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フレンドリーペアレントルール採用平成15年1月20日東京高裁決定紹介1

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平成28年 4月 6日(水):初稿
○「フレンドリーペアレントルール採用東京家裁八王子支部審判紹介」の続きで、面接交渉について非協力的な父から、面接交渉について柔軟な母に子の引渡を認めた平成15年1月20日東京高裁決定(家月56巻4号127頁)全文を2回に分けて紹介します。

○離婚無効確認請求訴訟を提起している母が、別途、戸籍上の親権者である父に対し子らの引渡しを求めた事件の即時抗告審において、協議離婚の成立自体に疑義がある上、少なくとも親権者の指定については、協議離婚届提出前に両者の間で協議が調うに至っていたとは認め難く、親権については、いまだ父と母が共同してこれを行使する状態にあるものと見る余地が十分あるというべきであるとした上、子らと母との精神的結びつきや母への思慕の念の強さ、母の下で生活したい旨の意向のほか、父は自身の母に対する暴力を目撃した子らの心情に対する配慮に欠けていること、父は審判期日で合意した子らと母との面接交渉の実施に対して非協力的な態度に終始していること等を考慮すると、子らを母に監護させることがその福祉に合致するものというべきであるとして、子らの引渡しを命じた原審判に対する即時抗告を棄却した事例です。

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主  文
本件抗告をいずれも棄却する。

理  由
第1 本件抗告の趣旨及び理由
 本件抗告の趣旨及び理由は、別紙抗告状(写し)記載のとおりであり、これに対する被抗告人の反論は、答弁書(写し)記載のとおりである。

第2 当裁判所の判断
1 前提となる事実
 本件記録及び関連事件記録(横浜家庭裁判所横須賀支部平成14年(家ロ)第×××号子の引渡し仮処分申立事件)によれば、次の事実が認められる。
(1) 抗告人と被抗告人は、昭和63年1月20日に婚姻の届出をした夫婦であり、両者の間には、事件本人B(昭和64年○月○日生)、同C(平成3年○月○日生)及び同D(平成5年○月○日生)の3人の子がいる。
 抗告人は、ガソリンスタンドを経営しており、被抗告人は、婚姻以来、専業主婦であり、同居中は、被抗告人が主として事件本人らの養育に当たっていた。

(2) 夫婦関係が不和になった原因については当事者間に争いがあり、いずれか一方に有責原因があるとは認められないが、抗告人と被抗告人は、次第に不和となり、抗告人が被抗告人に対して暴力を振るうこともあった。また、平成9年7月に被抗告人は乳ガンと診断されたが、その治療中に抗告人が配慮を欠く言動をしたことなども、抗告人と被抗告人の不和を深める一因になったものと考えられる。

(3) 平成12年9月に抗告人が従業員のE(E)と2泊3日の旅行に出かけたことが発覚したことから、被抗告人は、離婚を決意し、同年10月24日、単身で実家に帰り抗告人と別居した。被抗告人は、同年10月5日に心因反応により2か月程度の心身の療養が必要との診断を受け、医師から心身が衰弱しているのでまず治療に専念して自己の心身の健康の回復を図ることが大切であると助言されたこともあって、やむなく事件本人らを抗告人の下に残して単身で家を出て別居した。

 被抗告人は、家を出る際、事件本人らに対しては、体調が悪いので遠方の病院に行くことになったとの説明や日常生活の注意事項を記載した置き手紙を残し、また、抗告人に対しては、「離婚の種別」「夫が親権を行う子」「妻が親権を行う子」「証人」の各欄は空欄のまま自己の署名押印をした協議離婚届とともに、「離婚の種類(協議離婚、調停離婚等)については今後を待ちたいと思う」、「(事件本人らの親権については)『公的な法機関』によって裁可の決定を待つことにしましょう」などと記載した置き手紙を残した。

 その後、被抗告人は、同年11月17日、婚姻費用分担調停事件(横浜家庭裁判所横須賀支部平成12年(家イ)第×××号)及び夫婦関係調整調停事件(同支部同年(家イ)第○○○号)をそれぞれ申し立てた。なお、被抗告人は、夫婦関係調整調停事件において、抗告人に対し、〈1〉 離婚、〈2〉 被抗告人を親権者とすること、〈3〉 財産分与、〈4〉 離婚慰謝料及び養育費の支払を求めた。

(4) しかし、抗告人は、平成12年11月29日、上記協議離婚届に事件本人らの親権者を抗告人と記載するなどして、協議離婚の届出をした。
 これに対し、被抗告人は、平成13年1月12日、横浜家庭裁判所横須賀支部に離婚無効の調停(同支部平成13年(家イ)第××号)を申し立てたが、調停不成立に終わった。そこで、被抗告人は、同年2月22日、横浜地方裁判所横須賀支部に離婚無効確認等請求事件(同支部平成13年(タ)第○号)を提起して、抗告人に対し、〈1〉 協議離婚の無効確認、〈2〉 抗告人の暴力及び不貞行為を離婚原因とする離婚、〈3〉 事件本人らの親権者を被抗告人と定めること、〈4〉 養育費の支払、〈5〉 離婚慰謝料の支払、〈6〉 財産分与を求め、現在係属中である。

(5) 抗告人は、別居後、当初は、事件本人らが被抗告人と被抗告人宅で泊まりがけで面接交渉することを認め、平成12年12月2~3日、同月22~23日、平成13年1月4~5日に面接交渉が実施された。
 抗告人代理人弁護士は、平成13年1月18日の上記各調停事件の第1回期日において、被抗告人代理人弁護士に対し、面接交渉について1か月に2、3回の割合で週末に被抗告人宅で泊まりがけで行う旨の暫定的ルールの取り決めを提案したが、被抗告人代理人弁護士は、あくまでも被抗告人が事件本人らを引き取り、抗告人が月2~3回の面接交渉を行うという形での解決を求めたため、暫定的ルールの取り決めには至らず、その後、抗告人は、面接交渉の実施を拒むようになったため、被抗告人は、平成13年5月16日、本件申立てをした。

