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婚約成立後守操義務違反による結婚式費用等損害認容判例全文紹介3

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平成26年 1月 8日(水):初稿
○「婚約成立後守操義務違反による結婚式費用等損害認容判例全文紹介2」の続きで、裁判所の判断後半損害の認定です。

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四 被告の不法行為による損害について
 原告と被告は、婚約が成立したのであるから、正当な理由のない限り、将来結婚するという合意を誠実に履行すべき義務を負っているから、それぞれ婚約相手と異なる人物と性的関係を持たないという守操義務を負っていたというべきところ、被告は婚約成立後、松子という名前の女性と性的関係を持ち、しかも、結納後も、当該女性に対し執拗に性的関係を持つことを執拗に求めていたのであるから、婚約相手である原告の被告に対する信頼を裏切ったことは明らかである。原告が、被告の不貞の事実を婚約中に知ったのであれば、被告との婚約を破棄し、結婚式を挙げることはせず、新婚生活を送るために準備もしなかったであろうこと、さらに、被告の不貞により多大な精神的苦痛を被るであろうことは当然に予測し得たというべきである。
 そうすると、原告は、婚約中の被告の不貞を理由にして、不法行為に基づき、相当因果関係にある損害として、次の損害の賠償を求めることができるというべきである。

(1) 新婚生活のために購入した家具・電化製品、新居への引越費用 129万5414円
 新婚生活を送るために必要な家具・電化製品等を婚約者がそれぞれの収入や財産に応じて準備することは通常一般に行われているところであり、また、新居への引越も通常行われているところ、《証拠略》によれば、原告は被告との新婚生活のために、別紙「結婚費用一覧」のとおり、家具と電化製品を購入し(被告が購入した品物は、新婚家庭用としては同種の品物と比較して特別高価な物とは窺われない。)、また、実家から新居への引っ越し、これらの購入費用及び引越費用として合計218万7814円を支出したことが認められる。他方、弁論の全趣旨によれば、原告は、冷蔵庫、エアコン、炊飯器、掃除機、羽毛布団の五点(購入金額39万2400円)については、自ら貰った祝儀から購入費用を負担したことが認められる。原告は、被告と結婚しなければ祝儀を貰うことはなかったのであるから、上記祝儀金額は損益相殺として損害から控除すべきである。
 そして、《証拠略》によれば、原告は、被告から引き取りを要求された、離婚により不必要となった上記家具・電化製品の保管に困り、これらを50万円(この金額で売却したことはやむを得ないとみられる。)で処分したことが認められる。
 以上によれば、原告は、離婚により不必要になった家具・電化製品の購入と新居への引越にかかる損害については、218万7814円から祝儀による購入分39万2400円と上記処分金額50万円を控除した129万5414円を損害として賠償を求めることができる。

(2) 結婚式費用 88万2210円
 弁論の全趣旨によれば、原告は結婚式の費用として、ドレス代として88万2210円、吹奏楽団謝礼金として10万円、招待客の車代として3万円を支出したこと、原告は上記吹奏楽団謝礼金と招待客の車代は自らが招待客から贈与された祝儀から支払ったこと、さらに、原告は招待客から贈与された祝儀95万円を被告の求めに応じて被告に渡したことが認められる。原告は、被告の不貞を知っていたら挙げることのなかった結婚式のためにドレス代を支出する一方で、結婚式を挙げなかったら贈与されなかったであろう祝儀を招待客から贈与されており、損益相殺の見地に照らし、上記祝儀は原告の主張する損害から控除すべきである。
 以上によれば、原告は、被告に対し、結婚式に要した費用については、ドレス代88万2210円を損害として賠償することができる。

(3) 慰謝料 200万円
 《証拠略》によれば、原告は、3年以上に及ぶ交際期間を経て、多くの招待客の祝福を受けて希望に満ちあふれた結婚生活に入った直後、被告が婚約成立後に別の女性と性的関係を持ち、結婚後もその女性を誘っているという重大な背信行為を知って驚愕し、被告に裏切られたことによる屈辱と絶望のどん底に陥り、そのため体調を崩し、精神的ストレスにより全身に蕁麻疹が広がり、継続した不眠状態となり医師の治療が必要とするまでになったものであり、被告の不貞行為により原告が被った精神的苦痛は多大であるということができる。
 原告のこの精神的苦痛を慰謝するには、原告と被告との婚約期間、被告の背信行為の重大性、原告の被った精神的苦痛の大きさなど本件に現れた諸般の事情を総合勘案すれば、原告が被告に対し請求し得る慰謝料額は200万円を下らないというべきである。

(4) 以上(1)ないし(3)の合計 417万7624円

(5) 結納金等の控除
ア 被告は、前記のとおり結納金として100万円を原告に贈与しているところ、結納金は将来の結婚を前提として贈与するものであるから、損益相殺の見地に照らし、結納金100万円は損害から控除すべきである。なお、結納金は、婚姻の成立を確証し、婚姻が成立した場合の当事者及び当事者の家族の信愛を厚くするという目的でなされる贈与であると解されるが、本件のように、婚姻成立後わずか約1か月で婚姻関係が破綻していることや、原告において婚姻が成立しなかったことを前提とする損害の賠償を求めていることに照らし、結納金は損害から控除するのが相当である。

イ 被告は、原告が被告名義の通帳から引き出した48万2000円をもって原告と被告との夫婦間の財産的清算は終了していると主張しているが、被告の不貞行為を知って精神的に混乱した原告がいわば原告の兄に救いを求めるために実家と熊本に住む兄方宅を往復することなどに支出した必要費用であり、被告の不貞行為に起因する損害といえるものである。そうすると、この通帳から引き出した金員を原告の請求する損害から控除するのは相当でない。

(6) (4)から(5)を控除した金額 317万7624円

(7) 弁護士費用 40万円
 本件の事案の内容、請求額、認容額、審理の経緯など本件に顕れた諸般の事情を勘案すれば、被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は40万円が相当である。

(8) 以上損害合計 357万7624円

五 まとめ
 以上によれば、原告の本件請求は、357万7624円及びこれに対する平成24年5月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないから棄却する。

六 よって、主文のとおり判決する。
 (裁判官 川野雅樹)

 別紙 結婚費用一覧《略》
 別紙 女性とのメール内容《略》

以上:2,781文字

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