小林よしのり氏は,「山尾議員叩きは民主主義の破壊だ!」とまで言っています。

○私は,山尾議員に限らず,少し古くはタレントのベッキーさんの余りに過剰な不倫報道・ネット上意見に、基本的に当事者間の問題なのに,何故,関係ない他人が大騒ぎするのかと強い違和感を感じながら、谷沢永一先生仰る「人間性の最も根深い怨念に発する趨勢」なので仕方がないのかとも思っていました。

○この大騒ぎについて,精神科医片田珠美氏の「怒りの発火点 -不倫有名人をつるし上げる人のゲスな動機」という小気味よい論評が見つかりました。少々長いのですが、大変,勉強になりますので,以下,引用させて頂きます。

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怒りの発火点 -不倫有名人をつるし上げる人のゲスな動機
斉藤由貴 山尾志桜里 今井絵理子…
政治・社会 2017.9.9 精神科医 片田 珠美


まるで日本中が他人の不倫に憤っているようだ。直近では、民進党の山尾志桜里議員、自民党の今井絵理子議員、女優の斉藤由貴さん、俳優の渡辺謙さんなどが週刊誌の標的になった。テレビでも社会問題のように取り上げられている。しかし不倫は不道徳な行為ではあるものの、犯罪ではない。他人の不倫に激しく怒る人たちは、どんな精神構造なのか。精神科医の片田珠美氏が、そこにある「不純な動機」を解説する。

○なぜ世間は「斉藤由貴」が憎いのか?
政治家や芸能人などの不倫が報じられると、怒る人が少なくない。そのたびに私は強い違和感を覚える。

もちろん不倫の当事者が怒るのは当然だ。たとえば、女優の斉藤由貴さんが、「家族ぐるみでお世話になっている」という50代の医師と熱い口づけを交わしている写真が写真週刊誌『FLASH』(9月19日号)に掲載された。この写真は2人のどちらかによる「自撮り」のようで、これを手に入れられるのは非常に近い人物と推測され、写真を流出させた人物の激しい怒りと復讐願望が透けて見える。

あくまでも推測の域を出ないが、この「自撮り」写真を見つけて、「裏切られた!」と激怒した人物が、復讐のために出版社に持ち込んだ可能性が高い。写真を見つけた時点で相手に怒りをぶつけて問い詰めなかったのかという疑問が湧くが、そうしなかったのだとすれば、より効果的に復讐を果たすためだろう。

私の外来を受診した60代の女性も、夫への復讐をより効果的なものにするために、爆発しかけた怒りを抑え込んだという。
遊びに来た孫がたまたま本棚の奥に隠されていた箱を見つけたので、その中にあったSDカードを自分のスマホに挿入した。すると、夫と不倫相手のツーショット写真がたくさん保存されていて、ショックを受けた。その晩から眠れなくなったが、すぐに問い詰めるようなことはしなかった。

何食わぬ顔でSDカードを箱に入れて元の場所に戻しておいた。その後、何度もSDカードを取り出し、増え続けるツーショット写真を自分のスマホに保存した。もちろん、夫が定年を迎えたら一連の写真を不貞の証拠として突きつけ、退職金の半分と莫大な慰謝料を請求するためで、すでに弁護士に相談しているという。

○不倫に怒る人に潜む“不純”な3つの成分
不倫は配偶者を裏切る行為なので、配偶者や子どもなどが怒るのは当たり前だ。だが、当事者以上に世間が怒り、激しくバッシングすることが少なくない。
このような反応を目の当たりにすると、世間の怒りには、不倫は「悪」だから許せないという倫理観だけでなく、それ以外の“不純”な成分も含まれているように思われてならない。

少なくとも、次の3つの成分が含まれているように見える。
1) 否認
2) 羨望=他人の幸福が我慢できない怒り
3) 怒りの「置き換え」

自分も不倫中で後ろめたいから他人の「悪」を攻撃
1) 否認=自分には不倫願望などないと自己正当化
まず、不倫という他人の「悪」を徹底的に攻撃することによって、自分にはそんな「悪」などないかのようなふりができる。とくに誠実であるべき責任を分かち合う配偶者の前で、他人の不倫を攻撃すれば、自分には不倫願望のようなやましい欲望などないのだと自己正当化できる。

夫婦生活において大切な誠実さが、絶え間ない誘惑をしりぞけて初めて守られることは、既婚者であれば誰でも多かれ少なかれ経験しているはずだ。だからこそ、不倫願望を心の奥底に秘めていながら、我慢せざるを得ず、実行に移せない人ほど、他人の不倫を激しくたたく。あるいは、自分が実際に不倫という「悪」に手を染めているからこそ、他人の同じ「悪」に敏感で、目ざとく見つけて攻撃する場合もあるだろう。

数年前、朝のワイドショーで「ご意見番」として正論を吐いていた演出家に長年不倫関係にある「第二夫人」がいると週刊誌で報じられたが、この演出家はタレントのスキャンダルを激しく糾弾することで有名だった。若い俳優が二股騒動を起こしたときは、「とんでもない男。誰にでも結婚しようと言っている」「本当にうさんくさい」などと厳しく追及したものだ。