 平成14年2月14日の原審第5回審判期日において、抗告人と被抗告人は、双方とも出頭の上、被抗告人と事件本人らの面接交渉につき、平成14年2月24日以降の毎月第4日曜日午前9時30分から午後8時までとすることを合意したにもかかわらず、抗告人は、面接交渉の実施を拒否するわけではないものの、何かと理由をつけては合意に沿った面接交渉の実施に難色を示し、土曜日は仕事があるため被抗告人にとって都合が悪いことを知りながら、土曜日に面接交渉を実施することを申し入れるなど、非協力的な態度を示しているため、面接交渉の円滑な実施は非常に困難な状況にある。

 さらに、抗告人は、平成14年5月ころ、週末には兄弟3人で一緒にできるスポーツをするべきであるとの方針に基づき、事件本人Cに対し、同人が小学校2年生の頃から熱心に参加していた地域のソフトボールクラブをやめさせ、事件本人らを3人揃って毎週日曜日にヨット教室に通わせるようになったほか、毎週土曜日にはヨットの自主練習を行うため、勤務の都合で基本的に日曜日しか休みをとれない被抗告人との面接交渉の実施がますます困難な状態になっている。
 また、抗告人は、事件本人Bをして、被抗告人に対して面接交渉予定日が都合が悪い旨の連絡をさせている。

(6) 現在、事件本人Bはa中学校2年生、事件本人Cはb小学校5年生、事件本人Dは同小学校3年生であり、事件本人らは、2世帯住宅に抗告人、その実父及び継母と同居している。抗告人は、別居後、事件本人らの生活を優先して仕事の時間を調整し、また、同居している実父及び継母の協力も得て、事件本人らの養育に当たっている。事件本人らは、3人とも概して健康状態は良好であり、現在は日常生活、学校生活とも特に問題はなく、抗告人の下で一応安定した生活を送っている。

 抗告人は、平成12年の年収は438万円であり、経済的には安定している。
 なお、抗告人は、平成12年12月20日ころから、不貞関係にあったEを自宅に同居させ、再婚を検討したが、同人が事件本人らの母親にはなれないとの意向を示したので、平成13年1月10日ころ、同人との関係を解消した。

(7) 事件本人Dは、被抗告人が家を出た後、被抗告人がいなくなったことによる寂しさから、登校しても教室へ入れず、保健室で過ごしたり、カウンセリングを受けるなど、一時学校生活が不安定になったが、被抗告人が事件本人Dに会いに学校に行くようになったこともあって、徐々に回復し、平成13年1月から始まった3学期からは精神的安定が戻り、ほとんど教室で過ごすことができるようになった。
 他方、事件本人B及び同Cは、被抗告人が家を出た後に遅刻、欠席が増えるなどの学校生活の乱れはなく、目立った変化は見られなかった。

(8) 被抗告人は、平成13年1月から働くようになり、現在は接骨院の院長補助として勤務し、給与収入の他に実父母からの援助及び福祉手当が期待でき、経済的には、事件本人ら3人と生活していくことができる状態である。勤務時間は、月曜日から金曜日までは午前9時から午後零時半まで及び午後3時から午後8時までで帰宅は午後9時ころになり、土曜日は午前9時から午後2時までであるが、被抗告人は、事件本人らを引き取った場合には、勤務時間中は実父母に事件本人らの面倒を見てもらうことや、勤務時間を午後6時までにしてもらうことを考えている。

 また、被抗告人は、事件本人らを引き取った場合には、事件本人らと抗告人との面接交渉については柔軟に考えており、面接交渉を拒むつもりはなく、事件本人らの転校を避けるため、○○町内の学校や抗告人宅からそれほど離れていないところに住居を定めるつもりであることから、事件本人らが下校途中などに抗告人宅に立ち寄ることも許容しようと考えている。
 なお、被抗告人は、平成9年7月に判明した乳ガンについては完治し、現在は年1回検診を受けている状態であり、また、心因反応については、平成12年9月から同年12月まで通院治療を受けて回復し、現在はフルタイムで稼働しており、事件本人らの監護に支障がない心身の状態にある。

(9) 事件本人Bは、気が優しく引っ込み思案で非常に繊細な性格であり、原審家庭裁判所調査官との面接の際には、本件について意思を明確には表現しなかった。しかし、事件本人Bは、ストレス性の嘔吐をしやすいところ、平成12年3月24日の被抗告人との面接交渉日には、前日からじんましんと嘔吐の症状が出て面接交渉を取りやめざるを得なくなるなど、抗告人と被抗告人の間の面接交渉の実施をめぐる対立に巻き込まれ、精神的ストレスを強く感じていることが窺える。

 事件本人Cは、初対面の大人にも臆せず、じっくり考えた上で自分の気持を伝えることができる性格で、原審家庭裁判所調査官との面接の際、本件について、抗告人と被抗告人の板挟みになって困っている様子ではあるが、被抗告人と生活したい意向を示した。
 事件本人Dは、原審家庭裁判所調査官との面接の際、抗告人が被抗告人を蹴るのを目撃したことを理由に、被抗告人と一緒に暮らしたいとの意思を明確に示している。事件本人Dは、被抗告人が家を出ていってから、抗告人が不貞関係にあったEとの同居を解消するまでの間、精神的に不安定となり、保健室で過ごすことが多かったことから、被抗告人が家を出ていったこと及び抗告人が不貞関係にあったEを同居させたことによって精神的な打撃を強く受けたことが窺える。


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