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名前の変更が認められる要件と認容裁判例の紹介-僧名への変更

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平成28年 3月 6日(日):初稿
○「戸籍法第107条1項の氏の変更が認められる場合-祖父母の氏への変更は?」に氏の変更の相談を受けていると記載しましたが、これまで家裁に氏の変更申立をしたことはありません。しかし、30年ほど前に「名前の変更」申立を依頼されて、仙台家裁に申立をして認められた経験はあります。具体的内容は守秘義務の関係で明らかにできませんが、家裁と結構な遣り取りがあり、苦労した思い出があり、最終的に家裁の許可を得たときは、お客様に大いに感謝されました。

裁判所の「名の変更許可」のページには、概要として「正当な事由によって,戸籍の名を変更するには,家庭裁判所の許可が必要です。正当な事由とは,名の変更をしないとその人の社会生活において支障を来す場合をいい,単なる個人的趣味,感情,信仰上の希望等のみでは足りないとされています。」と説明されています。

「堺虹元の姓名判断」と言うサイトの「どの場合に戸籍から改名の変更許可が得られるか?」には、具体的ケースとして
1)永年通称名として使用した場合。
2)書きづらく読みづらい場合(奇名、珍名を含む)
3)女性でありながら男性と間違われたり、又はその逆の場合。
4)神官や出家して僧侶になった場合
5)結婚などで家族に同姓同名になった場合。
6)伝統芸能や商売上で襲名した場合。
7)精神的苦痛を伴う場合 (最近はこのケースも多い)

私が取り扱ったケースは、「1)永年通称名として使用した場合」と「精神的苦痛を伴う場合」のミックス型で、使用期間が短くて、立証に苦労しました。

○裁判例を調べたら「神官や出家して僧侶になった場合」と思われる中学三年の男子が僧名への変更許可を求めた事案において、申立人は今後も僧侶の道を進むことが推認され、名を変更することが申立人の切望する進路の実現に資することになり今後の生活に有益であることなどを考慮すると、戸籍法107条の2の「正当な事由」があるとして、申立てを却下した原審判を取り消して許可した平成9年10月15日高松高裁決定(家月50巻3号42頁)がありましたので、却下した平成9年3月21日松山家裁審判と共に全文紹介します。

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主  文
原審判を取り消す。
抗告人の名「栄一郎」を「光栄」と変更することを許可する。

理  由
一 本件抗告の趣旨及び理由は、別紙記載のとおりである。

二 記録及び当審における抗告人本人及び抗告人法定代理人親権者母の審問の結果によれば、次の事実が認められる。
1 抗告人(昭和57年11月29日生)は、母方祖父沖本秀治が曹洞宗○○寺の住職であり、檀家から信頼され、社会福祉に貢献していることなどを見て、自分も僧侶になろうと決意し、平成8年12月26日、曹洞宗○△寺住職である母方叔父沖本光雄の従弟として得度を受け、僧名「光栄」として曹洞宗僧籍簿に登録され、得度式は、同日、○○寺において、○△寺就職や檀家が集まって行われた。なお、曹洞宗僧侶教師分限規程によれば、10歳から得度が受けられること、僧名は、原則として漢字2字にすることが定められている。

2 曹洞宗においては、得度した後、曹洞宗立の高校及び大学へ進学し、その後総本山永平寺で1ないし2年間本格的な修行を行うが、学生の間は、学業の合間にできる範囲で宗教活動を行うのが普通であるところ、現在中学3年の抗告人は、曹洞宗立の高校へ進学するための準備をしており、宗教活動としては、毎朝登校前に座褝を組み、朝のお務めをし、夏休みには、師匠の沖本光雄の手伝いとして、御施食会や棚行(檀家を回って経を読むこと)をしている。その際、抗告人は、頭髪を剃り、檀家の人に対しては、「光栄」と名乗っている。

3 曹洞宗宗務庁教学部長○○○○も抗告人の改名を希望している。

三 以上の事実に基づき検討するに、抗告人の僧侶になる意思は強く、学業の合間に宗教活動も実践し、僧名を使用したこともあることから、抗告人は、今後も僧侶の道を進むであろうことが推認される。確かに、抗告人は、現在中学3年生であり、将来において進路の希望が変更されることがないとは言えないが、抗告人の名を「光栄」と変更することが、抗告人の切望する進路の実現に資することになり、抗告人の今後の生活に有益であること、他方、抗告人の改名が他の者に対し格別の不利益や弊害を及ぼすとは考えられないことを考慮すると、本件名の変更については、戸籍法107条の2に定める正当な事由があるものと判断される。

四 よって、本件抗告は理由があるので、家事審判規則19条2項を適用して、主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 山脇正道 裁判官 豊永多門 大泉一夫)

第一審 平成9年3月21日松山家裁審判

主  文
本件申立てを却下する。 

理  由
1 申立ての要旨申立人は、得度したため、現在の名では不都合なことが多く、「光栄」に変更することの許可を求める。

2 当裁判所の判断
 本件記録によれば、申立人は、母方祖父が曹洞宗○○寺の住職であり、檀家から信頼され、社会福祉に貢献したりしているのを見て、尊敬し、同じ道を進みたいと考えて、平成8年12月26日、曹洞宗○△寺住職である母方叔父の徒弟として得度し、僧名「光栄」として曹洞宗僧籍簿に登録され、得度式は、同日、○○寺において○△寺住職や檀家が集まって行われたことが認められる。

 しかし、他方、申立人は、中学2年生であって、学業を中心とする生活を送っており、今後は、その合間に○△寺住職について供養や法事などに行き、立ち居振る舞いの修行を徐々に行っていく予定であること、曹洞宗では、得度した場合、曹洞宗立の高校及び大学に進学した後、総本山永平寺において1ないし2年間本格的な修行を行うのが普通であって、学生の間は学業が主体となり、その合間にできる範囲での宗教活動を行っていること、申立人は、得度後、未だ一度も僧名を使用したことがないことも認められる。

 以上の認定事実によれば、申立人の現在の社会生活ないし社会活動において宗教活動の占める割合は、仮に存在するとしても極一部に過ぎず、名の変更を認める合理的必要性は乏しいと考えるほかない。

 よって、申立人の戸籍上の名を僧名に変更する正当な事由はないといわなければならず、本件申立ては理由がないのでこれを却下することとし、主文のとおり審判する。
 
以上:2,606文字

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