このように、他人の「悪」をたたいておきながら、実は自分も似たようなことをやっているのは、この演出家に限らない。以前、戦場取材で知られたジャーナリストの不倫騒動を厳しく非難した“ロックンローラー”が、不倫相手の女性から別れ話を持ち出され、脅して復縁を迫ったなどとして逮捕された事件があったが、これなんか典型だろう。
いずれも、不倫という「悪」など自分にはないのだと否認するためにこそ、他人を責める。当然、後ろめたいところがあるほど、攻撃は激しくなる。いわば自己防衛のために他人を攻撃するわけだが、これは不倫に限った話ではない。

○妻の浮気を疑って責める一方、自分は若い女の子と浮気
たとえば、「政務活動費」架空発注疑惑で議員辞職した元神戸市議の橋本健氏は、他の神戸市議の不正流用が発覚したとき、激しく攻撃したという。
「2年前、市議の不正流用が発覚した際、橋本はそれに多少なりとも関わった議員を全員呼び出し、“自分ら大変なことをしてくれたな!”“今の状況わかっとるんか!”などと上から目線で責め続けました」
と、神戸市の自民党関係者が証言している(『週刊新潮』9月7日号)。

その本人が同じ時期に不正に手を染めていたのだから、笑ってしまうが、こういう人はどこにでもいる。他人がちょっとでも嘘をつくと激しく非難するのに、自分は嘘八百のニセ医者女史とか、妻の浮気を疑って責めるくせに、自分は若い女の子と浮気している夫とか、枚挙にいとまがない。

この手の人を見るたびに、「もしわれわれに全く欠点がなければ、他人のあらさがしをこれほど楽しむはずはあるまい」というラ・ロシュフコー(17世紀のフランスの貴族・文学者)の辛辣な言葉を思い出す。後ろめたいからこそ、他人のあらを見つけると、必要以上に怒らずにはいられないのだろう。

○議員辞職、離党、番組降板に追い込むと満足する
2)羨望=他人の幸福が我慢できない怒り
有名人の不倫が報じられると、「けしからん」「許せない」などと声高に叫びながら、一緒になってたたく人の胸中には、羨望が潜んでいる可能性が高い。

羨望というのは、他人の幸福が我慢できない怒りなのだ」と言ったのは前出のラ・ロシュフコーだが、まさにその通りで、不倫が発覚した有名人が手にしている「幸福」が我慢できず、怒りを覚える。
羨望の対象になる「幸福」は大きく二つに分けられる。一つは、自分がやりたくてもやれないことや、やりたいのに我慢していることを易々とやってのける「幸福」。もう一つは、有名人が手にしている成功、名声、富などの「幸福」。

だから、自分自身も不倫願望を抱きながら、それほどモテないとか、その機会がないという人ほど羨望にさいなまれやすい。また、有名人が手にしている成功、名声、富などと自分は無縁だったことで欲求不満を抱いている人も、羨望にさいなまれやすい。両方そろっていたら、それこそ羨望の塊になり、不倫が報じられた有名人を、これでもかというくらい激しくたたく。

○不倫有名人が出演するCM企業に電話
こういう人は、羨望の対象である有名人を引きずりおろさないと気がすまない。そのため、ネット上の掲示板に書き込んだり、不倫が報じられた有名人がCM出演するスポンサー(広告主)に電話したりする。その結果、降板や活動休止、議員辞職や出馬断念などに追い込んだら、満足するようで、さすがにバッシングはおさまる。

3) 怒りの「置き換え」=鬱憤を晴らすため“弱者”に怒りぶつける
有名人の不倫に激怒するのは、腹の中にたまった怒りをぶつけて鬱憤を晴らしたいからにすぎない場合もある。上司に怒られたり、同僚ともめたりして、怒りがたまっているが、そのはけ口がないと、誰でもいいから怒りをぶつけたくなる。

これは、劇作家の寺山修司が見抜いているように「怒りというのは排泄物のようなもので、一定量おなかのなかにたまるとどうしても吐きださざるを得なくなる」からだ(角川文庫『家出のすすめ』内のエッセー「醒めて、怒れ!」)。
ところが、怒りの原因になった当の相手が自分より強い立場だと、怖くて、怒りをぶつけられない。そのため、怒りの矛先を弱い相手に向け変える。これを精神分析では「置き換え」と呼ぶ。

○不倫は犯罪ではなく、外野が口をはさむ問題ではない
この「置き換え」は、至るところで起こっていて、部下、後輩、非正規社員、さらには言い返せない飲食店やコンビニの店員、駅員などへと怒りが連鎖する。それでも怒りがおさまらないと、不倫という「悪」を犯して反論できない立場の有名人をたたく。

不倫を擁護するつもりはないが、不倫は犯罪ではなく、当事者同士で解決すればすむ話だ。少なくとも、外野が口をはさむ問題ではない。ところが、不倫した側に負い目があって反論できないのをいいことに、ここぞとばかりにたたく。

結局、本音は自分の怒りを誰かにぶつけてスッキリしたいだけで、その格好の相手が不倫した有名人なのではないかと疑わずにはいられない。
不倫が報じられた有名人を槍玉に挙げ、溜飲を下げている方は、胸に手を当てて自分の怒りを分析すべきである。

以上:4,228文字

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