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妻の不貞行為を原因として夫が別居した場合の夫の婚姻費用分担義務3

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平成26年 3月24日(月):初稿
○「妻の不貞行為を原因として夫が別居した場合の夫の婚姻費用分担義務2」の続きです。


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(4) 本件は、平成16年2月25日、宮崎家庭裁判所同年(家イ)第○○○○号調停事件として申立てがされ、同年5月7日、不成立により審判に移行した。

(5) 抗告人は、会社員であるが、相手方は、昭和59年ころから平成14年ころまでピアノ教師(自宅で指導)、昭和63年ころから平成11年3月まで水泳コーチをし、同年4月からは□△□△生命の保険外交員として稼働し、平成16年3月30日、同社を自己都合退職し、爾後、収入を得ていない。

(6) Fは、本件夫婦の上記子供の通っていた高校の教諭(平成15年3月をもって定年退職)である。
 相手方、抗告人、F及びその妻G4者間において、△△△△を立会人として、弁護士の指導を受けた上で、平成14年2月22日付けの「合意書」(以下「第1合意書」という。)が作成された。第1合意書では、
〈1〉相手方とFは、本日をもって互いに一切の交際を断ち、今後一切面会、電話等で交信しないこと(1条)、
〈2〉Fは、抗告人に「本件の解決金」として、本日、30万円を支払い、抗告人はこれを受領したこと、抗告人は、Fに対し、今後一切の金銭その他の請求をせず、面会、電話等で交信しないこと(2条)、
〈3〉Gは、相手方に名目のいかんを問わず、金銭その他一切の請求をしないこと(3条)、
〈4〉上記4者は、互いに「本件」に関し、他に債権債務のないことを確認すること(4条)
が合意されている。

(7) 平成14年12月22日、相手方は、Fと2人だけで自動車に乗り、人目を避けて駐車しているところを、抗告人の依頼を受けた興信所の調査員にその場面を撮影された。

(8) 抗告人代理人の□□□□弁護士からFあての平成15年2月付けの「ご通知書」と題する文書には、Fが配偶者(抗告人)のある女性(相手方)と野合関係をもったことについての慰謝料の支払いについて話し合いたく連絡をもらいたい旨、もし連絡がない場合には、法的手続をとる旨記載されている。また、□□□□弁護士からF代理人の○○△△弁護士あての平成15年3月10日付け「御連絡書」と題する文書には、抗告人は、Fが相手方と今後一切面接交渉をしないこと及び違反の場合の違約罰を文書で約束するならば、納得するのではないかと思われるので、解決方法を考慮されたい旨記載されている。

(9) □□□□弁護士と○○△△弁護士との間で平成15年4月4日付け「合意書」(以下「第2合意書」という。)が取り交わされた。第2合意書では、
〈1〉Fは、抗告人に対し、今後、相手方との間でいかなる手段によっても面接その他一切の交渉を行わないことを約束すること(1条)、
〈2〉上記違反のときは、違約金300万円を支払うこと(2条)、
〈3〉Fは、これまでの言動により抗告人に迷惑をかけた解決金として70万円を平成15年4月10日限り支払うこと(3条)、
〈4〉抗告人とFは、相互にその親族を含め、面会したり電話等で交信しないこと(後略)(4条)、
〈5〉抗告人は、自己又は第三者をしてFの職場を訪問し、文書、電話等で申立てや報告等をしないこと、その違反のときは、違約金100万円を支払うこと(5条)、
〈6〉抗告人とFは、「本件」に関し、本合意書に定めるほか、相互に債権債務のないことを確認すること(6条)
が合意されている。

(10) 相手方は、平成14年8月30日以降、○×町所在の○□○□病院、△×△×病院を受診し、「適応障害(遷延性抑うつ反応)」との診断を受け、その後、薬物療法、精神療法、睡眠薬を処方されて服用し、心理テストを受けている。

(11) 別件訴訟は、反訴については、平成16年12月8日の同事件の第4回口頭弁論期日において、相手方(本訴原告・反訴被告)の同意を得て訴え(反訴)の取下げがされ、本訴については、平成17年2月15日、1審判決の言渡しがされた。同判決は、相手方とFの不貞の事実を認定した上、本件婚姻関係はこれにより破綻したものであり、相手方はこれについて有責であるが、いわゆる苛酷条項の適用はないものと判断して相手方の離婚請求を認容し、相手方の慰謝料請求を棄却し、抗告人に対し、財産分与として、621万2035円の支払を命じたものであり、抗告人がこれを不服として控訴の申立てをしている。

第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(相手方の不貞)

 本件抗告事件記録により認められる基本的事実によれば、相手方がFと不貞に及んでこれを維持継続したことを有に推認することができる。

2 争点(2)(相手方の婚姻費用分担請求権の存否)

 上記によれば、相手方は、Fと不貞に及び、これを維持継続したことにより本件婚姻関係が破綻したものというべきであり、これにつき相手方は、有責配偶者であり、その相手方が婚姻関係が破綻したものとして抗告人に対して離婚訴訟を提起して離婚を求めるということは、一組の男女の永続的な精神的、経済的及び性的な紐帯である婚姻共同生活体が崩壊し、最早、夫婦間の具体的同居協力扶助の義務が喪失したことを自認することに他ならないのであるから、このような相手方から抗告人に対して、婚姻費用の分担を求めることは信義則に照らして許されないものと解するのが相当である。

3 小括
 よって、その余の点について判断するまでもなく、相手方の本件婚姻費用分担申立ては理由がない。

第4 結論
 よって、当裁判所の上記判断と異なる原審判は失当であるからこれを取り消した上、相手方の本件婚姻費用分担申立てを却下することとして、主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 櫻井登美雄 裁判官 黒津英明 浅井憲)

以上:2,373文字

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