平成27年 6月17日(水):初稿 |
○「13歳未成熟子ある有責配偶者離婚請求認容・棄却2判例のまとめ1」の続きです。 離婚の要件事実は、最終的には「婚姻破綻」に尽き、これに対する抗弁事実が「婚姻破綻についての原告の有責性」すなわち「離婚請求の信義則違反」です。この詳しい意味については、「離婚訴訟での婚姻破綻の主張と有責性の問題4」で説明しています。 ○信義則違反としての「婚姻破綻についての原告の有責性」の主張の典型は、有責配偶者の主張です。この主張が抗弁としてなされると有責配偶者の原告側で、有責配偶者離婚認容要件事実として①長期の別居、②未成熟子の不存在、③苛酷状況の不存在の3つの事実を主張・立証しなければなりません。 ○13歳の未成熟子がある有責配偶者離婚請求事件では、離婚請求要件「婚姻破綻」は認められ、信義則違反としての「有責配偶者」の離婚認容要件について一審大阪家裁と控訴審大阪高裁で判断が分かれました。先ず事案時系列を復習します。 平成11年12月11日、原告夫・被告妻婚姻、夫婦は共に医師 平成12年、長女A出生、同年6月妻は医師の仕事を辞め専業主婦となって夫と同居 平成14年9月、夫が自宅を出て別居、看護婦Dと男女関係 ※平成14年4月、妻が夫の浮気を疑い、夫を尾行、夫が立腹して妻に暴力 平成15年11月、妻が実家に戻り病院に勤務再開 平成17年9月、夫が離婚調停申立、平成18年6月不成立 平成20年3月、夫が2回目の離婚調停申立、同年7月不成立 平成20年8月、夫が1回目の離婚訴訟提起、平成21年7月棄却判決、同年11月控訴棄却判決 平成20年、妻婚姻費用分担調停申立、平成21年1月、平成20年10月以降毎月10万円支払調停成立、 ※平成15年8月から平成20年9月分までの婚姻費用の分担としては,約5年間にたかだか約260万円 平成23年11月、妻クリニック開業 平成24年7月、夫3回目の離婚調停申立、同年9月不成立 平成25年2月、長女A有名私立中学合格 平成25年9月、夫2回目の離婚訴訟提起 ○別居期間の長さ、破綻を否認する妻の修復努力の欠如から一審・控訴審共に婚姻破綻を認めているのは当然です。ですから請求原因事実は認められ、次に抗弁事実である信義則違反の有責配偶者離婚要件が問題になります。この信義則違反事実の主張は抗弁ですから被告妻に主張・立証責任があります。 ○一審判断は、先ず③苛酷状況の不存在について、被告妻が医師として経済的基盤を確保しているところに原告夫が婚姻費用月額10万円支払継続し、養育料・大学進学費用支払を確約し、さらに500万円の慰謝料支払申出をしていることから離婚による苛酷状況はない、②未成熟子については、2歳から別居状態が継続し離婚を認めてもその生活実態・教育環境に変化がなく、父母の激しい紛争状態に置くことでかえって父子間の直接のやりとりを阻む状況となっており、未成熟子の存在が離婚を妨げるものとはいえないとして、離婚を認容しています。 ○これに対し控訴審判断は、別居前に浮気を疑う被告妻に暴力を振るったこと、幼少の長女を抱える被告妻に安定的住居・経済基盤を用意しないで別居し不貞を継続したこと、被告妻が仕事を開始する前5年間にたかだか260万円しか婚姻費用を支払わなかったこと等、原告夫の有責性の程度の大きさを強調して、さらに14歳中学2年の未成熟子が居ること、同居期間2年3月に対し、別居期間12年1月はまだ足りないとして、結論として原告夫の離婚請求は信義則違反で許されないとしています。 ○控訴審の判断では、あと何年別居期間を必要とするか判りませんが、原告夫の別居時および別居後の態度が悪いので、罰としてもうしばらく離婚はお預けですというものです。この原告夫は、この高裁判決が確定しても、おそらく数年後に3回目の離婚訴訟を提起すると思います。このような不毛な争いをまだ継続しろという控訴審の考え方にはついていけません。 以上:1,605文字
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