平成27年 6月 9日(火):初稿 |
○「別居2年未成熟子2名の有責配偶者離婚を認めた東京高裁判決全文紹介1」で紹介した平成26年6月12日東京高裁判決(判時2237号47頁)の原審である平成25年12月24日横浜家裁判決(判時2237号55頁<参考収録>)を紹介します。参考収録のため全文詳細ではないと思われます。 ○事案概要は以下の通りです。 ・原告と被告は、我が国の方式により婚姻し、未成年の子が2人いる夫婦 ・フランス国籍の妻である原告が未成年者らを連れて家を出て別居した後、被告に対し、婚姻を継続し難い重大な事由があるとして、離婚を求めるとともに、その附帯処分として、未成年者らの親権者を原告に指定すること、養育費及び財産分与の支払を申し立て ○横浜家裁判決は、被告が日本国籍を有していることから、本件の準拠法は日本法となるとした上で、原告と被告との婚姻関係は未だ破綻していないものと認められるとし、仮に、現段階において原告と被告の婚姻関係が破綻しているとしても、その原因は原告が他の男性との生活を望んだためで、原告は有責配偶者であるから、原告からの離婚請求は信義誠実の原則に反し許されないとして原告妻の請求を棄却しました。 ******************************************** 主 文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 原告と被告とを離婚する。 2 長男A(平成19年○月○○日生,以下「長男」という。)及び長女B(平成21年○月○○日生,以下「長女」という。)の親権者をいずれも原告とする。 3 被告は原告に対し,長男及び長女の養育費として,各人が成人に達するまで1人あたり毎月6万円を支払え。 4 被告は原告に対し,300万円を支払え。 第2 事案の概要 本件は,妻である原告が夫である被告に対し,婚姻を継続しがたい重大な事由があるとして離婚,養育費及び300万円の財産分与の各支払を求めた事案である。 1 前提となる事実 (1) 原告(○○○○年○月○○日生)と被告(昭和47年○月○○日生)は,平成17年6月12日,わが国において,わが国の方式により婚姻した(弁論の全趣旨)。 (2) 原告と被告との間には,長男及び長女がいる(弁論の全趣旨)。 (3) 原告は,平成24年5月30日,子らを連れて家を出て,被告と別居状態となった(弁論の全趣旨)。 (4) 原告は,離婚調停を申し立てたが,平成25年2月19日,合意が成立しないため,同調停手続を取り下げた(甲8)。 2 原告の主張 (1) 原告と被告との間には,性格が合わない・被告が精神的に虐待する・双方家族との折り合いが悪い・被告が原告に対し生活費を渡さない・子どものパスポートを取り上げるなど,婚姻を継続しがたい重大な事由があり,平成21年8月頃には婚姻関係は破綻していた。 (2) 被告は,原告を徹底的に支配した。 (3) 被告は,原告に対し,言葉による暴力をした。 (4) 被告は,原告に生活費を十分に払わず,原告の預金を勝手に自分の口座に振り込む手続をした。 (5) 子どもの親権者は原告が適切である。 3 被告の主張 (1) 原告と被告の婚姻関係は,平成21年8月頃には破綻していない。 (2) 原告は,平成23年10月ころから平成23年12月頃まで,Cと,平成24年3月から現在まで,Dと交際しており,原告は有責配偶者である。 4 争点 (1) 原告と被告との婚姻関係は平成21年8月頃に破綻していたか。 (2) 原告は有責配偶者であるか。 第3 当裁判所の判断 1 被告は,わが国に居住しているから,本件についてはわが国の裁判所が国際裁判管轄権を有する。 原告はフランス国籍を有する者であるが,被告は日本国籍を有し,日本に常居所を有する者と認められるので,法の適用に関する通則法27条ただし書により,本件の準拠法は日本法となる。 2 証拠(甲1,6,7,9ないし16,18ないし20,23,乙1ないし12,原告本人,被告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 原告と被告は,平成21年8月に長女が出生した後も,原告が家を出た平成24年5月30日まで同居して生活していた。 (2) 原告の両親は,平成21年9月に来日し,原告と被告の自宅で約2か月間生活した。 (3) 原告と被告及び2人の子は,平成21年12月,フランスの原告の実家へ遊びに行った。 (4) 原告と被告は,平成22年3月頃,家族4人で住む新築の家を購入するべく,鎌倉に家を見に行ったことがあったが,結局,購入は見合わせた。 (5) 被告は,平成23年5月,同年3月の震災を避けてフランスに避難していた原告及び2人の子に会うためにフランスに行った。原告と被告は,2人の子を原告の両親に預けて,スペインのバルセロナに二人だけで旅行に行った。 (6) 原告は,平成23年10月ころから平成23年12月頃まで,Cと交際していた。 (7) 被告は,平成24年4月頃,原告に対し,不倫をしていないかと尋ねたところ,原告は否定した。しかし,原告は,同年5月上旬頃,被告に対し,離婚してほしい旨告げた。被告は,他の男性と交際するために離婚を求めているのではないかと疑い,同年8月頃まで,答えを待ってほしいと答えた。 (8) 原告は,平成24年3月から現在まで,D(以下「D」という。)と交際し,現在は同人と同居している。 (9) 被告は,平成24年9月頃,朝,原告がDの家から出てくるのを待ち構えるということがあり,暴力沙汰となり,警察が臨場した。 (10) 平成24年12月20日,原告と被告は,フランス領事と会って,夫婦間の問題について話し合いをしたが,結論は出なかった。 3 原告と被告との婚姻関係は破綻しているか。 原告と被告の婚姻関係は,平成24年5月上旬頃,原告が被告に離婚話を切り出し,同月20日に2人の子を連れて一方的に家を出るまでは,多少の諍いはあったものの,家族旅行に行くなど円満に推移していたものであって,平成21年8月頃には破綻していなかったと認められる。原告が離婚話を切り出し,まもなく別居したのは,原告が他の男性との生活を望んだからであって,原告と被告との別居期間は1年半余にすぎず,原告がその行動を改めさえすれば夫婦関係は修復される可能性があり,婚姻関係は未だ破綻していないものと認められる。 4 原告は有責配偶者であるか 仮に,原告の離婚意思が強固であって,現段階においては原告と被告との婚姻関係が破綻しているとしても,その原因は,前記認定のとおり,原告が他の男性との生活を望んだからであることは明らかである。したがって,原告の離婚請求は,有責配偶者からの離婚請求であって,信義誠実の原則に反し,許されないというべきである。 5 以上のとおり,原告の本訴請求は理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 横浜家庭裁判所家事2部 裁判官 松原正明 以上:2,851文字
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